声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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朴璐美の声優道

まっすぐな少年役から大人の雰囲気をたたえた女性まで、さまざまなキャラクターを演じている朴さん。声の演技だけでなく舞台女優としても活躍し、さらにラジオのパーソナリティとしてまた違った一面を見せてくれる。そんな幅広い活躍を見せる朴さんが今のような演技力を身につけるまでには、こんな紆余曲折があった!? 朴さんの演技に対する真摯な思いが、全3回のトークからひしひしと伝わってくる。

プロフィール

朴璐美 ぱくろみ……1月22日生まれ。円企画所属。おもな出演作は『トリコ』(小松)、『進撃の巨人』(ハンジ・ゾエ)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(エドワード・エルリック)、『BLEACH』(日番谷冬獅郎)、『NANA』(大崎ナナ)、『シャーマンキング』(道蓮)、『∀ガンダム』(ロラン・セアック)、洋画でヒラリー・スワンク、ルーシー・リューの吹き替えほか、舞台にも多数出演。2013年よりボイススクール「studio Camblia」を主宰。

①一生を賭して演劇をやっていくなんて考えもしなかった

軽い気持ちで演劇部に入ったら、たちまち演劇のとりこに……

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実は、役者になろうと思ったきっかけって、これといってないんです。高校のときに演劇部に入ったのも、先輩から誘われたというだけの、ほんの軽い気持ちでした。ところが入ってみたら、たちまち誘った先輩よりも夢中になっちゃって、演劇漬けの3年間を送ることになりました。でも自分が演じることに興味があったわけではなくて、みんなでひとつのものを作っていく感覚が好きだったんです。照明の色を組み合わせたりして、イメージしたものを具現化できるというのも魅力的でした。当時はどちらかというと、演出に興味があったんですね。

今でも忘れられないのは、高校3年のときに出場した全国高等学校演劇大会の地区大会です。女子高だったので、ミヒャエル・エンデの『モモ』の登場人物を全員女性に改稿して演じたんですが、なんと本番で私たちが演じている最中に停電になってしまったんです。もちろん上演は中止。私は灰色の女役でちょうど舞台に立っていたときに真っ暗になったので、「これだけ稽古してきたのに、もう演じられないのか」とものすごくショックを受けてしまったんです。私以外の部員もみんな、号泣したりパニックを起こしたりとおかしなテンションになっていました。しばらくして電源が復旧。もう一度最初から演じられることになったときには、テンションが上がりすぎたのか逆に冷静になってしまい、自分が灰色の女にしか見えなくなっていたんです。一体感というか、今まで感じたことのないすごく変な感覚でしたが、それを味わってしまったらもう演劇のとりこになっていました。

 その後、進路を決める時期になりましたが、中学高校と女子校だったのでエスカレーター式の女子大に進学したくなかったんです。もう女子だけの環境はイヤ!と思って……(笑)。でも両親は大学進学希望だったので、国語1教科と実技の試験しかなかった桐朋学園芸術短期大学の演劇科に進学しました。ところが共学に進学して念願の彼氏もできたら、高校時代に感じた演劇の情熱なんて忘れてしまって、「このまま彼氏と仲良くやっていければいいじゃない」と思うようになってしまったんです。一生を賭して演劇をやっていくなんて、考えもしませんでした。

 そんな私に再度の転機が訪れたのは、短大卒業後のこと。中学のころから、一度は父の国である韓国で生活してみたいという思いがあり、短大卒業と同時にせっかくできた彼氏を置いて韓国に語学留学したんです。実際に生活して肌で感じた韓国の現実は、思い描いていたものとは違っていました。そして「ここは母国ではなく、祖国だった」という想いを胸に愛しい彼の元へ戻ってきたところ、ラブラブだったはずの彼氏が私の友達とデキちゃってたんです(笑)。あり得ない状況に愕然として、ショックのあまり引きこもりのような状態に。もう自分の人生は終わったと思いましたね(笑)。

