声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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~音響監督に聞け!~ 飯田里樹

音響監督って、どんな仕事をしている人? 今、音響監督が求めている声優像とは?・・・そんな疑問に現役の音響監督が答えてくれる新企画。第1回は『超特急ヒカリアン』でデビューし、『結城友奈は勇者である』『キノの旅』などの作品を手掛ける飯田里樹さんが登場。前・後編2回のトークでお届けします。

プロフィール

飯田里樹 いいださとき…1974年2月18日生まれ。現在はフリーランスとして活動。’99年、『超特急ヒカリアン』でテレビアニメ音響監督としてデビュー。以降、『天体戦士サンレッド』『結城友奈は勇者である』『暗殺教室』『サクラクエスト』『月がきれい』『キノの旅 -the Beautiful World -the Animated Series』など多くの作品を手掛ける。

①声優のキャスティングは、作品によって違う

声優のキャスティングは、作品によって違う

 音響監督は、映像作品やゲーム、ドラマCDなどの音響に関する部分の演出を担当します。アニメの場合だと、音響にはセリフ・音楽・効果音の3つがあり、セリフだったら声優さん、音楽だったら作曲家さんやミキサーさん、効果音なら音響効果さんと、それぞれ専門家がいます。その方たちに「今回の作品の狙いはこうだから、こういう音にしてください」と指示するのが音響監督の仕事です。

 _DSC8887_atari作品を作るときは、まず監督やプロデューサーさんと顔合わせをして、「今回のターゲットはこういうお客さんで、そこに向けて作品を作りたい」というお話を聞きます。それなら音楽をどうするか、声優のキャスティングをどうするか、とアイデアを出し合い、その後、各スタッフに指示を出していくわけです。

 声優のキャスティングは「誰に向けて作品を作るのか」によってかなり違ってきます。たとえば男性向けの作品で、女性アイドル声優を集めてイベントも行う、というプランがある場合、見た目が可愛く、舞台映えして、歌やトークが上手なことはもちろん、多少お芝居は未熟でも全イベントのスケジュールが確保できる方がビジネス的には優先されます。また、女性向けの作品であれば人気の男性声優さんをずらっと揃えたり、子供向けの番組なら声優のネームバリューは必要ないので、作品に合う元気のいいキャラクターを求めたり……。そんな感じで、作品によって声優の選び方は違ってきます。

 昔は100人以上をスタジオに呼んで1週間かけてオーディションをやったりしていましたが、今はそういうのは少なくなっています。監督が1週間もオーディションに参加していると、その間、画の方の現場が止まってしまいますから(笑)。最近では1次審査としてテープオーディションを行うのが主流ですね。声優さんにセリフを吹き込んでいただいた音声データを送っていただいて、それを聞いて候補者を絞り、残った中から実際にスタジオにお招きしてお芝居を演じてもらって決める、という流れが多いですね。

 「今回は全くの新人でいきたい」という作品であれば、われわれの知らないような新人を声優事務所さんから広く募ることもあります。逆に、われわれがある程度候補を絞った上で、声優事務所に「オーディションのテープを出してください」と頼むこともあります。最近は指名の方が多いですね。指名と言っても一役に1人ではなく、10人くらいの名前を挙げます。絞り過ぎるとせっかく合格した人たちのスケジュールが合わなかったといった事態もあるんです。なので、通常は1キャラにつき何人か最終候補を残しておいて、各キャラの候補者の中から同じ曜日にスタジオに集まれるメンバーを採用するといったことが多いです。実力以外に縁や運も作用するという事ですね。

25歳でテレビアニメ音響監督に

 私は元々映画監督志望でした。高校時代には映画研究部にいて8ミリフィルムで実写映画やセルアニメを撮っていました。そのとき映画監督になりたくて、映像系の専門学校を選びました。でも当時はハリウッド映画の全盛期で日本映画は元気がなかったので、映画業界ではなく、テレビ番組制作会社のダックスインターナショナル(現・ダックスプロダクション)にADとして入りました。

