声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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師弟対談編 師:村松康雄 / 弟子:中村千絵

今回お送りする声優道は“師弟対談編”。オフィス薫に所属してアニメから洋画まで長年活躍されているほか、附属声優養成所の所長も務めている村松康雄さんと、その薫陶を受けて育った中村千絵さんが登場してくださいました。中村さんから見た“師”の村松さん、村松さんから見た“弟子”の中村さんの姿とは? 村松さんの貴重な体験談も満載の対談を、3回に分けてお送りします。

プロフィール

村松康雄 むらまつやすお……4月6日生まれ。オフィス薫所属。主な出演作はアニメ『劇場版機動戦士ガンダム』(レビル将軍)、『フランダースの犬』(ハンス)、『それいけ! アンパンマン』(にんにく和尚)、洋画『パイレーツ・オブ・カリビアン』(総督)、海外ドラマ『ER 緊急救命室』(ヒューイット)、『宮廷女官チャングムの誓い』(オ・ギョモ提調大監)、CM『明星ラーメン チャルメラ』(チャルメラおじさん)、『トリスのハイボール』(トリスのおじさん)ほか多数。

中村千絵 なかむらちえ……5月14日生まれ。オフィス薫所属(現在はアクセルワン所属)。主な出演作はアニメ『NARUTO‐ナルト‐疾風伝』(春野サクラ)、『巌窟王』(ユージェニー)、『ゾイド・フェーザーズ』(スイート)、『西の善き魔女 Astraea Testament』(リティシア)、『DARKER THAN BLACK‐黒の契約者‐』(ブリタ)、海外ドラマ『デッドゾーン』(ギブソン先生)、『秋の童話』(シン・ユミ)ほか。

①感情を演じようとするのではなく、意識の動きを表現する

声優のお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。

勝田久師弟対談

村松 今から50年ほど前の話ですが、当時の僕は劇団四季の研究生だったんです。そのころ、翻訳をされていた劇団四季の米村あきら先生や、劇団四季の浅利慶太さんなどが、銀座にあるバーで打ち合わせをしていて、吹き替え専門の会社を作ろうかという話になったんです。そのバーのオーナーが、今の東北新社の会長の植村伴次郎さん。そういう縁で、僕は吹き替えの仕事をするようになったので、本当に創世記から関わっていたという感じですね。今もそうなんだけど、当時の役者は舞台だけで稼ぐのが大変だったので、吹き替えがいいアルバイトになりました。そのあと、劇団四季を辞めてからしばらくフリーで活動していたんですが、妹が千葉耕市さんにインタビューに行ったときに「兄も役者をしています」といったら、千葉さんから同じ事務所に入らないかと誘われたんです。そのプロダクションが声優専門プロダクションだったので、それからずっと声優を中心に活動しています。千葉さんはアテレコの『表現とは何か』を教えてくれた恩人ですね。千絵はどうしてウチに来たんだっけ?

中村 高校2年のときに入所試験を受けたんです。

村松 高校生が受験に来たのは初めてだったからびっくりしたよ。でも何の色にも染まってないから、これは伸びると思いましたね。声がまずいいし、音感もいい。僕が演出した舞台『野生の女』では、まだ入って3年くらいの千絵を主役に抜擢したんだけど、セリフがすごくいいんですよ。天性のものをもっているね。僕は自分で工夫したり苦労しないとできないんだけど、千絵はそれがない。

中村 そんなに褒められると困っちゃいます(笑)。父が昔、少し歌の仕事をしていたこともあって、私は小さいころからお芝居や歌が好きで、遊びで「外郎売り」などを暗唱していたんです。私だけじゃなくて家族ぐるみで、「誰が一番早く外郎売りを言えるか競争しよう」「すごく悲しそうにいってみよう」みたいな感じで遊んでました。そのころは「外郎売り」というタイトルがあることも知らなかったんですけどね。小学校のころに数年、児童劇団にいたこともあって、中学からはクラブ活動でも演劇部に所属してました。そういう環境もあって、最初は宝塚に入りたいなと思っていたんです。宝塚に入るには絶対にダンスができなきゃいけないんですけど、残念ながらダンスが苦手だったんですね。レッスンを受けたりもしたんですけど、「この先どんなに頑張っても、お金を払ってくださったお客様に見せられるレベルにはならない」と気づいて、宝塚は諦めました。そのころ妹から「声優さんってお芝居をするだけじゃなくて、歌を歌う人もいるし、いろいろなことができるよ」という話を聞いて、「よし、私もやってみよう」とその気になったんです。最初は専門学校に行かないと声優になれないのかと思っていたんですけど、書店で声優関係の本を見たりして色々調べて、高校生でも通える養成所があると知りました。それがオフィス薫でした。もちろん入所試験を受けたところで合格するとは限りませんが、場数を踏む意味でもとにかく受けてみようと思いました。試験のときに先生から「ご家族は反対してる? 賛成してる?」と聞かれて、「賛成してます」って答えたら、「じゃあウチへおいで」みたいにすごくあっさり決まったのが印象に残ってますね。

