声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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~音響監督に聞け!~ 飯田里樹

音響監督って、どんな仕事をしている人? 今、音響監督が求めている声優像とは?・・・そんな疑問に現役の音響監督が答えてくれる新企画。第1回は『超特急ヒカリアン』でデビューし、『結城友奈は勇者である』『キノの旅』などの作品を手掛ける飯田里樹さんが登場。前・後編2回のトークでお届けします。

プロフィール

飯田里樹 いいださとき…1974年2月18日生まれ。現在はフリーランスとして活動。’99年、『超特急ヒカリアン』でテレビアニメ音響監督としてデビュー。以降、『天体戦士サンレッド』『結城友奈は勇者である』『暗殺教室』『サクラクエスト』『月がきれい』『キノの旅 -the Beautiful World -the Animated Series』など多くの作品を手掛ける。

②オーディションの攻略法なんて存在しない!?

声優のキャスティングは、作品によって違う

 私たち音響監督が声優をキャスティングするとき、「お芝居が上手い人を選ぶ」と誤解している方は多いと思います。もちろん演技力も大切です。でも本当を言うと、芝居の上手さよりも重要なのは「その作品がターゲットとするお客さんを楽しませることができるか」ということなんです。作品ごとにターゲットとなる客層は違いますので、当然キャストも、作品ごとに必要とされるスキルが変わってきます。

 たとえば、美少女キャラたちの可愛らしさを描いた作品なら、視聴ターゲットは男性が中心になります。キャスト自身も若くて見た目が可愛い女性の方がお客さんの要望に応えることができるでしょう。若くて可愛いならイベントで会いたい。歌って踊れて、最近はニコ生やラジオの仕事も多いのでトーク力があることも重要になってきます。このケースだと、いくら芝居が上手くてもラジオやイベントでまったく喋れない役者は採用できません。逆に、ストーリーが骨太でドラマ性の高い作品の場合は「物語に没入したいのでネームバリューは必要ないから、芝居が上手い人でやってほしい」という要望もあります。そのときは声優ファンが知らない人でも関係なく、外画の吹替えや舞台で活躍されている方を選んだりします。要は、その作品のお客さんによるんです。

 _DSC8921_atari今いろいろオーディションを受けている方もいると思いますが、オーディションに落ちても落ち込む必要はありません。アニメの場合、オーデイションでは1人のキャラクターに対して1人しか受かりません。同点で2人合格とかはありえません。100人受けても99人は不合格になりますから、落ちるのが当たり前。だから、くよくよする必要はないんです。そのときに選ばれなくても、オーディション現場で「私はこういう人です」とちゃんとPRできていれば、それで良いんです。「面白い子がいたな」と審査員たちの記憶に残っていれば、
また違う役で選ばれるかもしれないし、ゲストで呼んでもらえるかもしれない。チャンスはありますからね。

 オーディションには、スタッフ一同、キャラクターの声の大まかなイメージを持って参加しますが、実際に現場で聞いてみたら、こちらのプランとは違うアプローチでキャラクターを演じる役者さんがいて、その方が面白かったので採用になったというケースもあります。また、現場に来たときの「おはようございます」の第一声も重要な選考ポイントです。挨拶って、その人の個性が出るんですよ。死んじゃいそうな暗~い役柄なのに「おはようございますっ!」と元気に入ってきたら「ちょっと違うかな」と思いますし、元気なさそうに入って来たら「この人は期待できる!!」となります。

 最近はアニメの題材にもいろいろなものがあります。部活にしても麻雀だったり、歌舞伎だったり、スポーツにしても自転車だったりフィギュアスケートだったりと様々です。例えばプラモデルを題材にしたアニメのオーディションの時に、プロフィールに「特技:プラモデル」と書いてあったらスタッフは注目するでしょう。プロフィールは重要です。プロフィールが面白い=その人の人生が面白いということです。色々なことに興味をもって、いろいろな趣味や特技を持っていることが、やがて役者としての大きな手助けになると思います。

 このように、作品によって必要な人材は異なります。その意味では、オーディションの攻略法は存在しないと思います。「良い声優ってどんな人?」と聞かれても、そんなの、作品によって違いますから。

