声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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増岡弘の声優道

声優としてアニメ『サザエさん』のマスオさん、『それいけ! アンパンマン』のジャムおじさんといった善良なキャラクターから残忍な悪役まで幅広く演じ分け、さらにナレーター、舞台俳優としても活躍中の増岡弘さん。そんな増岡さんがこれまで歩んできた声優道を、全3回のトークでお届けします。

プロフィール

増岡弘 ますおかひろし……8月7日生まれ、埼玉県岩槻市生まれ。俳協所属。テレビ草創期から声優として活躍。劇団「東京ルネッサンス」を主宰するほか、健康、福祉、家庭教育などのテーマで講演活動も行う。著書に『マスオさんのみそづくり指南』(家の光協会)、『陽だまりのマスオさん』(KIBA BOOK)、『マスオさんの美味しい味噌づくり――若さと健康のモトここにあり』(じゃこめてい出版)、『マスオさんが教えてくれたこと』(廣済堂出版)がある。

俳協 HP

①声の仕事は、あくまで俳優の仕事の中のひとつ

もともとは美術志望。演劇は嫌いだった!?

masuoka1-1 長い間、俳優の仕事を続けてきた僕ですが、若い頃は美術の道に進みたかったんですよ。中学時代の担任が絵の先生で、日本画の日展に出品されるような素晴らしい方でした。その先生に魅せられて「絵をやりたいな」と思ったんです。しかし「絵だけでは食べていけないな」と思い直し、当時の世の中の流れに合わせて工業高校に進学するのですが、いろいろあって中退。その後、大学の検定試験を受けて東京芸大の美術学部に入りますが、そこも2年で辞めてしまって(苦笑)、次に文化学院 文化芸術科に入って美術の勉強をしていました。

 その文化学院の学生の頃に、演劇との出会いがありました。僕は東京・阿佐ヶ谷にあった中華料理店のアルバイトで、お店のプラカードを持って町内を歩く仕事をやっていました。お金がもらえて、賄いの中華料理が食べられて、「こんなにオイシイことはないなぁ」なんて思いながら(笑)。そのバイト仲間に演劇をやっている人がいて、「やらないか」と誘われたんです。

 それまでは「演劇をやろう」なんて思ったこともなかった。むしろ、どちらかというと嫌いでしたね。「その場で終わってしまうお祭り騒ぎみたいなことをして喜んで、その後に何が残る? しかも演劇は集団でやるものだから、自分の個性を自由に発揮できるものじゃない。何でこんなことするんだ?」なんて思っていました。でもまぁ、美術が好きだったので、「美術の舞台装置ならば、僕らしいものができるんじゃないか」と思って、“舞台美術”として劇団に参加したのです。

天才歌人・寺山修司の誘いで、芝居の世界へ

 その頃は、俳優座、文学座、民芸が三大劇団と言われていました。芝居が好きならそういうメジャーな劇団に行って勉強すればいいのに、そういうこともせず、我々は「表現座」という小さな劇団を作って活動を始めました。僕らの劇団があった渋谷には劇団四季がいて、浅利慶太さん、日下武史さん、水島弘さん、藤野節子さんら、そうそうたるメンバーが在籍していました。彼らとすれ違いながら、僕たちは新しい芝居を作ろうとしていたわけです。

 そんな頃、“天才歌人”と言われた劇作家の寺山修司さんと知り合いました。僕より一つ年上の寺山さんと関わり、彼の価値観に触れて、次第に影響を受けていきます。寺山さんの言葉は鋭くて、印象に残りました。たとえば「増岡くん、生が終わって死が始まるならいいよね。でも生が終わると死も終わっちゃうんだよね」とか、「人生は子供の下着だ。短くって汚ねぇ!」とか。「人間の一番素晴らしい能力は想像力だよ。そして想像力より高く飛べる鳥はいないんだよ」・・・この言葉は、いまだに僕の中で生き続けています。

 僕の中でとても大きな存在だった寺山さん。「芝居なんて嫌いだ」と思っていた僕が、寺山さんと接点を持ち、彼に誘われる形で芝居の世界に入っていきました。僕らは寺山さんと一緒に「天井桟敷」という演劇集団を作り、その第1回目の公演『青森県のせむし男』では、僕がせむし男を演じることになりました。

TVアニメ、外画吹替えの仕事もスタート!!

masuoka1-2 よく「いつ頃から声優の仕事をするようになったんですか?」という質問をされるんですけど、そう聞かれると「うーん・・?」と頭をひねっちゃう。いつだったか、ほとんど分からないんですよ。もっとも当時は“声優”って言い方はしていなかった。あれは、後からマスコミが作った言葉なんじゃないかな? 今でも「声の仕事は、あくまで俳優の仕事の中のひとつ」だと思っています。

 とはいえ、TVアニメに出演したのは、『狼少年ケン』(1963~65年)が最初でした。同じ頃に、洋画や海外ドラマの吹替えの現場にも呼ばれました。「最近アテレコって仕事があるんだよ。レシーバーから(オリジナルの)俳優の声が聞こえてくるから、そのタイミングでセリフをしゃべればいいんだ」なんて言われて現場に行ったんだけど、セリフを聞く方としゃべる方とどっちに集中していいのか分からなくなってね(苦笑)。しかも昔はフィルムを使っていて、一つのロールが20~30分あるので、1回トチっちゃうと最初から全部やり直しになるんです。これはプレッシャーでしたね・・。生放送を経験していらっしゃる先輩方は、天才的に上手くてね。のらりくらりとかわして、まずトチらない。こっちは緊張してすぐトチっちゃうんです。「拳銃を捨てて出てこい!!」ってセリフを、「拳銃をステテコ出てこい!!」って言っちゃったりして。するとディレクターがこう返すんです。「増岡ちゃん、外国の映画にステテコは出てこないよ」って(笑)。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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