声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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井上喜久子の声優道

その温かい人柄で、多くのファンから「お姉ちゃん」の愛称で親しまれている井上喜久子さん。ご本人を思わせるような穏やかなキャラクターから、犯罪行為スレスレの悪女役までをこなす幅広い演技力は、一体どうやって育まれてきたのでしょうか。井上さんが声優になりたいと思ったきっかけから、現在に至るまでの「声優道」をたっぷりと語っていただきました。

プロフィール

井上喜久子  いのうえきくこ…9月25日生まれ。オフィスアネモネ所属。主な出演作はTV『らんま1/2』(天道かすみ)、『ああっ女神さまっ』(ベルダンディー)、『キャプテン翼』(大空翼)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(ラスト)、『マクロスF』(グレイス・オコナー)、ゲーム&OVA『サクラ大戦』シリーズ(ロベリア・カルリーニ)、キャメロン・ディアスの吹き替えなど多数。

①一生に一度の決意で声優を目指す

先生になるという夢が挫折したとき、
子供に夢を与えられるような仕事がしたかった

周囲の人に恵まれた新人時代

井上喜久子

 短大2年生までは中学校の国語の先生になりたかったんです。でも教育実習に行ったときに「とても私は先生になんかなれない」と挫折して、すごく落ち込んでしまったんです。周囲の友達は就職が決まったりする時期なのに、私だけ将来の夢が崩れてしまって悩んでいるときに、テレビで『アタックNo.1』の再放送を見たんですよ。そのときの放映回がものすごく感動するエピソードで、小さい頃にも何度も見て感動したものを、大人になってからまた見て感動できるってすごいことじゃないですか。それまではアニメは見ていたものの、お芝居にも興味はなかったのに、突然雷に撃たれたように「私もこういう子供達に夢を与えるような仕事がしてみたい!」と思ったんです。

思いついて15分後には、声優養成所に資料請求の電話をしてました(笑)。こういうとすごく行動的な性格に思われそうですけど、あんな不思議で突発的な行動をしたのは一生で一度きりですね。短大卒業と同時に声優養成所に入ったんですが、両親には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。これが最後のチャンスというか、ここでダメだったらこれから先は何をやってもダメだみたいな気持ちになっていたんです。だから、養成所ではものすごく気合いを入れて授業を受けてましたね。もちろんクラスメイトもみんな本気なんですけど、「クラスの中で一番声優になりたいと思っているのは私だ!」くらいのことは考えていました。

クラス全員が声優を目指している中で、みんなより上手くなるためにと思って、自分でいろいろ工夫してましたね。例えば先生から「毎日1回『外郎売り』を朗読しなさい」といわれたら、「よし、私は毎日3回やろう。しかも1回ごとに声の高さを変えてやろう」と思いましたし、発声練習は周囲の迷惑になるから家ではなかなかできないんですが、バスタオルを巻いた物を口に当てて声を抑えながら毎日続けていました。短大時代までは姉から舞台やお芝居に誘われても行かなかったくらい、この世界に興味がなかったはずの私がそんなことを続けていたので、両親や姉は「どうしちゃったんだろう、この子は」と思ってたでしょうね(笑)。

でも、声優になってから気づいたんですが、小さい頃から大好きな声の声優さんがいたんです。メインキャラクターを演じているときはもちろん、たった一言のセリフでもすぐ「あ、あの声の人だ」と聞き分けられたくらい大好きな声優さん。もちろん子供の頃は声優なんていう職業があることも知らなかったので、自分が声優になって初めてお名前を知りました。それが増山江威子さんなんです。気づいてからは友達にも「増山さんが大好き」と言い続けていたら、久川綾ちゃんが増山さんと同じ事務所だからと紹介してくださったんですよ。それから一緒にお食事に行ったり、誕生日にはプレゼント交換をするようなお付き合いをさせてもらっていますが、いつお会いしてもステキすぎて、もうメロメロです(笑)。小さい頃からの永遠の憧れであり、目標になってくださるような女性が目の前にいるというのは、私にとってすごく幸せなことだなと思いますね。

 最初に入った養成所は週1~2回のレッスンで1年コースだったんです。1年間が終了したとき、江崎プロダクション(現・マウスプロモーション)の養成所に入り直して、そこには2年通いました。

江崎プロダクションの養成所では、さまざまなプロの現場に触れさせてもらうような実践的な経験をさせていただけて、本当に勉強になりましたね。そして卒業と同時に江崎プロダクションにジュニアとして所属することになり、『らんま1/2』『ミラクルジャイアンツ童夢くん』という2本のレギュラーも決まりました。養成所を卒業してもなかなかお仕事が決まらない人もいる中で、私は恵まれていたと思います。

『らんま1/2』に出演したときは、初レギュラーということもあってまだ「ド」のつく新人で、私だけが素晴らしいキャストのみなさんの足を引っ張っているような状況でした。アフレコスタジオの雰囲気はすごく楽しいんですけど、しゃべったセリフがほとんど全部録り直しになるくらいで、帰りにはいつも落ち込んでいましたね。今は事前にリハーサル用ビデオがいただけたりするんですが、当時はそういうものもなくて、スタジオでいきなり映像を見て合わせなくちゃならないんです。今でも覚えているんですが、マイク前に立つと緊張のあまり目の前に白いカーテンが下りてくるような感じで、画面も台本も見えなくなっちゃうんです。お芝居がどうとかいう以前の問題ですね。よく新人さんに「1クール13話も演じていると慣れる」といいますが、私は慣れるまでに半年、ひょっとすると1年くらいかかったんじゃないでしょうか。でもみなさん優しくて、いつも励ましてくださったり、アドバイスしてくださったりするんですよ。そのときにご一緒した日高のり子さん、高山みなみちゃん、佐久間レイちゃんなどは、今でもいいおつきあいをさせてもらってます。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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