声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


road_021_eyecatch

藤原啓治の声優道

『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役から『交響詩篇エウレカセブン』ホランド・ノヴァク役――。二枚目から三枚目まで幅広く演じる藤原啓治さんが、もがきながらたどり着いたのが、「うまくなれば、必ず仕事はある」という境地だった。ニーズに合わせるのではなく、自分がニーズになれ! 仕事が始まったら、そこがスタートライン。どう成長し、どう演じ続けているのか……。演技を通じて自分を見つめながら、藤原さんが見つけ出した「演技のもつ力」とは!?

プロフィール

藤原啓治 ふじわらけいじ…10月5日生まれ。東京都出身。AIR AGENCY所属。主な出演作は、アニメ『機動戦士ガンダムOO』(アリー・アル・サーシェス)、『天保異聞妖奇士(竜導往壓)、『交響詩篇エウレカセブン』(ホランド・ノヴァク)、『屍姫』(田神景世)、『黒塚』(歌留多)、『西洋骨董洋菓子店~アンティーク~』(橘圭一郎)、『RD潜脳調査室』(久島永一朗)、『BACCANO!』(ラッド・ルッソ)、『クレヨンしんちゃん』(野原ひろし)他多数。
AIR AGENCY

③必ず自分が生き残るんだという気持ちでがんばって

ニーズに合わせるのではなく、自分を楽しんでもらう

藤原啓治

仕事を続けていく上でとにかく感じるのは、求められていることのありがたみです。自分の声、自分の演技を見て「こいつに頼もう」と誰かが思ってくださるというのは、本当にありがたいこと。アニメを見た方々が、僕の名前を覚えてくださるというのも、同じです。ただ、そういった声に合わせて「自分のイメージを大事にしよう」というのはもったいないことだと思います。ニーズに応えるのではなく、自分の演技を楽しんでもらうこと。これができたら一番いいのではないかと思います。

いまは、たとえば新人さんが人気作品に抜擢され、作品が当たれば、ポンとポスターになってしまう。声優を目指して声優として名を馳せるわけですから、これで夢が叶ったと思ってしまう人もいるかもしれません。ですが、そこがスタートラインなんです。そこからどういう意識を持ち、どう演じ続けていくか……。そこが大切な部分なのではないでしょうか。ファンのニーズに合わせようとし続けている限り、やはり使い捨てというか、飽きられ、忘れ去られてしまう危険がつきまといます。だからこそ、自分のできることの幅を広げていくことが大事なのではないかと思います。しっかりと、向上心や志のようなものをもち、貪欲に進んでいくことが、長く続けていく秘訣でしょうね。

 自分の演技の幅を広げていく上で、一番印象に残っているキャラクターは、やはり野原ひろしでしょうね。この役をいだたいたのが、声優としてまだキャリアの浅い2年目の27歳のときだったということ、そして『クレヨンしんちゃん』が人気番組だったこともあり、一時期は「やばいな、このままではひろししかできなくなってしまう」みたいな焦りもあったけど、今はそれもありません。いろいろな顔をもつひろしというキャラクターを通して、自分もものすごく成長したと思います。いい加減、ひろしとの付き合いも長くなっていくうちにだんだん自由演技ができるようになってきました。だからひろしを通していろいろな実験をすることもできたし、あれこれ試行錯誤した結果、27歳ではできなかったことを今やることができています。自分のできることに広がりが出始めたなと感じたときは、本当に素晴らしい気持ちだったな。そういう裏付けを重ねて、自分がこの仕事に対して抱えていたコンプレックスを克服したのだと思います。

芝居の持つ力……。演じることの魅力とは

芝居をする――演じるというのは僕にとってはリハビリのようなものかもしれないなと、ときどき思います。芝居には、どこか「自分を取り戻す」という作業に通じるものがあるように感じているんです。
以前、とある精神科を見学する機会があったのですが、そこで行われていたセラピーを見てびっくりしたことが、深く印象に残っています。人形を使って、患者さんたちにセリフを言わせている……演じさせているのです。そうやて、患者さんが言いたいことを言葉として口に出させ、他者との関わりを持たせていくという治療の一環なのだということだったけど、この光景は僕にとってとても感動的でした。それが芝居の持つ力だと感じたんです。

僕は新人のころからなんとなく周囲にうまく打ち解けられず、思ったことも口に出せないようなところがありました。これは、仕事に限った話ではないですけどね。だから、キャラクターが語っているセリフを通して、言えないことを吐き出し、そうやって自分の形を確認するということは、僕にとって多くの意味を持っています。自分が芝居をリハビリと感じているのも、あながち間違いではないのだな、とものすごく感じました。
いろいろと語ってしまいましたが、僕自身、自分はもうこのままやっていけるんだと安心することはありません。道の半ばにいる人間です。正直、こんな話を僕がしてしまっていいのだろうかと恐縮しています。さっき「そこがスタートラインだ」と言いましたが、だからといって、ゴールがどこかというと、明確な答えが見つかるわけでもありません。ともあれ、やはりスタートを切らないことには何も始まらないのは事実。簡単な道のりではないと思いますが、必ず自分が生き残るんだという気持ちを持って、がんばってもらえたらと思います。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る