声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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古川登志夫の声優道

数え切れないほどの出演作をもつ古川登志夫さんは、演じる役も二枚目から、コミカルな三枚目や悪役などさまざま。その幅広い演技力で、長い間第一線で活躍されています。そして声の仕事以外に、ラジオや舞台、バンドといった活動もされてきたエネルギッシュな古川さん。声の仕事を始めたきっかけから現在までの「声優道」をたっぷりと語っていただきました。

プロフィール

古川登志夫  ふるかわとしお…7月16日生まれ。青二プロダクション所属。主な出演作は、『ドラゴンボール』シリーズ(ピッコロ)、『ONE PAECE』(ポートガス・D・エース)、『機動警察パトレイバー(篠原遊馬)、『うる星やつら』(諸星あたる)、『機動戦士ガンダム』(カイ・シデン)、洋TV『白バイ野郎ジョン&パンチ』エリック・エストラーダ(パンチ)、洋画『バッドマン フォーエバー』ジム・キャリー(リドラー/エドワード)など多数。

③若い世代の人達に伝えたいこと

完璧だと思えるまで練った演技プランの上に
自分ならではの何かをプラスしていきたい

役者の仕事は修行に終わりがない

今、養成所で勉強している人達と接する機会が年に1~2回あるんですが、時間が限られているので、今までの仕事で自分が蓄積したエッセンスをひとつかふたつ語って終わってしまうことが多いですね。伝えたいことがいっぱいあって話し出すときりがないんですが、僕の場合は舞台に出ていたという経験が役に立っているなと思います。どこの養成所でも基礎レッスンのなかに舞台のメソッドが組み込まれていますよね。もちろん、声優になりたい人は全員舞台に立つべきといっているわけではありません。でも、僕が30歳過ぎてから右も左も判らない状態で始めた声優という仕事を今までやってこられたのは、それまで舞台に立っていたという経験があるからだなと思うんです。

 舞台でもドラマでも声の仕事でも、演じることの基本はみな同じなんです。もちろん声の仕事では、体を動かしてはいけないとか、マイクの指向性を考えて演技するとか、細かいテクニックは必要になりますけど、それもまずは演技ができてこそなんじゃないでしょうか。

 誰でもキャラクターを演じる際には、まず台本を読んで、どんなキャラクターなのかイメージを作りますよね。その演技プランに、自分が演じたらこうなるという「プラスアルファの演技」を乗せたいんです。そうしないと、誰が演じても同じっていうことになっちゃう。個性と言えば個性なんですけど、僕は「プラスアルファの演技」と呼んでいます。これでこの役は完璧だと思えるところまで演技プランを練り込んで、そこにさらに「プラスアルファの演技」を加味することで役が生きてくると思うんです。

名だたる先輩方の演技を見ていると、意識しなくてもそういう演技になっているような気がします。それが「○○節」と呼ばれるような、その人なりの味になるんですよね。例えば山田康夫さんのルパン三世は、「不二子ちゃ~ん」というセリフにしろ、「ルパン三世」というセリフにしろ、絶対にほかの人が考えつかないようなリズムとアクセントでしゃべるじゃないですか。僕は『ルパン三世 風魔一族の陰謀』で一度だけルパンを演じたことがありますが、そのときは「山田さんの演技は絶対に真似しないぞ。古川登志夫ならではのルパン三世を演じるんだ」と思っていたのにもかかわらず、あの絵を見た瞬間にうっかり真似してしまうんです。僕自身、山田さんに憧れてもいたし、僕の中のルパンのイメージが山田さんの声で固まっていたというのもあるんでしょうけれど、無意識に真似させてしまうって人間国宝級のすごさですよ。

永井一郎さんにしたって、テストと本番と演技を変えてきたりして、一体どれだけの演技プランをご自分の中にお持ちになっているのかと驚嘆させられます。笑い声ひとつとっても、「ははは」「ひひひ」「ふふふ」といった、ありきたりのハ行の音を使わないんですよ。そういう方々と比べるのもおこがましいんですが、自分の演技はなんてシンプルでストレートで工夫がないんだろうとがっかりさせられしますね。僕もそういう先輩方のような境地を目指してはいるんですが、役者の仕事は修行に終わりがないので、死ぬまで頑張ってもたどりつけないかもしれませんね。これだけいろいろな役を演じてきているのに、「これは会心の出来です」と胸を張っていえるものはほとんどないんですよ。

古川登志夫ゲームやリメイク作品で、若いころに演じた役をもう一度演じることがあります。20年ぶりに『機動戦士ガンダム』を再録音した時、前と同じ演技を再現出来るか不安だったんですが、富野由悠季監督は、「昔のままの演技ができなくても構いません。そこに20年分の蓄積を加えてもらえれば」とおっしゃったんです。20年分の蓄積って僕自身の内面のことで、形として目に見える物じゃないですよね。余計に難しい。結局違ってしまってもいいんだと都合良く解釈して演じましたけど。

演技するときは自信をもって演じなきゃいけないんだけど、慢心になってしまってもいけない。そういうバランス感覚も求められるし、大変なんだけどすごく面白い仕事だと思いますよ。僕自身もつねに上を目指していますが、若い世代の人達の中から諸先輩方のような「プラスアルファの演技」が自然にできるようなすごい人が現れてくれるのを楽しみにしています。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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