声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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堀内賢雄の声優道

誰もが憧れるようなかっこいいキャラクターから渋さが生きるナイスミドル、はたまた洋画の二枚目俳優の吹き替えなど、ありとあらゆる役柄をこなす堀内さん。最初は「役者になりたいとは思わなかった」という堀内さんが、どうして芝居の世界に入ったのか。そして演技の世界で感じたこと、それから学んだこととは? 声優として息の長い活動をするための秘訣を、3回に分けて語ります。

プロフィール

堀内賢雄 ほりうちけんゆう…7月30日生まれ。ケンユウオフィス代表取締役。主な出演作は、アニメ『機動戦士ガンダムZZ』(マシュマー・セロ)、アニメ&ゲーム『アンジェリーク』シリーズ(炎の守護聖オスカー)、洋画でブラッド・ピット、チャーリー・シーン、クリスチャン・スレーター、キアヌ・リーブス、トム・クルーズなどの吹き替えほか。

ケンユウオフィス
ケンユウオフィス付属養成所「talk back」

①初めは役者になるつもりなんてなかった

 役者はセリフを読むだけだからこそ難しい

  堀内賢雄僕はずっとディスクジョッキーになりたかったんですが、役者になりたいと思ったことがなかったんですよ。それがDJを始めてから、テレビのワイドショーのリポーターとか、番組ナレーションなどを担当するようになったんです。僕のナレーションを聞いて「芝居をやってみたらどうだ?」と声をかけてくださった人がいたんですが、初めて芝居をしたときにはあまりの難しさに愕然としましたね。でも途中で投げ出したらダメだ、なんとかしなくちゃ、と思ったのが、声優の世界に入るきっかけです。DJはフリートーク、つまり自分の言葉でしゃべる職業なんですが、役者は与えられたセリフを読むだけで自分の言葉でしゃべっちゃいけないじゃないですか。その決められたセリフをどうしゃべればキャラクターを活かすことができるのか、そこが難しさでもあり、僕が興味を惹かれた部分なんです。

 役者というと、「発音や滑舌がしっかりしている」「いい声をしている」という印象があると思うんですけど、じつはそれほど歯切れが良くなくても役者はできるんです。演じるキャラクターにもいろいろなタイプがいますから、なかにはあまりはっきりしゃべらなかったり、口が回らなかったりするキャラクターもいるし、登場人物全員がいい声で流暢にしゃべっていたら変じゃないですか。

ところがDJは、発音と滑舌が悪かったら話している内容が伝わらないんです。僕がDJをやっていたときは、いかに歯切れ良くしゃべるか気をつけていたんですが、役者の世界では普通の会話の延長線上のようなリアリティが求められる。DJとは真逆の世界だなと思いましたね。でも、難しいからこそ奥が深い世界だし、そこに面白さもあるんです。自分が演じてみたことで、初めて芝居の面白さに気づいてしまい、それで離れられなくなったという感じですね。
「芝居をやってみたら?」と声をかけられたとき、僕はまったく演技経験がなかったんですが、作品オーディションに幸運にも合格したんです。多分、DJとして培ってきた感性を買ってくれたんだと思いますが、そこからが地獄でしたね。なにしろ演技はド素人ですから、いくら滑舌が良くても笑えないし泣けないし、来る日も来る日も居残りでした。時代も良かったんでしょうね。今なら声優なんてものすごい人数がいるから、使えないなと思ったらすぐに別の役者に差し替えられちゃうじゃないですか。僕のころはまだそれほど声優も多くなかったし、監督も「役者を育てていこう」という熱意をもって接していてくれたから、現場で叩き上げられるということができたんだと思います。

ダメ出し大歓迎のタフな精神が財産になる

堀内賢雄

今でも忘れられないのは、『超攻速ガルビオン』という作品で演じたヘンリー・マクミランという悪役ですね。ヘンリー・マクミランが「はっはっはっはっ」と笑っているシーンでCMに行くという展開だったんですが、何度演じてもうまく笑えないんです。監督から「笑え!」といわれればいわれるほど緊張しちゃうんです。

人間って、緊張している状態のときには笑えないじゃないですか。結局「1週間、考えてこい」と宿題になったんですが、考えた末に出た結論は、「笑おうと意識するから笑えないんだ。ヘンリー・マクミランに成りきったら笑えるんじゃないか」でした。1週間後の収録の日は、もう家を出た瞬間から気分はヘンリー・マクミランですよ(笑)。それでいざ収録となったら、簡単に笑えちゃったんですね。話の流れの中にヘンリー・マクミランという人がいたら、必然的に笑うんですよ。ところが笑えないというのは、話の流れの中にいるのがヘンリー・マクミランじゃなくて堀内賢雄だからなんです。僕としては笑うということに苦手意識があったので、ヘンリー・マクミランに成りきれてなかったんです。演じるためには心の底から成りきる必要があるんだと、身をもって分かりました。

そんな感じで最初のころはとにかくダメ出しされっぱなしでしたが、僕はダメ出しされるのが嫌じゃなかったんですよ。ダメ出しが来るのはキャラクターを活かすため、作品を良くするためじゃないですか。台本をきちんと読み込んでキャラクターを作っていけば、ダメ出しがあったとしても「私はこういう風に感じるんです」と意見を戦わせることもできるし、どう演技をしたら納得させることができるのか、どの引き出しを開けて演じればいいのかと試行錯誤するのも面白いし、そういう経験が自分の財産にもなりますよね。ところが最近の若い人は、ダメ出しを受けると怒られている気分になっちゃうのか、できる限りそつなく演じようとするんです。それでダメ出しがなかったことにほっとする。でもそれは、すごくもったいないことだと思うんですよ。もっとチャレンジしていく気概をもってほしいですね。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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