今の若い人は、アニメ芝居は上手いけど……

 昔は舞台役者出身の方が声優をやられることが多くて、発声や滑舌、腹式呼吸ができていても芝居がアニメっぽくない人が多かった。今の若い人たちは生まれたときからアニメを観て育っているので、アニメ芝居は上手いんですよ。「何ィッ!?」「やめてぇぇ!」なんてセリフは完璧。だけど、腹式呼吸や発声、滑舌がまったくできてない人が多い。昔とまったく逆なんです。

 今の若い方たちって、みんな芝居はできるし、仮に芝居経験がなくても、それまでアニメを観てきた引き出しやデータベースがたくさんあるので、「あの作品のあのキャラみたいな感じ」と言うとすぐ理解できる。演じ分けやアニメ芝居の機微はとてもよく分かっています。その上で滑舌、発声、アクセントがちゃんとできていたら最高ですよね。

 また、声優は自分の筋肉を使って声帯から音を発する、体力を必要とする職業です。体力のない若者が多いので、もっと体力をつけてほしい。バトルもののオーディションなどで「笑う、泣く、必殺技」の芝居を叫んでもらうと、それだけで息が上がってハアハア言ってる方もいます。そんなんじゃ、30分番組の収録で持ちません。また芝居以外にもキャラソンを歌って踊る仕事もあるので、やはり体力は必要です。それと、今どきの若い方は日常会話ではあごを動かさないでしゃべっていると思います。役を演じるためにはもっと頑張ってあごの筋肉を鍛えてほしいです。

名脇役になれそうな若い人に出てきてほしい

 _DSC8865_atariよく現場で若い役者さんたちは「ベテランの方みたいに、もっとお芝居が上手になりたい」と言っています。それ自体は悪くないのですが、もしその作品にベテランみたいな演技力が必要だったら、われわれは最初からベテランの役者さんを呼びます。なぜあなたが呼ばれたのか? を考えてみてほしい。それは演技力よりもフレッシュさが必要だったりするからなんです。だから、今すぐベテランみたいな演技を欲しがらなくていい。2年、3年とやっていたら勝手に上手くなるから、無理に背伸びしなくていいんです。私は若い声優さんに「われわれはあなたのいいところを買っている。今のピュアな演技は、今しかできないよ」と伝えるようにしています。ときには荒削りが武器になることもあります。残酷ですが、若さは失われていきます。若いということはアドバンテージでもあるのです。

 若い声優さんや、これから声優を目指す皆さんには「その人にしかないキラっと光る魅力」を持っていてほしいですね。主役ばかりやっている人にはできないような悪友とか悪ガキとか、そういう役ができる人って魅力的ですよね。チャンバラもので主人公がズバッと斬る演技はみんなできても、斬られて「うわ~」と苦しむ演技がなかなかできない。斬られた方も主役みたいな声で演じちゃうから。もっと主役を引き立てる名脇役がほしいです。

 カッコいい声、可愛い声はライバルが多くて、勝ち残っていくのはかなり厳しい。でも『魔法使いサリー』のよっちゃん、『サザエさん』の花沢さんのような脇役ができる若い人がいれば、現場で重宝がられると思います。芝居は未熟でいいんです、若いんだから。ただ“その人だけが持っている味”みたいなものはほしいと思いますね。

 最近は声優養成所のワークショップに参加する機会もあるのですが、そこで将来面白い脇役になりそうな、有望な方をたくさん見かけます。なので、あらためて声優養成所のスタッフさんには主役やヒロインができるかにとらわれず「良い声優さんを育ててほしい」と願っています。

 現在はアニメのジャンルも様々で、求められる人材も様々です。アニメのビジネスがブルーレイやDVDに頼っていたころは、人気声優を使って豪華さを歌わなければ買ってもらえませんでした。ですが、動画配信を中心としたビジネスに移行するにあたり、いろいろな作品をつくるという時代に変わってきた。つまり、いろいろな役者さんにチャンスがあるということです。その中で、その人にしかない武器を持っている役者さんが求められる傾向が強いと思います。ぜひ、個性的な役者さんがたくさん出てくることを願っています。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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