声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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森山周一郎の声優道

もともとは舞台出身の俳優だったが、その渋い声質を買われて20代の頃から声優としても活躍。悪役のほか、ジャン・ギャバン、チャールズ・ブロンソンといったハードボイルドな二枚目俳優の吹き替えも多く担当した森山周一郎さん。中でも、ドラマ『刑事コジャック』やアニメ『紅の豚』はアタリ役となった。そんな森山さんが歩んできた声優道を、全2回のトークでお届けします。

プロフィール

森山周一郎 もりやましゅういちろう・・・昭和9年7月26日、愛知県生まれ。オフィス森山所属。主な出演作は、ドラマ『刑事コジャック』(コジャック)、アニメ『紅の豚』(ポルコ・ロッソ)のほか、ジャン・ギャバン、スペンサー・トレイシー、テリー・サバラス、チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラの吹き替えや『マンダム』『ネスカフェ』などCMナレーションも多数手がけている。また声優養成学校・森山塾で後進の育成にも力を入れている。

②私だけはアドリブを入れてOKだった『紅の豚』

私だけはアドリブを入れてOKだった『紅の豚』

 アニメ『紅の豚』は、もともとは日本航空の記念作品で、「ジャンボの機内で流すアニメのナレーターをやってほしい」という話だったんだ。あのときは、監督の宮崎駿さんから直々に電話があったんだけど、私の中では“アニメは子供が観るもの”という感覚があって、普段アニメなんて見ないからさ。「宮崎と申しますが・・」って言われても、「どちらの宮崎さん?」って、まったくピンと来なかった。娘が目の前で両手をバッテンにして「断っちゃダメ!」って言うからお受けしたようなもので、言われなかったらどうだったか・・(笑)。

以前から飛行機に興味があって、操縦の勉強をしたこともあったから、パイロットの気持ちはよく分かった。収録現場で、私だけはアドリブを入れても止められることはなかったよ。私以外の役者がアドリブを入れると、宮崎さんに止められていたけどね。

アニメと言えば、手塚治虫さんには随分、パーティーに呼んでもらったな。手塚さんは僕の声を気に入ってくださって、僕のためにわざわざ役を作ってくれたんだ。この声は子供の頃からなんだけど、9歳の頃に他界した父の声に似ているとよく言われた。だから、この声が父からもらった相続税のかからない遺産だと思っているんだ。

ブロンソンの声を作るために大事な声帯を酷使したことも

 CMのナレーションでは、その大事な声帯を酷使したこともある。『マンダム』のCMでは、チャールズ・ブロンソン(※1)の下品な声を作るために苦労したな。煙草を1カートンぐらい吸って、大声を出して、声を枯らして・・。そこまでして作った「ン~、マンダム」。

大体、セリフというのは短いほど難しいんだよ。サントリーウィスキーのCMのときも「サントリーリザーブ」っていうのを15回やっても黒澤明監督からOKが出なかった。もう、やけになってさ、「50回言うから好きなの使ってください」って本当に50回言ったことがある。で、結局使われたのはテイク2だった。でも、そうだろうと思ったよ。どんな作品でも「テイク2が良い」というのは、経験で分かっていたからね。

『刑事コジャック』の現場は、毎回収録のスピードが早くてね。ゲストで来た役者がヒーヒー言ってたよ。というのも、上がってきたばかりの台本に印をつけて、大きい画面でフィルムを見て、尺だけ合わせたらすぐ収録しちゃうから。スタジオに入ってテスト一回で、もう本番だからさ。1時間ものだったら、4回に分けて15分ずつ。午後4時に台本が上がってきて、3時間後の午後7時には録り終わっちゃうから、ゲストは慌てるわけだよ。レギュラーメンバーは、終わってさっさと酒を飲みに行く相談をしてるんだけどさ(笑)。

役者として、一つひとつの経験の積み重ねが大事

_1DX4343 この声のお陰で声の仕事も多いし、最近では「声優」って紹介されることもあるけど、俺自身はやっぱり俳優、役者だと思っている。今まで舞台でかなりの数の演出をしてきて、後輩の育成にも努めてきた。声優養成学校として森山塾も作ったけど、当然育てたいのは役者なんだ。声優の仕事を勘違いしている人が多いけど、やはり体を動かして芝居をしないとね。

それと、最近の声優は画一的で没個性だと思う。私たちの頃はさ、限られたセリフをどう変えてやろうかって研究していたよ。今は誰がその役をやっても同じで、セリフの言い方も同じ。優等生を作りすぎたんだよね、業界が。海外ドラマなんか観ていても、合格点を出せる作品が本当に少ない。合格点が、だよ。

まず、役者として人生経験が大事だよね。劇団民藝の創設者の滝沢修さんが“役者は経験以外のなにものでもない”と言われていた。それを聞いて「殺人鬼の役をやるなら、人を殺さなきゃいけないのか?」ってバカなことを言ったヤツもいるけど、もちろん、そんなことじゃない。そういう役は想像でやればいい話で、法に触れること以外は全部体験して覚えなさいということ。これに限ると思う。

そりゃあ、経験の全部が一致するわけではないけど、演技をする上で、経験したことの一つひとつが参考になってくる。「あの体験をしたときと一緒だな」って。そういうことの積み重ねなんだよ。だから「暇だからって家で寝ていよう」って、それじゃダメなんだ。俺なんて、30代から65歳まで毎日睡眠3時間だったんだから。今はその分よく寝てるけど(笑)。 よく働いてよく学んでよく遊ぶ。経験というのはそういうことだよ。

私はゴルフを50歳から始めた。野球をやっていたから筋が良いっていうのはあるけど、上達するのは早かったよ。最初の1年が大事だって聞いて、「毎日必ず練習する」っていうのを365日続けたからね。ゴルフは年齢の半分の数字ならまあ良い方だっていうけど、10年でハンデ4だから。そのゴルフがきっかけになって、夢だった映画監督をやって映画を撮ることもできたんだ。とにかく、みんなには積極的にいろんな経験を積んでいって、個性を持った役者になってほしいと思うよ。

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※1・・・チャールズ・ブロンソン(1921年11月3日 - 2003年8月30日)は、アメリカの映画俳優。1960年の「荒野の七人」、1963年の「大脱走」での男くさい風貌が人気を呼び、俳優としての地位を確立。さらに「さらば友よ」や「雨の訪問者」で国際的スターに。日本ではマンダムのCMで一世を風靡。外国人タレントのCM起用の先駆けとなった。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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