声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


road_039_eyecatch

緒方賢一の声優道

紆余曲折の果てに喜劇役者を目指して上京。今では声優界の重鎮として、悪役からハイテンションな役まで幅広くこなす緒方賢一さん。そんな緒方さんに、今まで歩んできた道を振り返っていただきました。楽しいトークの中にも、考えさせられるような言葉がたくさん詰まっています。

プロフィール

緒方賢一 おがたけんいち……3月29日生まれ。海風所属。主な出演作は、アニメ『名探偵コナン』(阿笠博士)、『はなかっぱ』(はす次郎)、『あたしンち』(父)、『魔法陣グルグル』(キタキタおやじ)、『忍者ハットリくん』(獅子丸)、『宇宙戦艦ヤマト』(アナライザー)、TV『はじめてのこくご ことばあ!』(おがちゃん)、『ざわざわ森のがんこちゃん』(がんこちゃんのお父さん/沼のカッパ)、『おかあさんといっしょ・ポコポッテイト』(ゾウガメの長老様)ほか。

ぷろだくしょんバオバブ

①先生がなにげなくいった一言が、次のステップに進む勇気をくれた

 高校入試も劇団の入団試験も補欠合格だった

 

緒方賢一

 僕が演技の道に入ろうと思ったのは、基本的に性格がひょうきんだった、ということがあるかと思います。
僕の出身地は福岡県の田川郡、筑豊炭田の炭坑町でした。実家が料亭をやっておりましたもので、僕も中学を卒業してすぐに料理人の見習いに行ったんです。でも、その店があまりにも封建的なところで、友達をかばったことで一緒に制裁をくらったんです。それで「こんなところにいられるか」と飛び出しました。出てきたのは朝になってからなので、夜逃げではなく朝逃げですね(笑)。それからしばらくは炭坑の選炭作業を手伝っていたんですが、わりと大きなケガをしてしまったこともあり、あまり長くは続きませんでした。
それで自分になにができるかと考えたんですが、人を楽しませることが好きだったので、じゃあ芸能界に入ったらどうだろうかと思ったんです。そのころ東京に兄弟が住んでおりましたので、それを頼って上京しました。劇団に入って喜劇役者になろうと思っていたんですが、中卒で、身長も高くない、これといった特技もないので、入団試験に軒並み落ちてしまったんです。

では高校に行って学歴くらいはつけようと思ったんですが、元々それほど頭のいいほうではないし、にわか勉強ですから受からない。なんとか商業科の補欠で合格にしてもらったものの、高校を卒業しても劇団には入れなかったんです。いよいよダメかと思ったとき、思わぬところから道が開けました。そのころ住んでいた場所から電車でひと駅のところに、劇団東演という劇団があったんです。演出家の八田元夫さんと下村正夫さんが作った劇団なんですが、下村さんの奥様が僕と同じ田川出身の方だったんですね。劇団の募集はすでに終わっていたんですが、面接で意気投合したこともあって、なんとか2年間は勉強のために通わせてもらえることになったんです。高校も補欠合格、劇団も補欠合格みたいなものですね(笑)。
劇団に入ってしまえばこっちのもんです。元々そんなに頭はよくないんですが、先生のいうことをとにかく聞き逃すまいと頑張っているうちに、なにか感性にピンとくるものがあったんでしょうね。先生からいわれた「君は、笑いはむちゃくちゃうまいね」というなにげない一言が僕を勇気づけてくれました。今では僕が教える立場に立つこともありますが、人になにかを教えるときは、その人のいい部分を褒めてあげたほうがいいのかなと思いますね。

 

いかに子供達に嫌われるかを追求した悪役キャラ

 

緒方賢一

 それから舞台に出るようになって、児童劇団や新劇など、とにかくジャンルを問わず出演しました。とある舞台公演のとき、アテレコのディレクターさんが演出を担当することになったんです。そこで「君は面白い声をしているから、アテレコをやってみないか?」というようなことをいわれて、初めて声の仕事をいただきました。たしか『輪廻』という作品で、物語の内容は忘れてしまいましたが、植木職人のような役だったと思います。

その後、音響制作などをやっているスワラプロダクションの社長が僕の高校の後輩で、その社長の紹介で『強妻天国』という作品に出演させてもらったりもしました。セリフはたった一言なんですが、当時の金額で1000円くらいいただけたんです。たった一言で1000円ももらえるなら、30分の作品でメインキャラクターを演じたら一体いくらになるんだろう、アテレコってすごく割のいい仕事だなと思ったものですが、じつはセリフの量には関係なく30分作品に1回出演すると1000円だったんです。それを知ったのは少し後のことになりますけどね。それでもっと声の仕事を増やそうと思って、児童劇団で関係のあった大竹宏さんの紹介で青二プロダクションに入れていただいたんです。
僕が声優デビューをしたときはすでに30歳近くになっていましたが、それまで劇団で下積みをしていたことがよかったのか、あっという間に声の仕事でレギュラーをいただけるようになりました。といっても、最初は悪役ばかりでしたけど、すごく思い入れのあるキャラクターばかりなんですよ。どこまでどう演じたら子供達に嫌われるか、いかに悪そうな言い方をするか、気持ち悪い雰囲気を出すかといったことを研究しました。当時のアニメはどの作品も放映期間が長くて、1年くらいの間に次々に新しい悪役が登場するという展開も多かったんです。ですから、ひとつの作品に継続して出させていただいて、登場する悪役すべてを演じるということもありました。
三ツ矢雄二くんがあるテレビ番組に出演したときに、「緒方さんは『コン・バトラーV』の悪役をすべて演じていましたが、ひとつとして同じ演技がないんです」というようなことをいったんですが、そんなことはない(笑)。物語の展開が違うから、ほんの少し演技の命を変えれば別人に聞こえるだけなんで、登場シーンだけを集めて一度に放映したら、みんな同じですよ(笑)。だから、たくさんのアニメ作品を集めた『スーパーロボット大戦』の収録は大変でしたね(笑)。僕が演じた悪役が一挙に登場するんだけど、キャラクターによって声を違えているわけじゃないんで、全部別々に収録してもらいました。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る