声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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鈴村健一の声優道

声優として第一線で活躍しながら、株式会社インテンションの代表取締役として辣腕を振るう鈴村健一さん。その根底にあるのは「新しいことに挑戦し続けたい」という理念だとか……。そんな鈴村さんに、これまでの役者人生を振り返ってもらいつつ、"声優"という職業の実像を語っていただきました。

プロフィール

鈴村健一 すずむらけんいち…9月12日生まれ。インテンション代表取締役、また声優としても同社に所属。主な出演作は、アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレジェンドスター』(聖川真斗)、『おそ松さん』(イヤミ)、『タイガーマスクW』(棚橋弘至)、『黒子のバスケ』(紫原敦)、『宇宙戦艦ヤマト2199』(島大介)、『銀魂』(沖田総悟)ほか。

①自分が何者かを知らなければほかの役を演じられない

自分が何者かを知らなければほかの役を演じられない

──鈴村さんは声優として活躍する一方、インテンションの代表として後進の育成にもあたっています。ご自身が声優を目指していたときと現在の環境を比べるとどんなことを感じますか?
 僕の学生時代よりも圧倒的にアニメの数も増えましたし、声優という仕事に対する認知も一般的になりました。それこそ東京に出てきた当時に『声グラ』さんが創刊されて「こんな本が出たんだ!」と衝撃を覚えたぐらいですからね(笑)。最近はインターネットの普及で情報を入手するのも容易になったことで、この世界をよく調べて門を叩いてくる人が確実に増えましたね。みんな声優という職業に憧れてこの業界に入ってきますし、それが今でこそ当たり前ですが、声優になろうとして業界に入ったのは僕らの世代くらいから始まった風潮なんですよ。それまでは舞台からの流れで声優のお仕事を始めた方が主流でしたから。

6501小さめ1──声優という職業のイメージも大きく変わりましたよね。
 今じゃ「武道館でライブをしている声優さんに憧れて!」といった感じでこの世界を志す人も増えましたね。僕自身もそれこそ『声グラ』さんの創刊を目のあたりにして、声優という職業はバラエティ豊かな職種になっていくんじゃないかなと予想していたんですが、そのとおりになったと思いますし、声優がいろいろなことができるととらえてもらえるのは、入り口としては素敵なことだと思います。もちろん業界の内外問わずに「声優はお芝居ができてこそで、歌う仕事なんかじゃない!」とおっしゃる方がいらっしゃるのもわかります。でも、僕はそういう意見は時代遅れだと感じるんですよ。

──時代遅れですか……。
 たしかに僕自身も30代の頃は人並みに「最近の若者は……」なんて思ったこともありましたが、いつしかバカバカしくなったんです。だって、時代は変わっていくものですし、あのシェイクスピアだって、初めはセンセーショナルすぎて周りから「なんだこの芝居は!?」と言われた歴史もあったらしいですよ。周囲からの反発への抵抗がそのまま文化の芽生えにもなりますし、それに目を背けていては先に進めません。声優という職業のあり方も大いに叩かれたうえで、それを真摯に受け止めつつも、前に進むことで変化していくべきだと感じています。

──たしかにどの世界でもスタンダードは変わっていくものですよね。
 日本語だって日々変わり続けているじゃないですか。アクセントの勉強を欠かせない僕らからすると「昔はこう言ったけど、今はこういう言い方もするよね」と感じることも少なくありませんが、それでいい気がしてます。とある国語学者さんがおっしゃってました、「過去は過去。その延長には未来があって新しいものがつねに生まれている。言葉は時代とともに変化し続けてきた」と。ただ、進化が望ましいとはいっても荒唐無稽に革新的なことをやればいいとは思っていません。しっかりと過去のことを知ったうえで、そこに新しいことを積み上げていく。そういう前提が大切だと思います。

