声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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井上和彦の声優道

女性をうっとりさせる二枚目役からコミカルな動物役まで、幅広い演技で魅了する井上和彦さん。現在でも人気声優として第一線で活躍すると同時に、「B-Box Actors School」では講師として声優を目指す人を指導しています。そんな井上さんが声優を目指したきっかけとは? そして人気声優としてつねに時代の先端を走り続けられる秘訣とは? 幅広い演技を生み出すために必要なものとは? 井上さんの秘密がいっぱい詰まった秘蔵トークを、3回に分けてお送りします。

プロフィール

井上和彦 いのうえかずひこ……3月26日生まれ。B-Box所属。主な出演作はアニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』(はたけカカシ)、『テガミバチREVERSE』(カリブス・ガラード)、『夏目友人帳』(ニャンコ先生/斑)、『遙かなる時空の中でシリーズ』(橘友雅/翡翠/梶原景時/風早)、『美味しんぼ』(山岡士郎)、『キャンディ・キャンディ』(アンソニー)、『サイボーグ009』(島村ジョー)、海外ドラマ『LOST』(マシュー・フォックス)ほか。

①人と話す訓練のつもりで芝居の勉強を始めた

 

友達と一緒に養成所を受けたら、僕だけ受かっちゃった! 

井上和彦 僕はプロボウラーになりたくて、高校を卒業してボウリング場に就職したんです。ところが、何も知らない純粋な高校生が、いきなり大人の社会に入ってびっくりしちゃったのかな。やっぱり、思い描いていた世界とは随分違うし、こんなはずじゃなかったという思いもありました。そんな初めての経験がいくつも重なったせいか、人としゃべるのが苦手になっちゃって、これじゃいけない、と思っているとき、友達が「じつは声優になりたいんだ」という話をもってきたんです。それで初めて声優という仕事を知ったんですが、声優の養成所みたいなところに行けば人と話す訓練になるかなと思って、友達と一緒に養成所の入所試験を受けました。そうしたら、僕は受かって、友達は落ちちゃったんですけどね(笑)。それまではまったくお芝居に興味がなかったんだけど、勉強していくうちに大好きになっちゃって、今では仕事にしているんですから不思議ですよね。

 養成所時代には、喫茶店だったり、立ち食いそばだったり、ビラ配りをしたり、ビルの掃除をしたり、いろいろなアルバイトをかけもちしましたね。ほとんどのアルバイト先が養成所の同期だった郷里大輔と同じで、「こんなバイトがあるよ」みたいに仕事を紹介してもらったりもしました。当時はアルバイト情報誌などもなかったので、道を歩いている時に店先に貼ってある「アルバイト募集」の貼り紙を見て、働かせてもらうといった感じでした。
養成所には1年間通っていたんですが、後半の半年間は永井一郎さんに教えていただいたんです。そういう縁もあって、卒業してすぐに青二プロダクションの所属になりました。じつは養成所時代から、CMやTVドラマのお仕事をいただいたりしていたので、わりと簡単にお仕事をもらえる世界なのかな、と思っていたんです。でも実際は全然違っていて、プロダクションの所属になってからもしばらくは、声の仕事をしているよりアルバイトしている時間のほうが長かったですね(笑)。そして時間を作っては、仲間を集めて勉強会をやったり、先輩のお芝居の手伝いをしたりしてましたね。

 声の仕事も最初は番組レギュラーといわれるもので、男Aとか兵士Bみたいな名前のない役を演じるんです。多い時ではひとつの作品で7役くらい演じました。初めて名前のあるをいただいたのが、『一休さん』に出てくる小坊主の哲斉さん。そのあと『キャンディ・キャンディ』のアンソニー役を演じて、『超合体魔術ロボ ギンガイザー』という作品で、初めて主役を演じさせていただきました。オーディションで選ばれたんですが、主役とはいってもかっこいいタイプじゃなかったんです。元気が良くて熱血系な感じで、頭は坊主。でも初主役ということもあって、今でもよく覚えています。

 

その後の活躍を決定づけた島村ジョー 

井上和彦

 声優としての転機になったのは、『サイボーグ009』の島村ジョーですね。ちょうど『超合体魔術ロボ ギンガイザー』が終わるか終わらないかのころに「こういう作品のオーディションをやってるんだけど、どうもイメージの合う人がなかなか見つからなかったみたいだよ。」という話を聞いたんです。そんな時、高橋良輔監督からプロダクションに「どんな新人でもいいから声を聞かせてほしい」という依頼があって、僕のところにもオーディションの話が回ってきたんです。オーディションのときって、最初に演じる役名と自分の名前を言ってからセリフに入るんですが、「島村ジョー役、井上和彦」と僕がいったとたんに、監督が立ち上がって「井上さん! それだよ、ジョーは!」と叫んだものだからびっくりしました。まだセリフに入る前だったのでムダな力の入っていない状態でしゃべっていたんですが、それが良かったんでしょうね。

  『サイボーグ009』の現場では、ちょっとしたアドリブもありました。台本の上に「加速装置」と書いてあったので、テストのときに「加速装置!」と声に出して読んでみたら、それが採用になっちゃったんです。

僕としては、ジョーがいきなりピュッと速く行動するシーンを見ても、小さい子はなぜそうなるのか解らないのではないかと思っただけなんですが、言いかたが独特で印象に残ったのか、ほとんど毎回セリフに出てくるようになりました。おかげで回を重ねるごとに、言いかたが派手になってます(笑)。
島村ジョーを演じてから二枚目役というイメージがついたのか、次々に主役を演じさせていただくようになりました。そういう意味では、人生の中で一番の転機になった役ですね。今、当時の演技を見返してみると申し訳ないくらいヘタクソなんですが、地球を護ろうとしているんだなという気持ちだけは稚拙ながらも伝わってくる気がするんです。そこだけはちゃんと演じようとしていたんですね。

  

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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