声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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一龍斎春水の声優道

『アクセント附属養成所シャイン』の所長として多くの後輩を育てているだけでなく、一龍斎貞水門下の講談師・一龍斎春水さんの“声優道”を、3回に分けてお送りします!

プロフィール

一龍斎春水 いちりゅうさいはるみ…7月10日生まれ。アクセント所属。主な出演作はアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(森雪)、『銀河鉄道999』(クレア/メタルメナ)、『シティーハンター』『エンジェル・ハート』(野上冴子)ほか。一龍斎春水としてラジオ『なにわのチンドン25年』(ナレーション)で文化庁芸術祭ラジオドキュメンタリー部門優秀賞受賞。
 
アクセント附属養成所シャイン

①志望動機も歩んだ道も今の若い声優たちと全く同じ

小さいころの経験で本を読むのが大好きに

子供のころから声で何かを表現するのが好きだったんでしょうね。小学校では放送委員、中学高校は放送部員で、朗読やラジオドラマをして全校に流したり、DJのような番組を作ってみたりというようなことをやってたんです。同時にアニメも大好きで、『鉄腕アトム』やディズニー作品はずっと見てました。そのころの作品で印象に残っているのが、糸くずを少しずつ動かしては写真に撮ったものを組み合わせたコマ撮りアニメなんです。そこに声を入れると糸くずが生きているように見えるという声の不思議さを感じたんですが、それが声優になりたいと思った一番最初のきっかけだと思います。

もうひとつ、私の母はとても目が悪かったので、私を膝の上に抱えて絵本を読み聞かせるということができなかったんです。それで父がソノシートつきの絵本をたくさん買ってくれたんですが、自分でソノシートをかけて絵本を見るうちに、文字や読みかたをどんどん覚えていきました。私は病気で幼稚園に行くことができなかったんですが、小学校に入学したときにはほかの子よりもずっと文字が読める、本を音読するのが得意だったんです。先生にも褒められるし、それが自信にもつながりました。

声優になりたくても養成所がまったくなかった

白石冬美高校3年のとき、改めて私は何をしたいんだろうかと考えたら、やっぱり声を使う仕事がしたいと思ったんです。考えついた選択肢はアナウンサーか声優でした。私のイメージとしては、アナウンサーは「日本語の情報をきちっと相手に伝えて、聞き手がそこから想像力を発揮するもの」、声優は「書かれた文字を自分の心で受け取って、自分なりのイメージを作って表現するもの」という印象があったんです。だったら私は声優になりたいと思いました。でも、今は声優養成所も50校以上ありますが、そのころはゼロだったんです。

どうしたらいいのか解らなくて、『スクリーン』のような映画雑誌に載っている声優さんあてに「どうしたら声優になれますか」というお手紙を送ったこともありました。私も今は「声優になりたいけど、どうしたらいいか解らない」というお手紙をいただくことがありますが、まったく同じ状態ですね。その年の秋、黒沢良さんという声優のパイオニアともいうべき大先輩が、「今の声優界は新人が入れる環境にない。新陳代謝がなければ将来もない」とおっしゃって、声優養成所をお作りになったのです。放送部の先輩でアナウンサーになった方が、その新聞記事を切り抜いて送ってきてくださったのですが、喜び勇んで受験したことから私の声優生活が始まりました。だから私の歩んできた道は、今の若い声優さん達とまったく同じなんです。声優になりたい、アニメの声をやりたいというのがまず第一目標で、役者になりたいとか、舞台に立ちたいという気持ちではなかったんです。

黒沢良先生の養成所の第一期生には、演劇経験のある人、アナウンサー、警察官や自衛隊員などさまざまな職業の方30人がいたんですが、その中でまったくの素人は私をふくめて3人だけだったんです。なぜその3人が選ばれたのか黒沢先生にお聞きしたことがあるんですが、「何も知らないけれど可能性を秘めている」という理由でした。私も今、アクセント附属養成所シャインで教えていますが、教える側にとっては真っ白なキャンバスに色をつけていくのが楽しいんです。そういう可能性を評価してくださった黒沢先生はもちろん、さまざまな人に支えられてここまで来られたと思いますね。振り返ると、つくづくラッキーだったと思います。

最初はアニメの世界を愛しているという自信だけ

声優としてのデビュー作は養成所時代の『ゼロテスター』です。養成所に教えに来てくださっていたディレクターの方が声をかけてくださったんですが、神谷明さんや中尾隆聖さんとチームを組んで戦う役で、おふたりがど素人の私を懸命に引っ張ってくれたんです。1年間の収録で、さまざまな経験をすることができました。

養成所を卒業してすぐに、『宇宙戦艦ヤマト』のオーディションがありました。スタジオにはベテランの大先輩もたくさんいらっしゃったんですが、「私は駆け出しでへたくそだけど、アニメの声優をやりたいという思いでは誰にも負けない。森雪という役を一番愛せるのは私だ」と思ったんです。当時は、声優は俳優としての技術で演じるアルバイトみたいな感覚で、声優という仕事に誇りを持っている方が少なかったんです。私も「どうして声優が目標なの? 役者じゃないの?」と何度も聞かれました。でも、声優という仕事のためにお芝居や古典芸能を勉強するっていう逆のパターンもあっていいと思うんです。そのくらいアニメの世界、声優という仕事を愛してましたね。そんな思いだけで演じたオーディションでしたが、汲み取ってくださる方がいらっしゃったんでしょうね。役者としての技術は何も持ってなかったんですが、『ヤマト』に出演することになったんです。

(次回に続く)

^ ソノシート・・・塩化ビニール製のレコード

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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