声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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高木渉の声優道

NHK大河ドラマ『真田丸』への出演が話題となった高木渉さんは、デビューから30年近くになるベテラン声優。『名探偵コナン』『ゲゲゲの鬼太郎』『ドラえもん』など誰もが知っている国民的アニメにも出演し、今や声優界になくてはならない存在の高木さんは、どのようにしてこの世界に飛び込んできたのでしょうか?

プロフィール

高木渉 たかぎわたる…7月25日生まれ。アーツビジョン所属。1988年、TVアニメ『ミスター味っ子』で声優デビュー。代表作は、『名探偵コナン』の小嶋元太役・高木刑事役、『ワンピース』のベラミー役、『忍たま乱太郎』の平滝夜叉丸役、など。アニメのほか、洋画吹き替えや舞台でも長く活躍してきたが、2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』の小山田茂誠役で映像作品への初出演を果たした。

②アドリブを入れるのは現場を面白くするため

アドリブを入れるのは現場を面白くするため

 当時は『NG騎士ラムネ&40』とか、『天空戦記シュラト』とかのバトルもの、ヒーローものが流行っていて、僕もずいぶん地球と戦いました(笑)。怪獣役で「ぐわあああっー!!」と唸り声を上げたり、雑魚キャラ役ですぐやられたり。ほかにもサルとか犬とか動物全般をやってました。番組レギュラーっていうんですが「村人A」とか「町人B」とか毎回違う役をやったりで、週8本レギュラーをもってたときもありました。でもそれも長く続けていてはいけません。1、2年もすると番組レギュラーも卒業です。今度は少しずつ名前のある役がもらえるようになってくるんですが、これがひとつの山場ですね。もう新人ではないし、その役が出てこなければスタジオにも用がないわけですから、以前に比べてガクンと仕事が減っていきました。生活していけるのか、自分自身に役者としての魅力はあるのか?と不安になる日が続きました。

 初めてオーディションに受かったのは『緊急発進セイバーキッズ』という番組でした。その後『機動新世紀ガンダムX』や『GTO』、『天使な小生意気』と、主役も何本かやらせてもらえるようになりましたが、主役というのはいわば座組の長になるわけで、台本のいちばん右に名前があるということを自覚して、率先して番組を引っ張っていかなくてはなりません。気合が入りますね。自分で考えすぎて空回りしたり、周りへの気遣いが足りなかったり。大変だけど、それでも自分の看板番組というのはやはりやりがいがありますよね。1本の作品を作るという意味でもとても勉強になります。芯になるキャラクターですから無駄なアドリブもしていられないのですが、アドリブについては僕の考えがあるんです……。

 『緊急発進セイバーキッズ』あたりから、少しずつアニメスタッフさんとも一緒にご飯に行くようになって。東京ムービー(現、トムス・エンタテインメント)のプロデューサー・吉岡昌仁さんともよく飲みながらアニメが作られるまでの話とか、物作りに対する思いとか、いろいろお話を伺いました。僕らの時代は飲みながらいろいろと勉強になる話を聞くことが多かったんですね。そして、1996年『名探偵コナン』が立ち上がるときに吉岡さんが、元太役にいいんじゃないかと僕を推薦してくださったんです。当時の僕はガキ大将的な役はやったことがなかったのですが、今ではすっかり僕の代表的なキャラクターになりました。吉岡さんが、元太という僕の役者としての新境地を開いてくれたわけです。そして同じ頃『機動新世紀ガンダムX』のオーディションで主人公のガロード・ランにも決まりました。この年は僕にとって大きなステップアップの年になりましたね。たくさんの人に恵まれ、たくさんの人に助けられました。そんな『名探偵コナン』も今年で20周年。今ではすっかり僕のライフワークになっています。

 僕はよくアドリブの名手だと言われることがあるのですが、実はそんなことはないんです。むしろ僕は不器用でそんなにポンポンと言葉が出てくる人ではありません。そもそも僕は、本来アドリブは必要ないと思っているんです。作家さんがしっかりドラマを作って計算して台本を書かれているわけで、台本と違うことをしゃべったら相手役にも迷惑をかけてしまいますしね。そこに書かれてあるセリフどおりに、心を込めてしっかり演じるのが役者だと思っています。ただ、それだけではないとも思っています。それは芝居とはいえ生物(ナマモノ)ですから。また、収録現場の空気は観ているお客さんにも伝わると思っているので、現場の空気はいつも楽しくありたいと思っています。そのために何か変えることや加えることが必要だと思ったら監督や相手役に相談するか、まずテストでやってみます。そして監督から要らないと言われれば本番ではやらないし、「それ、いただき!」となればやります。そんななかで生まれたのが高木刑事かもしれません。あとで「目暮警部の右腕になるような刑事を探していたんだよ」とスタッフさんからも言われてうれしかったし、何でも思ったらやってみるもんだなぁって思いました(笑)。

5253 あと、アドリブといえば同じ頃に放送していた『ビーストウォーズ』の存在はすごいですね(笑)。あれはもう皆さんやりたい放題でしょ(笑)。でも実はあれも、無法地帯のようでそうじゃないんです。「無音のシーンがあったらとりあえず何かアドリブで埋めてください」という、無茶な設定のなかで「テストのときにみんなが笑わなかったら、台本のセリフに戻ってはいけません」という、暗黙のルールがあるんです。どういうことかというと「この台本はアンゼたかしさんという翻訳家がしっかり考えて訳したものであって、そのセリフを変えるならば、それ以上に面白いものにしてくれ」と。「それが面白くなくて受けなかったからといって元のセリフに戻るのはダメです。翻訳家に失礼でしょ?」ということなんです。だから無音のシーンはともかくとして、セリフの部分は意外とアドリブするのに勇気がいるんです。 そういう「心してアドリブしなさい」という厳しさが『ビーストウォーズ』の中にはあったから、きちんとドラマが成立していたんだと思います。もう収録中は相手が何言うかわからないから、セリフを聞こう聞こうって集中するんですよ。セリフの掛け合いも鍛えられる、瞬発力が必要な現場でしたね。『ビーストウォーズ』も20年。今も伝説の番組と言われるのはとてもうれしいです(笑)。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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