声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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キートン山田の声優道

最初は自分が役者になるとは思っていなかったというキートン山田さん。ところが、自分の新たな可能性を探して劇団に入ったことから、演技の楽しさを発見したとか。数々の番組で「キートン節」とも言うべき名調子を披露しているキートン山田さんが、これまでに歩んできた長い道のりを3回に分けてお届けします。

プロフィール

キートン山田 きーとんやまだ…10月25日生まれ。リマックス所属。主な出演作はアニメ『ちびまる子ちゃん』(ナレーション)、『MASTERキートン』(ナレーション)、『銀河英雄説』(アレックス・キャゼルヌ)、『一休さん』(足利義満)、『サイボーグ009』(004)、『ゲッターロボ』(神隼人)ほか、『大!天才てれびくん』『みんなの疑問ニュースなぜ太郎』『理科3年 ふしぎだいすき』『○ごとワイド~キートンの名店』『土曜スペシャル』など数多くの番組でナレーションを務める。

③厳しい時代だからこそ挑戦できることがある

ナレーションの極意とは、自分の感覚で語ること

 今ではさまざまな番組のナレーションをさせていただくようになりました。おかげで時々「ナレーションの極意とは?」みたいなことも聞かれますが、僕もはっきりとした信念や理論の裏打ちがあるわけではないんです。ただ、『ちびまる子ちゃん』などが分かりやすいかとは思いますが、僕はナレーションを「ナレーションという名前の役」だと思って演じているんです。
 キートン山田になって初めてのナレーションの仕事は、あるバラエティ番組でした。それはかなり早口でしゃべり倒すようなナレーションだったので、とにかく感じたままやりたいようにやろうと思ったんです。それでダメ出しされたら、そこから考えようと思っていましたが、最初のプランでOKが出てしまいました。その番組のナレーションは7年くらい続きましたね。
 その番組をやっている最中に、『ちびまる子ちゃん』のナレーションの仕事が入ったんです。僕としては、どちらも自分が感じたままに、自分らしくしゃべっているつもりなのですが、テンポや口調が両極端に違うので、最初は同一人物がしゃべっているとは思われなかったくらいです。

_DSC6354_atari 誰かとの会話で物語が進んでいく演技と違って、ナレーションは自分一人でする仕事です。だから大事なのはやっぱり、自分ならではの感性だと思うんですよ。バラエティ番組であっても、旅番組であっても、グルメ番組であっても、自分の感覚に基づいてしゃべらないと、ただ文章を読まされているだけになっちゃう。ですから僕は、ナレーション原稿は叩き台だと思っています。よく、原稿に書かれていないことをしゃべっちゃったりするんだけど、それは僕自身の思いだから止められないし、結果として番組が成立すればそれでいいと思っています。もし極意があるとしたら、こういうことかな。
 もうひとつ、ナレーションは最後に入れるものだから、決して映像を邪魔しないようにとは思っています。いわば、しゃべるBGMみたいな感じでしょうか。特に旅番組などでは、映像があって、出演者がしゃべっていて、テロップが出てと、ナレーションがなくても大体のことは伝わるじゃないですか。ですからナレーションなんて、必要最低限でいいんです。決してうるさくなく、耳障りにならないように、なおかつそこに自分の感覚を乗せてしゃべれるようになるといいですね。

 どんな役者でも、事前に準備をすればするほど、稽古してきたものを全部出したくなっちゃうんです。でもそれをやると、非常にうるさい(笑)。時間をかけて十分に準備して、そこから何をどう引き算すると一番効果的なのか考えるのも役者の仕事です。だからよく現場でも、用意された原稿を見て「この部分はいらないんじゃないの?」といったように、スタッフの方と相談しています。

伝えたいと思う気持ちがあれば、生き残っていける

テレビの前で僕らの演技を見ている人の中には、さまざまな年齢の人がいます。見ている状況や理由もさまざまです。なんとなくテレビをつけているだけの人もいれば、真剣に見ている人もいる。その人達が歩んできた道もさまざまで、誰一人としてまったく同じ経験をしてきた人などいません。
 でも僕らは、そのさまざまな人達全員を頷かせるような演技をしなくちゃいけないんです。僕もできているとは思っていませんが、できるだけ多くの人に共感してもらえるような語りがしたいと思っています。そのためには、つねにテレビの前の人達のことを考えるようにしています。

 例えば僕と同年代の人に向けては、「あの時代はこうだったよな」という思いを強く表現すれば、より色濃く伝わるものがあるんじゃないでしょうか。最近の若い人達のことは、僕にはよく分かりませんが、そういう思いを込めた語りをすることで、「あの時代はそうだったのか」と納得してもらえることもあると思うんです。
 そういう意味では、日常のすべて、人生そのものが勉強だと思っています。逆に言うと、そういう自分の経験の中から出てくる思いを込めた語り口というのは、学校で教えてもらえるものでもないし、何かの本に書いてあるわけでもないんです。自分らしく語る、血の通った語りをするというのは、そういうことじゃないでしょうか。誰かに何かを伝えたいという気持ちをもって、つねにそれを心がけた演技をしていれば、時代が変わっても生き残っていけるのではと思っています。

自分で自分を育てていくということ

_DSC6345_atari 今は声優養成所もたくさんあって、学ぼうと思えばいくらでも学べる環境があります。僕は現場で盗み見て覚えていったので、羨ましいなと感じることもありますね。でも、学校だけでは学べないことも多いし、あまり教わりすぎるとテクニックばかりに走って、その人らしさがなくなってしまう気がするんです。基礎を固めるには、学校や養成所で教わるのが早道だと思います。しかし、ある程度の土台をしっかり作ったら、そこから先は自分で学んで自分を育てていってほしい。表現は自由なものだから、誰かから教わってできるものではないんです。

 僕はナレーションを正式に学んだことがありません。だからこそできる表現もあると思うんです。いろいろなことを経験して、それを演技に生かしてこそ、自分の個性というものが出てくるのではないでしょうか。
 ただ、そうやって頑張っても、報われるとは限らないのが声優です。僕自身、今まで長いこと声優をしてきましたが、「自分にぴったりと合っている」と心から思える仕事は数えるほどしかありません。もちろん、それ以外の仕事でも誠心誠意全力でやっていますが、後から考えると「ちょっと違うな」と思うことも(笑)。そういう自分にあった役に巡り会える運があれば、きっと声優として長生きできることでしょう。

 今は声優さんの数も多いし、いわゆる「売れる演技」を求められてしまうことも多いと思います。それが自分に合っていないと、やがて忘れられて消えてしまう。声優さんの仕事の種類も増えて、演技だけではなく歌も歌えなくちゃいけない、ダンスもできなくちゃいけないと、さまざまな力を求められます。大変な時代だと思いますよ。そういう環境の中で今、売れている人気声優さん達は、きっと何かを持っている人なのでしょうね。僕にはとてもできないし、心から尊敬します。

 ただ、そういう時代だからこそ、さまざまなことに挑戦できるというメリットもあると思うんです。ですから、歌でもテレビドラマでもどんどん挑戦してほしい。僕らの時代は声優なんて半人前の仕事だとバカにされていましたが、そうではないんだということを世間に見せつけてほしい。都合よく使われるだけではなく、自分なりの表現をどんどん実現していってほしい。

 そんな夢を、これからの若い人達に託したいと思います。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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