声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


road_011_eyecatch

師弟対談編 師/一龍斎春水 弟子/平田絵里子

『アクセント附属養成所シャイン』の所長として多くの後輩を育てているだけでなく、一龍斎貞水門下の講談師・一龍斎春水さんの“声優道”。第3回は養成所の教え子で、同じ事務所に所属する平田絵里子さんとの師弟対談でお送りします。

プロフィール

一龍斎春水 いちりゅうさいはるみ…7月10日生まれ。アクセント所属。主な出演作はアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(森雪)、『銀河鉄道999』(クレア/メタルメナ)、『シティーハンター』『エンジェル・ハート』(野上冴子)ほか。一龍斎春水としてラジオ『なにわのチンドン25年』(ナレーション)で文化庁芸術祭ラジオドキュメンタリー部門優秀賞受賞。

平田絵里子 ひらたえりこ…12月3日生まれ。アクセント附属養成所シャイン第1期生。主な出演作はアニメ『獣の奏者エリン』(ソヨン/ナレーション)、『源氏物語千年紀 Genji』(葵の上)、『GUNSLINGER GIRL-IL TEATRINO-』(フランカ)、ゲーム『メタルギアソリッド4』(ウルフ)ほか。

アクセント附属養成所シャイン

表現とは、入り口は点でも中は広大な円錐形の世界

平田さんはやはり一龍斎さんに憧れてシャインへの入所を決めたんでしょうか。

平田 私は中学のころから声優になりたくて放送部に入って、高校は放送部がなかったので演劇部に所属していました。高校卒業と同時に養成所に入りたかったんですけど、親が許してくれなかったので、大学に通いながらいろいろと資料を集めました。同時に養成所に通っている人たちと仲良くなったんですけど、その話を聞いていると、どの養成所に通ったらいいか解らなくなったんです。
そんなとき、シャインの通信講座を受講している知人が「来年度からシャインが通学生を募集するよ」と教えてくれたんです。一龍斎春水さんみたいなすごい人が所長ならしっかりしてるだろうし、何よりも第1期生になれるというのが魅力でしたね。
一龍斎 やっぱり第1期生というのは大事にされるんですよ(笑)。私も黒沢良先生の養成所で第1期生でしたけど、かなり大事にされました。新しく開校するんだから養成所側もやる気にあふれているし、できるだけいい先生を呼ぼうとするし、第1期を何とかしないと次がないんです(笑)。だから、声優を目指す人のなかには各養成所の1期狙いの人もいますね。
でも最近になって、第1期のころとは教えかたも変わってきたんですよ。最初は、プロになりたい人が集まるんだから、私もプロとしての感覚で接していたんだけど、それでは通じないことも多いんですよ。入所したばかりの人はほとんど素人なんだから、通じないのがあたりまえなのに、そこに気づかなかったんですよね。だから今は、もっとハウツーに近いような教え方をしています。
平田 でもそのプロ感覚というのは、すごく大切なことだと思います。印象的だったのがあるディレクターさんの授業で、初回に「君たちはあと何年で声優になりたいの」と聞かれたことです。諦めないことは大切なんだけど、養成所にいる間に結果が残せなかったらダメだという密度で学んでいかなかったら何も身につかないし、プロになってもそういう気持ちでいなければ続かない、と言われました。演技のテクニックがどうこうというより、意識を変えてもらったという気がします。

一龍斎さんは平田さんの第一印象を覚えていらっしゃいますか。

麻上洋子/平田絵里子一龍斎 応募書類の自己PR欄に「ニックネームはエレガント」って書いてあったから、どんな子が来るんだろうと思っていたら、宝塚の男役みたいでした(笑)。
平田 昔はショートヘアで、高校の演劇部でも男役しかやったことがなかったんです。自己PRするような特技もなかったし、人に言われたことを書いておけば間違いがないだろうと思って、アルバイト先の仲間から「すごくエレガントだよね」って褒められたことを書いておいただけなんですよ。
一龍斎 なかにはウケ狙いでそういうことを書いてくる人もいるんだけど、会ってみたらほんとにエレガントな品のよさを感じたんですよ。この子はこのまま颯爽とした品の良さを持ち続けられるのか、それともどこかでくずれてしまうのか、興味を引かれたんだけど、今でもそういうエレガントさは持ち合わせているよね。よく品格だけは身につかないって言われるんですよ。品格はなくすことも磨くこともできるけど、後から身につけることはすごく難しいんです。品格はどの先生がどう教えればいいっていう問題ではなくて、自分で「私はこう生きたいんだ」っていう思いをもっていなければなくなってしまうものなんですよ。
平田 そういう意味では、ほんとにたまたまシャインに入ったんですけど、そこですごくいい先生に恵まれたと思います。声優として、役者として見習いたいという前に人間として魅力的で、自分もこんな風に生きたいと思えるような一龍斎先生に出会えたのが大きいですね。役者は一生勉強だということも口で言うだけではなくて、実際に体現していらっしゃってて、さまざまなことに諦めずにくらいついていく姿勢はすごく尊敬してます。
一龍斎 私にも前を歩いてくれる人がいたけど、10年後、20年後には平田さんが後を歩いてくる人を引っ張っていく立場になるのよ。
平田 ものすごいプレッシャーですけど、そうできるように頑張ります。

「役者は一生勉強」とおっしゃいましたが、
できることが増えるに連れて学ぶことも少なくなるのでは?

一龍斎 まったく逆ですね。入口はほんの小さい点でも、中に入ると広大な空間が広がってる円錐形のような世界なんですよ。できることが増えるほど、その先に広がっている世界の大きさも見えて、勉強すればするほど学べることが多くなるんです。例えば私は金子みすゞさんの詩が好きで、よく朗読をさせてもらうんですが、ひとつの詩を読むためには書かれた背景、当時の時代風俗はもちろん、詩にこめられたみすゞさんの家族への思いまでを知らないといけないんです。
そして最初は、みすゞさんの詩なんだからみすゞさんの言葉として読んでたんですけど、詩の世界を表現しているうちに言葉の作り出す空間というのが見えてくる。そうしてまた別の可能性が見えてくるんだけど、どの表現が正解というのはないし、どれだけやっても100%にはなり得ないんですよ。今になって、山内雅人先生に指導してもらった当時のことを思い出しますが、初読の本を50%直されても当然でしたね。
当時の先生も、自分が100%だと思って読んではいなかっただろうと思えるんですよ。ほんとに役者は一生勉強だと思いますね。でも、そうやって学んだこと、頑張る姿勢、生きていく姿は、たとえ声優を辞めても人生の糧になると思うんです。逆に、声優でなくても感性を磨くことはできるんです。役者は何でも広く浅く経験しろとよく言われますが、これから声優を目指す人にはたくさん経験を積んで、感性を磨いてほしいですね。
平田 そういう意味では、私はまだひとつの道を極めようとしたこともないし、新たな世界が見えても「もうちょっと勉強してから」みたいに言い訳して、飛び込む勇気がない状態なんです。でも、やりたいという気持ちがあれば自分の弱さを打ち破っていけるはずなので、一龍斎先生を見習ってチャレンジしていきたいですね。これから声優を目指す人にも、やらなくちゃいけないことは多いけど諦めないで、と言いたいです。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る