声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


名称未設定 1

飯塚昭三の声優道

テレビ創世記の1960年代から現在まで長きにわたり、声優、俳優、ナレーターとして活躍。多くのアニメ・特撮作品での魅力的な悪役の声をはじめ、さまざまな役柄を演じている飯塚昭三さん。そんな飯塚さんがこれまで歩んできた声優への道を、全3回のトークでお届けします。

プロフィール

飯塚昭三 いいづかしょうぞう・・・5月23日生まれ。シグマ・セブン所属。主な出演作は、特撮番組『好き! すき!! 魔女先生』(怪人クモンデス)、『超人バロム1』(ドルゲ)、『人造人間キカイダー』(ハカイダー)、『宇宙刑事ギャバン』(ドン・ホラー)、アニメ『カールじいさんの空飛ぶ家』(カール・フレドリクセン)、『忍たま乱太郎」(稗田八方斎)、『スティッチ! ~いたずらエイリアンの大冒険~」(ジャンバ博士)、『世紀末救世主伝説 北斗の拳』(フドウ)、映画『仮面ライダー1号」ほか多数。

①“気づき”を積み重ねて出てきたものこそが表現になる

“気づき”を積み重ねて出てきたものこそが表現になる

 これは『声優道』という連載なんだけど、僕はね、声優になっていく道というのはあっても、“声優道”というのはないんじゃないかと思うんだよ。だって道(どう)というのには、剣道や柔道のようにひとつのものを極めるという感覚があるからね。声優には“これ”といった型や有段制度がある訳でもない。別物だと思うんだよ。だから、声優に道(どう)というのはしっくりこないんだよね。

 僕は養成所や専門学校でも教えているけど、僕の授業では、常に副次的なことをやらせているんだ。たとえば「高田馬場駅で(発車時に)流れる音は、どんな音ですか?」と質問する。その駅に行ったことがある人ならば、『鉄腕アトム』の曲が流れることは分かるよね。じゃあ、新大久保はどうだろう。新大久保駅は、音楽じゃないんだよ。ただ、ブーっと音が鳴るんだけど、なぜ駅によって音が違うのか? その駅ごとに鳴る音が違うということには、それなりに意味があると思うんだよ。その意味にまで思いを馳せること。そういう“気づき”というのが大事なんだ。気づくことを積み重ねて、出てきたものこそが表現なんだよね。声優は…‥というか、表現者にとって必要なことは、そういう副次的なこと、ちょっとした横道のことなんだけど、実はそれが本質なのかもしれないと僕は思うんだ。 

高校時代、演劇部に入って芝居にのめり込む

_DSC4131_thumb そもそも僕はこういう“表現者”という仕事は嫌いだったんだ。武闘派だったから……というか、小学校から柔道や野球をやっていたから、演劇なんていうものには興味がなかった。それがあるとき、仮装行列の出し物で象の足の役をやったの。その頃、上野にインド象の花子さんが来て話題になっていたもんだから、先輩に「俺が後ろ足をやるから、お前、前足をやりなよ」って誘われてね。前足をやっているうちに、だんだんと鼻を動かしたくなってきて……なんだかインド象になりきってたんだよ。そのときの先輩が演劇部を作りたがっていて、そこに誘われて入ることになった。それが高校1年のときだった。

 最初の演劇では女の子の役で、母親が見つけてきた衣裳を着てね。毛糸の髪の毛も見つけてきてくれて「これ、付けたら?」って。そんなのを身に着けてやったんだけど、6つか7つセリフがあるうち、本番では2つか3つしか言えなかった。もう悔しくて悔しくて……。それで、次の『法律の轍』という演劇では、セリフが多い法律家の役をやったんだけど、そのときはしっかりセリフも言えて演じ切ったんだ。それから芝居が面白いと思うようになった。だから結局、負けず嫌いで始まったんだよね。

 それまでは演劇の「え」の字も知らなかったけど、先輩に聞いていろんな本を読むようになった。台本も読んでいろんな芝居をやっていくうちに、高校3年生のときには先輩から引き継いで部長になっていた。そのときに木下順二の『夕鶴』で与ひょう役をやって、福島県の演劇コンクールで2位になった。あれは女子高との合同公演だったんだ。あの頃は、映画を観るにも「男は木曜日で女は金曜日」というように男女別の時代だったから、演劇でも男が女役をやって、男だけでやっていたんだ。でも「そんなのおかしい」って、僕が女子高の先生に許可をもらって、男女合同での演劇を実現させたんだよ。

 そうやって芝居をやっているうちに、演劇を専門で勉強したいと思うようになった。それで日大の藝術学部に進学したんだ。本当言うと、母親は僕を新聞記者にさせたがっていたし、父親も他の学校に入るのを希望していた。だから日大は内緒で受けて、他の学校はわざと失敗してね。……あ、いや、実力が足りなかったのかな?(笑)。

一つひとつの経験が、全部芝居につながっている

 入った日大では、芝居ばっかりやっていたね。先生にお金を借りて旅公演に出たこともあった。北海道で講演する助教授についていって、その土地で芝居をやったんだけど、そのときは助教授や主任教授の先生にも宣伝してもらってね。あの頃はとにかく芝居漬けだった。

 アルバイトでエキストラもやったな。映画だとか、歌舞伎のね。そういえば歌舞伎のとき、芝居の最中に気合いが入りすぎて、花道で殺陣師と正面衝突しちゃったことがあったんだ。殺陣師の人が客席に落っこっちゃって、どうしようって思った。終わってからも、謝りに行くべきかどうかで迷ってね。結局行かなかったんだけど、芝居の最中のことだから殺陣師の方も心得ていて怒られたりはしなかった。

 そういうハプニングにしてもね、その場で謝ったりしたら芝居が台無しになるわけだよ。物語があるわけだから。ただ与えられたセリフを読むのではなく、その背景に何があるのか、そういうことを考えていないと対応できない。芝居の奥行きを考えることが大事なんだ。その意味では、一つひとつの経験が、全部芝居につながっているわけなんだよね。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る