そして村松先生からさまざまなことを教わったんですね。

大平透

村松 僕が大学で学生劇団にいた時、劇団四季の芝居を見てその斬新さに感動したんです。ここだと思い、劇団四季の研究生として入り、方法論を習って、米村先生と出会ってレッスンを受けるまでになった。先生がいつもおっしゃっていたのは、「セリフは意識の動きだよ」という言葉です。今でも先生の言葉を胸に演じてますね。そういう尊敬できる人たちと巡り会えたのが良かったんだと思います。今は僕が後進を教える立場になりましたが、僕がかつてそういう人達から学んだことを、そのまま教えてるだけなんです。僕は、役者にとって一番重要なのは文学性だと思ってます。役者が表現するのは人間じゃないですか。だからたくさん本を読んで、人間の心の動きを表現に変えることを学んでほしいですね。もちろん表現という意味では、映画を観たり、音楽を聴いたり、絵を観たり、あらゆる芸術から学んでほしいんですけどね。絵画ではピカソやゴッホなどのデフォルメされた表現もすごいと思いますし、ベートーヴェンの「月光」を聴いたときには音楽の中に光が見えるんですよ。ただ、人間そのものを表現するにはどうしたらいいのかといったら、米村先生がおっしゃっていたように台本を読むしかないんです。絵画や音楽と同じように、人間の意識の動きがセリフに表現されているんですね。そのセリフを正しく捉える。そして表現に変える。役者の仕事といえばそれしかない。そう思って、今まで続けてきました。

中村 先生は「感情は演じられないんだよ」とおっしゃってましたね。お芝居って感情を演じるものだと思っていたから、何も知らない状態でその言葉を聞いて、びっくりしました。

村松 本当は演じられるんです。でも、感情を演じようとしてはダメなんですよ。若い役者さんにありがちなんだけど、感情を演じようとすると、悲しい役では台本に書かれていないところでも泣きの演技をしてしまいがちなんです。怒る役をもらうと、全編怒っちゃう。重要なのは人間の意識の様々な動きを表現することなのに、全編怒っていては作品にならないんです。だから「感情を演じるな。演じられないと思え」と教えているんです。

中村 初めて聞いたときは「それだと機械的な演技になっちゃうんじゃないか」と思いましたが、お仕事をするようになって、ようやく先生のおっしゃっていた意味が解るようになった気がします。例えば吹き替えのお仕事をすると、悲しいシーンでは役者さんがすでに画面で泣いてるし、ヘッドホンからは役者さんの悲しげな声が聞こえてくるんです。そこで私がそれをガイドにして、ムードだけで「悲しい」という型の演技をしたらいけませんよね。そういうとき、村松先生から「感情を演じるな」といわれてなかったら、型から入ろうとして泣きの演技をしてしまったかもしれません。

村松 人間は、悲しいことがあったときにも、まずは涙を堪えようと必死に我慢するんです。悲しいことがあったからといって、最初からわーっと泣いてしまうのは子供だけですよ。抑えることで、リアルな表現になってくるし、だからこそ見ている人に哀しさが伝わるものではないでしょうか。

中村 人間は感情で生きてるから、演じている役の意識をとらえて共感できれば自然と感情がついてくるんです。

村松 海外の役者さんは、どんな上手な人でも作品に出るためにオーディションを受けるんです。そうやって選ばれた人ばかりだから、どの役者さんを見てもすごく演技が上手いですね。同じ役者さんが演じていても、作品や役柄によって方法論まで変えてきますからね。僕は台本をもらったら、何回も読んでセリフひとつひとつのもつ意味を何時間も考えて、自分の意識が役者さんに同調するまで待つんです。そのうちに、息づかいまで同調するようになる。合わせるんじゃなくて、合うまで待つ。それから演じる。最後には吹き替えのときに画面を観る必要もなくなっちゃうくらいです。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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