声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


road_019_eyecatch

政宗一成の声優道

「マイナス40度の世界ではバナナで釘が打てます」(モービルオイルCM)など数多くのCMなどを手がけ、ナレーターとして頂点に立つ政宗一成さん。ナレーション・声優・アナウンス研究所で後進の育成にも力を入れている政宗さんの“声優道”を3回に分けてお送りします。

プロフィール

政宗一成 まさむねいっせい…12月2日生まれ。政宗一成オフィス主宰。アニメ『トランスフォーマー』シリーズ、TV『宇宙刑事』シリーズ、『仮面ライダー』シリーズなど数多くのナレーションを担当。さらに声優としても『機動戦士ガンダム』『逮捕しちゃうぞ』『ボトムズ』など代表作は枚挙に暇がない。

①声の仕事を通して、僕の精神や肉体を『表に現す』 —表現していきたいと思っています

新聞社勤務からナレーターへの転身を決意

僕がこの世界に入るきっかけになったのは、城達也さんがパーソナリティを務めていたラジオ番組『ジェットストリーム』です。僕は青山学院大学在学中から新聞社の仕事をしていて、卒業後もそのまま新聞社に入社しました。新聞は、遠くの地方に配信する版から作っていって東京向けの14版が最終になるんだけど、その14版の締切が25時だったんです。14版の締切を終えて家に帰るとき、いつも『ジェットストリーム』を聞いていました。でも時代はちょうど70 年安保のころで、社会的な問題も多く、かなりの閉塞感や無力感がただよっていたんです。僕は社会面の見出しを担当していたんですが、政治部や社会部に配属 された記者が、学生時代に描いていた理想とのギャップ、会社との軋轢などに悩んで自殺していく姿を何人も見てきました。

それで、一体自分に何ができるんだろうと考えたときに、思い出したのが城達也さんの声でした。城さんは柔らかで雰囲気のあるテノールの声で、僕の憧れだったんです。ただ、僕の声はローバリトン。ローバリトンっていうのは珍しくて、アメリカでは「ザ・ボイス」とか「ボイス・オブ・ボイス」といわれているんですよ。城さんのような透き通ったテノールではないけれど、僕自身も腹から出る重い声を褒められたことがあったので、じゃあこの声を活かしてナレーターになってやろうと思ったんです。

声優養成所で教えられたこと

ところが当時は、ナレーター専門の養成所はありませんでした。養成所でまず俳優になる勉強から始めるしかなかったんです。仕方がないので俳優の勉強を始めたら、20代のうちから声優としての仕事がバンバン入ってくるようになっちゃった。養成所では日本舞踊やダンスなどもやらされましたが、講師の先生に 「なんでこんなことをしなくちゃいけないんだ」って文句をいってましたね(笑)。

養成所では腹式呼吸を教えてもらいましたが、僕は丹田呼吸が正しいんだと思っているんです。腹式呼吸はヘソのあたりでするが、丹田はヘソよりももっと下。股のすぐ上の部分ですね。最大音量の声を出そうと思ったら、腹式呼吸じゃ間に合わないんです。僕はラグビーや柔道など体育会系を経験し、丹田呼吸を知っていたので、そう思ったんでしょうね。武道などでは丹田は気を練る場所として知られていますが、僕にいわせれば「気」は「息」であり「意気」なんです。話すというのは情報伝達の手段ではあるんですが、そこに自分の「意気」を乗せて届けなければならない。もっといえば、言葉で自分の精神や肉体を表に現すことだと思うんです。それができてこそ、声の仕事につけるんじゃないでしょうか。

しゃべる機械になってしまってはいけない

今は、アナウンサーにしろ声優にしろ、しっかりした滑舌でレポートができ、顔がかわいければいい程度にしか考えられていませんが、それではただのしゃべる機械になってしまう。声で自分の精神や肉体を表現していくためには、ただはっきりとしゃべればいいというものではありません。小学校や中学校でも国語の時間に音読をやりますが、そこでも「はっきりと大きな声で正しい発音で読む」ということしか教えていません。国語を教えている先生自身が、正しい日本語は知っていても、いかにしゃべるかという勉強をしてきていないから教えられないんです。
声で表現するためには緩急強弱が絶対に必要になってきますが、いつも「はっきりと大きな声で」読んでいたのでは緩急強弱どころか急急急急、強強強強にしかなりません。また、「もっと感情を込めて」とアドバイスされることがありますが、感情はできるだけ省くものであって、込めてはいけないんです。込めなくちゃいけないのは感性。感情は、怒ったりケンカしたりといった喜怒哀楽、自分の心が揺れ動くことですが、感性は感受性、その人がもって生まれた心、優しさなんです。感性を込めるからこそ、人の心に響き、聞いた人の感性を揺り動かすことができるんです。

そういう音読ができるようになるには、まず自分自身の感受性を磨いていかなきゃならないんですが、テレビなどで情報を受ける 一方だと、次第に自分で考えることをしなくなり、感受性がすり減っていってしまうんです。自分のペースで情報を得るには、やはり新聞などで文字を読むのが 一番ですね。そして文字を読んで考えること。じつは僕が新聞社に勤務して伝えたかったことは、日本語のなかにあるたおやかな優しさなんです。もっと文字を 読むこと、自分の言葉で書くことで、自分で考えて感受性を磨いていってほしい。だから現在、僕が公演などで読む文章は、全部自分で書いています。それを自分の声で読むことで、僕の肉体や精神を表現——表に現したいと思っています。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る