 失意の日々を過ごしているとき、ある人から「そんなおまえにぴったりの場所がある。そのドロドロした思いを全部吐き出せる場所だ」と紹介され、オーディションを受けに行ったのが『演劇集団円』。そこで演出家の福沢富夫先生に出会い、「この人にならすべてを見せられる」と思って円の演劇研究所に入りました。

 

初めてのアフレコ現場は舞台以上に舞台だった

 私が入ったときの研究所には「魔の3日間演習」と呼ばれる行事があったんです。3日間、朝から晩まで時計もない真っ暗な部屋の中で、自分の想いを叫び続けなくちゃならないというもの。最初は「もしかして危ない集団に入っちゃった?」と思ったんですが、私たちを見守る福沢先生の目は真剣そのもの。すると、こちらも真剣にやらなくちゃと思いますよね。それで叫び続けていたら、演習が終わったときには「もっと先生に私を見てほしい。受け止めてほしい」という気持ちになっていました。それから1年ほどがんばってみたら、いろいろと痛くて苦しくて哀しくてどうしようもなかった気持ちが、想いを吐き出すことでどんどん浄化されていったんです。やっと人間に戻れたかなという感覚ですね(笑)。ただ吐き出すだけではなく、それを表現に変えたいという欲求にもつながっていきました。演劇集団円の会員になったのも、そういう自然な流れからです。

 それでもまだ、自分が役者として生きていくことに疑問符だらけでした。まず、演技でお金をもらうということがピンとこなかったんです。私にとってお金をもらえるのはアルバイトであって、演じるときにはお金のことなんていっさい考えていませんでした。でもちょっとドラマや舞台やPVに出演したくらいで、結構な金額が手に入ることもある世界なんです。その反面、純粋な気持ちで演技に打ち込んでいるのに、そうじゃないものが勝っていくような大人の事情が見えてしまうこともあって……。私にとってお芝居はすごく神聖なものなのに、それがどんどん汚されていってしまう、そんな場所にはいたくないという思いが徐々に強くなっていきました。まだ20代でしたから、正義感も強かったのだと思いますけど(笑)。

paku05 そんなタイミングで、事務所のマネージャーから仕事の電話がありました。「実はお芝居を辞めようと思っている」と打ち明けたら、マネージャーは「この仕事は絶対に受からないと思う。最後にやるだけやって華々しく散れば?」と。それで受けたのが『ブレンパワード』の声のオーディションです。自分では「今日で終わりだ、二度とこの人達と会うこともないだろう」と思っていたので、最後の現場が楽しくて楽しくて、怖い物なしでノビノビと自分を解放してしまいました。でもそれが良かったのか、受かっちゃったんですよ。こんなことってあるのかなと不思議だったんですけど、もしかして神様が「まだ辞めずに頑張れ」といっているのかなと思いました。

 『ブレンパワード』は、すごく面白くて楽しい現場でした。お芝居を仕事にするということに幻滅することも多かったんです。でもこの収録現場では、それぞれの役者さんが自分のポジションをきっちり理解して、役を担って次の人へとパトンタッチしていく。その姿を見て「舞台以上に舞台だな」と感じました。もう収録の日が来るのが楽しみで、こんな素晴らしい世界があったのかと心が震えましたね。それまで声の仕事があるということはなんとなく知ってはいても、私にとってアニメの声は、キャラクターそのものから出てくるものだったんです。だから、一瞬ごとに役者のみなさんがキャラクターに命を吹き込んでいく様を目の当たりにしたときは、「これぞ演劇だ」と感動したんです。

 マイク前でのお仕事は『ブレンパワード』が初めてだったので、本当に右も左も解らない状態でした。そんな私に、共演者のみなさんは手取り足取り教えてくださったんです。「この仕事をもう少し続けてみたい」と思うようになったとき、『∀ガンダム』のオーディションのお話が。私はヒロイン役を受けに行ったはずなんですが、どういうわけか主人公のロランのセリフも読まされたんです。『ブレンパワード』で冬馬由美さんが少年を演じているのを見て「こんなこともできるんだ」と驚いていたくらいですし、少年を演じたのはそのオーディションが初めての経験でした。ところが収録が始まる1週間くらい前になって、「ロラン役に決まった」という連絡をいただいてしまったんです。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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