──壊すだけではなく、過去を知ることが大切なんですね。
 知ることは役者にとって大切な作業だと僕は思っています。今の若い世代はそれこそ情報を得る手段が豊富で「 昨日、ネットで調べたんだけど」みたいな会話も日常的になされている。でも、そのままではただの受け売りであって、聞きかじった情報を流しているだけにすぎません。なんで、自分がそこに興味をもって知ろうとしたのか。そして、それを知ってどう感じたのか。そこから新たなことに興味が湧いた気持ち……そういった興味をキッカケに自分という存在を深く知ることができるし、そんな視点で物事をとらえていったほうがいい。役者は自分の肉体と精神以外に武器を持たない職業ですから、自分が何者かを知らなければ、ほかの役を演じることはできないんです。

新鮮な空気を求めていったら声優にたどり着いてしまった

──今の声優さんのタマゴのなかには、そういう意識が強い子も?
 なかなかいません(笑)。インテンションのワークショップに来る子のなかには「ただアニメが好き」という子も多いです。入り口はそれでOKだと思います。でも、稽古場に入って、自分が発信する側に回らなければならないと気づいた子から自然と顔つきが変わっていく……自覚が生まれてからが本当のスタート。また、興味をいっぱいもっている子のほうがお芝居への取り組みに楽しさを見いだしていく。実際、僕がそうでしたから間違いありません(笑)。

──鈴村さんの好奇心は、役者という職業にピッタリだったと。
 昔からそうなんですよ。高校生のときに進路を考えることになって、でも、そこでどうしても僕はサラリーマンになるという道を選びたくなかった。毎日同じルーティンを繰り返す生活になりそうでイヤだったんです。……まぁ、今となってはサラリーマンの方が同じルーティンを繰り返しているだなんて失礼なことはこれっぽっちも思っていませんが、当時の僕にはそう見えてしまったんですね。

──だから、違う道を目指した?
 まず最初に興味をもったのは調理師。季節の旬に応じて食材も変わるし、湿度が違うだけで天ぷらの揚げ方も変わってくるなんてことを本で読んだこともあったんで、毎日違うことにトライできるなんて素敵だなと! でも、そう思っていた矢先、友だちの落合くんが「声優になりませんか?」という新聞の切り抜きを持ってきたので、「ああ、こっちもいいな」と同時進行することに……。そうしたら養成所への入所が見事に決まったので、そちらを選んだというのが最初です。ただ新鮮な空気を求めていったら声優にたどり着いてしまったんです。

──養成所時代にどんなことを感じていましたか?
 教えてもらうことに幅があるんだなということにはすぐに気づきました。養成所に通うのと同時に、お芝居系のワークショップにも通っていたんですが、そこで教えることがまったく真逆に見えてしまって。養成所では「そういうときはゆっくり喋るんだよ!」と技術的なことを言われるのに対して、お芝居系のワークショップでは、セリフを使わず、アクティングエリアで役を動かすことの必然性を学んでました。当時の僕には両方がかい離して見えましたし、とくに声優の養成所で教えていることがすごくチープに見えてしまった。今でこそ、考えることと感じることを両立するやり方をそれぞれのアプローチで教えてくれていただけだってわかるんですが、本当の意味で理解するのに20年ぐらいかかっちゃいました(笑)。まったくそんなことがわからなかった僕はすっかり嫌けがさして養成所に「やめます」と電話を入れようとしたんですが……まさに受話器を取ろうとしたタイミングで、逆に養成所から「受けていたオーディションに合格しました」と連絡がきたんです。

──奇跡的なタイミングですね!
 あれがなかったら、そのまま声優の道はあきらめていたかもしれません。でも、この奇跡は当時の僕にとってはつらい部分もあって……。その時決まった役は『Ninja者』のカヲルという役だったんですが、まともに身体をコントロールできない僕がいきなりメインキャストとして現場に立つということの重圧はとてつもないことだったんです。ディレクターから演出してもらってもうまく答えられない。僕としては最善をつくしているのに、それでもぜんぜん足りないんです……。そんな状態でお仕事をもらってしまったことも苦しくて苦しくて本当に悩みましたが、今思えばそんな経験が今後につながったんだなとも感じています。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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