 そこは「まんがはじめて物語」(実写とアニメの融合作品)に代表されるように、実写もアニメも作っている会社でした。基本的に実写作品は監督が音響も演出します。音響作業の進行管理も制作会社が担当するので、ダックスは実写とアニメ、2つの音響制作のノウハウを持つ会社でした。そのうちに声優ブームがやってきて、取引先から「ドラマCDを作りませんか?」というお誘いがあったので、ドラマCDの制作業務を始めることになりました。そのドラマCDがアニメ化することになって「アニメの音響制作もやりませんか?」「じゃあ、やりましょう」となって(笑)。それからだんだんアニメの音響の仕事が増えていきました。

 _DSC8962_atari元々は実写の会社なので社内に音響監督がいなくて実写やアニメの監督に音響監督をお願いしていたのですが、そのうち、予算が出ない小っちゃい仕事が増えてきて「じゃあ、自分でやっときます」って感じで私がやるようになりました。社内の事情ですね(笑)。

 元々演出には興味があったので、音響とはいえ監督になれて楽しかったです。入社した時には音響監督という仕事があることも知らなかったんですが、20歳で入社して23歳でゲームの音響監督を始めて、25歳でテレビアニメの音響監督もやらせてもらいました。『超特急ヒカリアン』という7分のコーナーです。当時音響監督としてはかなり若い方でしたね。

 新人の頃はよく声優さんにいじめられて、「いつか見返してやる」なんて思っていました(笑)。でも当然なんですよ。若造だったし、仕事もできなかったので。また、監督さんに年配の方が多かったので、自分の意見を通すのもなかなか難しかったです。

 音響監督になるにはいろいろなルートがあると思います。私がいた会社には専門学校の音響監督科コースを出た後輩もいましたが、基本的には音響制作会社に入って音響制作進行を経て音響監督になるパターンと、アニメの録音スタジオのミキサーを経て音響監督になるパターンが多いようです。

 昔は舞台演出などをしていた方が「アニメの役者さんの芝居を見てよ」と頼まれて音響監督になるケースもあったようで、多分それが音響監督のそもそもの始まりだったのかもしれないですね。私より上の世代だと、ミキサーやエンジニアを経て音響監督をやっている方や、元々役者だったけど今は音響監督をやっているという方が多くて、「音響監督になりたくてこの業界に来た」という人はあまり聞きません。若い世代で音響監督になりたいという方が増えていると聞きますが、偉大な先輩方のおかげでこの職業が認知されるようになったということでしょうね。

キャスティングは、必ずしも声優でなくてもいい!?

 今までいろんな仕事の現場を経験させてもらいましたが、やはり作品によって取り組み方はいろいろ違います。例えば『天体戦士サンレッド』は会話の間合いが重要なギャグ作品で、お笑い芸人さんや舞台役者さんを招いて、先にセリフを収録してそれに合わせて後から映像を作るプレスコという方式を採用しました。その中には、髭男爵のお二人や当時AKB48のメンバーだった河西智美さんもいらっしゃいました。オーディションのときは、8キャラあるので8人でブースに入ってもらって「役を交代しながら全キャラを一周します。女性の方にも怪人を演じていただきます。面白おかしくやってください。スタッフが笑ったらあなたの勝ちです」なんて張り紙を貼っておいて(笑)。お笑い番組のオーディションみたいで面白かったです。

 また、「Angel Beats!」や「サクラクエスト」などでは、レギュラーキャラの中に外国人タレントを起用してネイティブな英語を話していただいたり、中学生の等身大の恋愛を描いた「月がきれい」ではリアルな中学性の会話が必要だったので、現役高校生やアニメのアフレコが未経験の方などを起用してプレスコで収録しています。

 このように、作品によっては声優以外をキャスティングするという選択肢もあると私は思っています。もちろん、その作品が想定しているお客様が何を求めているのか、どういう手法を使ったら楽しんでいただけるかを見極めることが肝心です。何よりもお客さんに喜んでいただかなければなりませんから。このことは、演出する際にも気をつけています。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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