声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


road_049_eyecatch

日髙のり子の声優道

アイドルとしての活動を経て、アニメ『タッチ』の浅倉南役でブレイク。以降も多くの作品に出演し続けている日髙のり子さん。これまでに歩んできた声優道を3回に分けてお送りします。

プロフィール

日髙のり子 ひだかのりこ……5月31日生まれ。コンビネーション所属。アニメ『タッチ』(浅倉南)、『となりのトトロ』(草壁サツキ)、『トップをねらえ!』(タカヤノリコ)、『らんま1/2』(天道あかね)など代表作多数。最近の主な出演作は、『PSYCHO-PASS サイコパス』(ドミネーター)、『名探偵コナン』(世良真純)、『HUNTER×HUNTER』(シャルナーク)、『エリアの騎士』(一色妙子)ほか。

①アイドル、タレントを経て「演技の世界」に戻れた!?

アイドル、タレントを経て「演技の世界」に戻れた!?

hidaka01 私・日髙のり子といえば、「アイドル歌手から声優になった」というイメーシが強いかと思いますが、実はお芝居の方が先なんです。小学生の頃から児童劇団に入ってお芝居の勉強をして、お仕事もいただいていました。私が高2の頃、アニメ『ふたごのモンチッチ』の主題歌を歌うお仕事をさせていただいたのですが、そのときのレコード会社の担当だった方がアイドルセクションに異動されて、「アイドルでデビューしない?」って誘われたんです。「私は女優を目指しているので・・」と一度はお断りしたんですけど、「先にアイドルでデビューして名前を知ってもらった方がいいんじゃない?」と言われて、自分でも「そうか」と思ってデビューしました。
アイドルとして歌を歌うお仕事を始めて、さらにラジオのDJやTVのリポーターなどタレント的なお仕事もするようになりました。でも私の中ではずっと「セリフをしゃべりたい」という気持ちがあったんです。

「私は女優になりたかったのに、歌をやってタレントをやって、なかなか演技に戻れない。どうしよう」と思っていたときに、たまたま私が担当していたラジオ番組のリスナーの方から「日高さんの声は特徴があるから声優に向いているのでは?」と言われました。それで「声優になればセリフがしゃべれるんだ」と思ったのが、声優を意識した最初でした。
声優としては『超時空騎団サザンクロス』でデビューして、続いて『よろしくメカドック』に出演しました。自分としては「やっと演技の世界に戻れた」って感じでしたね(笑)。共演者の方たちから「上手だね。よく口が合うね」なんて言われて、「私、向いてるのかな」と気を良くしていました。児童劇団の頃、東映の特撮番組でアフレコをやった経験があるので、それが多少役に立ったのかもしれませんね。
ただアニメのアフレコ現場の雰囲気には緊張しました。休憩時間は普通に皆さんと話しているんだけど、いざ本番になるとシーンと水を打ったような静けさになるんですよ。で、そ~っとマイク前まで歩いて行って、しゃべって戻ってくる。そのマイク前に歩いて行くとき、何もないところでつまづきそうになるくらい緊張していたことを覚えています。
そして『よろしくメカドック』の現場で「今度、こういうオーディションがあるから受けてね」と言われて受けたのが『タッチ』でした。

 

出世作『タッチ』の現場は、緊張とプレッシャーの連続・・

road_049_article1-02 『タッチ』のオーディションに受かって、ヒロイン・浅倉南役に決まりました。どうして私が選ばれたのか? 20年くらい経ったとき、杉井ギサブロー監督に聞いてみたら、「声質が南ちゃんのイメージに近かったこと。声優としてのキャリアが少なく、しゃべり方が声優っぽくなかったこと」って言われました。ともかく、この作品で初の大役をいただいたわけですが、大喜びしたのは記者発表のときまで(笑)。現場に入ったら、緊張とプレッシャーの連続でした。
それまではセリフがそんなに多い役じゃなかったので、ゆとりをもってセリフの準備をしてアフレコに臨んでいましたが、『タッチ』はほぼしゃべっているんですよね。まずそのことに緊張しました。しかもセリフに間がたくさんあって、表現が難しいんです。

たとえば、「たっちゃん」というセリフが3つあると、音響監督さんから「わかってるよね。この3つは全部言い方を変えてね」って言われるんです。そこで正直に「わかりません」と言えたら良かったんだけど、私はクセですぐ「はい」って言っちゃって、後で苦しんでいました(苦笑)。
 
 このときは、主役の三ツ矢雄二さんをはじめ、難波圭一さん、井上和彦さん、中尾隆盛さんという、そうそうたるキャストの皆さんの中に私ひとりが入っていて、私だけがうまくできなかったんですよ。他のみなさんのセリフはスムーズに進行するのに、私が一言しゃべるとフィルムが止まるんです。見ると、音響監督さんら首脳陣が何やら話し込んでいる。「うわ~!!」って思いましたね。今の現場はデジタルですけど、当時は映写機でフィルムを回していたので、1回止めると戻すのにすごく手間がかかるんです。私がキャストに加わったことでどれだけ皆さんに迷惑をかけているか、肌で感じてしまって、プレッシャーに押しつぶされそうになりました。
他のキャストの皆さんが帰られた後で、よく私だけ残ってアフレコをやっていました。「たっちゃん」というセリフを何度言ってもOKが出なくて。何度も繰り返しているとわけがわからなくなって、泣きそうになって「たっちゃん」と言ったらOKが出ました。後々三ツ矢さんに話したら、その時の南の感情と追い詰められて泣きそうになった私の感情がリンクしたんじゃないかって言われました。
三ツ矢さんと私のシーンを録っていたとき、私がダメでなかなかOKが出なくて、三ツ矢さんから「もっとたっちゃんを愛して!」って怒られたこともありました。そのとき三ツ矢さん自身は最初のテイクが一番良かったのに、私のせいでOKにならない・・そういうストレスがたまっていたみたいです。三ツ矢さんにはご迷惑をかけましたし、大変お世話になりました。
でも今振り返ってみると、『タッチ』は声優・日髙のり子の土台作りになった作品だと思います。とにかく感情表現がすごく難しい作品でした。本当はこう思っているのに言えなくて、「たっちゃん」という一言に気持ちを込めないといけない。悩みましたね。いつも「考えろ、考えろ」って言われて、眉間が痛くなるくらい考えました。台本の行間を読んだり、キャラクターの感情の奥まで考えて演技をする――そういうやり方を、『タッチ』に出演した2年間で勉強させてもらいました。
 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る