声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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土井美加の声優道

アニメでは母親役など落ち着いた役柄を多く演じ、洋画吹替えではジュリア・ロバーツ、メグ・ライアン、ジョディー・フォスターらハリウッドのヒロインを数多く担当している土井美加さん。これまで土井さんが歩んできた声優道を、全3回のトークでお届けします。

プロフィール

土井美加 どいみか……8月4日、仙台市生まれ。ムーブマン所属。
アニメでは『超時空要塞マクロス』(早瀬未沙)、『るろうに剣心』(高荷恵)、『新世紀エヴァンゲリオン』(リツコの母)、『魔女の宅急便』(ケットの母)、『ONE PIECE』(コビー)などの声で知られる。さらに洋画、ナレーション、舞台など幅広く活躍。
ムーブマン

①自分には、声のお仕事が合っていると感じた

中学時代、演劇部の公演でお芝居の楽しさを知りました

お芝居の楽しさを初めて知ったのは、中学2年のときでした。私は、女生徒ばかり100人以上も部員のいる演劇部に入って、『アンネの日記』のアンネの役をやることになりました。うちの学校はミッション系だったのですが、学校の礼拝堂で『アンネの日記』を上演したんですね。そのお芝居が終わったとき、宣教師のランディス先生が私の手を握って「美加、すごく良かったよ」と言って泣いてくださったんです。そのとき「先生、私のお芝居を見てこんなに感動してくれたんだ」という思いが、とてもうれしい体験として心の中に残りました。そして「お芝居するって、すごく楽しいことなんだ。自分が一生懸命になれることなんだ」と気づいたんです。

doi1-1その後、劇団に入って研究生になったのですが、ほぼ同時期に声優の仕事も始めるようになりました。当時、制作会社の東北新社が声優の養成をしたいということで、声優に興味のある若い俳優をいろんな劇団から集めていたんです。私もその中のひとりで、東北新社のディレクターさんについて勉強をすることになりました。コント赤信号になる前の小宮孝泰さんも一緒に勉強していたんですよ。

ただ、私たちを指導してくれていたディレクターさんはすごく多忙な方だったので、なかなかレッスンの時間がとれなかった。それで「どんどん現場で使ってもらって、実践で学んでいこう」という方針になり、いくつか仕事をいただいて現場に出ることになりました。ある意味ラッキーだったと思います。結局、劇団の本公演に立つよりも先に声の仕事を始めることになり、現場のスタジオで先輩方からお芝居を教わっていきました。

‘79年にテレビシリーズ『がんばれ! ベアーズ』のオーディションに受かって、ピッチャーの女の子・アマンダ役をいただきました。この作品は1年間続きましたが、この頃から声の仕事をたくさんやりたいと思うようになりました。その『ベアーズ』の現場には、アニメや洋画の主役級の、そうそうたる方々がいらっしゃいました。富田耕生さん、羽佐間道夫さん、野沢雅子さん、小宮和枝さん、松金よね子さん、当時『赤毛のアン』をやっていた山田栄子ちゃん、そして私のボーイフレンド役で三ツ矢雄二さんもいらっしゃいました。

その頃、私は現場で「すごくおとなしい子」と思われていました。自分のセリフのときにしゃべり出すと、ディレクターさんから「あれ、美加ちゃん、今日いたの?」って言われるくらい(笑)。劇団では決しておとなしい方じゃなかったけど、声優の現場はまったく空気が違ったので、どうしていいのかわかんなかったんですよね。緊張して固まっていた私を、いつも三ツ矢さんがいじってくれて、みんなの中に入れようとしてくれました。

今でも仕事の現場に入っていくのに、少し時間がかかります。なかなか自分が出せなくて。でも最近は自分が一番年上の現場も多いので、若手の人たちを和ませてあげるのも私たちの仕事なのかな、とも思います。三ツ矢さんは、それを何十年も前からずっとやってらっしゃったんですけど(苦笑)、私は今頃になってやっとそう思うようになりました。

舞台では絶対できない役も、声の仕事ではできる!

私は大勢で写真を撮るときも、端っこや後ろに行ってしまうような性格でした。そんな自分の性格が、声のお仕事は合っていると感じたんです。まず表に出ている人物がいて、その人に声をあてるわけですから。そのポジションが何となく心地良かったんです。

doi1-2また、舞台では絶対できないような役を、声の仕事ではできる・・それがすごく楽しかったです。私は小柄ですけど、声の仕事では大女の役もやったことがあります。気づくと背伸びしながらしゃべっていたりして、「君が背伸びすることないだろう」って周りのみなさんに笑われましたけど(笑)。普段の私は相手を見上げて話しているけど、その大女は上から目線でモノを言ってたから、その人の気持ちが乗り移って自然にそうなっていたんですね。もちろん、人間以外の役・・アリの役もネズミの役もやりましたし、ずっと演じているキャラクターもアヒルですからね(笑)。そのへんが声優の面白さですね。

10年に1回くらい、演じていてすごく気持ち良くなる瞬間があるんですよ。必ずしも楽しいセリフを言っているわけじゃないけど、本当に心の底からすごく楽しくなっている自分がいるんです。その役と自分が一緒になれた瞬間、とでも言うのでしょうか。「こんなに楽しい気持ちで仕事して、お金をいただいていいのかな?」と思うくらい(笑)。えも言われぬ境地です。

でもそれは滅多にないことで、普段は自分にダメ出しすることが多いです。収録を終えて帰る途中で、「さっきはこう演じたけど、もしかしたら、こういう風にやれば良かったかもしれない」と思いついちゃって、スタジオに引き返そうかと思うこともよくあります。ほとんどそんな感じですね。気持ち良くなる瞬間は滅多にない。でもいつかまたあの気持ちになれるのかも・・と思ってこのお仕事を続けているのかもしれません。

 

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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