声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


paku07

朴璐美の声優道

まっすぐな少年役から大人の雰囲気をたたえた女性まで、さまざまなキャラクターを演じている朴さん。声の演技だけでなく舞台女優としても活躍し、さらにラジオのパーソナリティとしてまた違った一面を見せてくれる。そんな幅広い活躍を見せる朴さんが今のような演技力を身につけるまでには、こんな紆余曲折があった!? 朴さんの演技に対する真摯な思いが、全3回のトークからひしひしと伝わってくる。

プロフィール

朴璐美 ぱくろみ……1月22日生まれ。円企画所属。おもな出演作は『トリコ』(小松)、『進撃の巨人』(ハンジ・ゾエ)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(エドワード・エルリック)、『BLEACH』(日番谷冬獅郎)、『NANA』(大崎ナナ)、『シャーマンキング』(道蓮)、『∀ガンダム』(ロラン・セアック)、洋画でヒラリー・スワンク、ルーシー・リューの吹き替えほか、舞台にも多数出演。2013年よりボイススクール「studio Camblia」を主宰。

②作品を通してさまざまな人と知り合った

少年というフィルターを通して演じること

paku03-n

 『ブレンパワード』のときには毎週現場に行くのが楽しかったんですが、『∀ガンダム』の現場では戸惑いのようなものがありました。多分それは、初めての少年役ということが大きかったのではないでしょうか。私にとってお芝居とは真実を映し出すもののはずだったのに、自分とは性別からして違う「少年」というフィルターをかけて演じなければならない。その状況で、私は本当にウソをつくことなく演じられているんだろうか。それがとても怖くて、つらかったんだと思います。また、普段は出さないような叫び声をあげなければいけないシーンも多く、声帯が疲労してセリフの途中で声が裏返ってしまったこともあり、自分の不甲斐なさにも落ち込む毎日でした。

 私の思い描いていた世界とのズレが次第に大きくなっていくような気がして、『ブレンパワード』のキャストの方々を誘って飲み会を開いたこともあります。その席で「今の現場は全然楽しくない。苦しいんだ!」と泣き言をいったところ、みなさんから「おまえは甘い!」と怒られました。多分、今の私でも同じように「甘い!」というでしょうね(笑)。

 そんなつらさとふがいなさで落ち込んでいたときに、監督の富野由悠季さんが声を掛けてくださったんです。「朴璐美がしゃべれば、それがどんな声であろうとロランなんだ」 その一言で救われました。富野監督は人の心をすごく見透かす方なので、私の葛藤も見抜いていたんでしょう。今から思い返すと、こんな素晴らしい監督の作品でデビューさせていただけたこと、少年役を演じさせていただけたこと、本当に貴重な経験だったと思います。

 それから声優という仕事にのめり込んでいったのですが、もちろんすぐに上手くなるわけありません。次にいただいた『シャーマンキング』のお仕事でも、怒られに怒られて毎週泣かされました(笑)。振り返ってみると、当時は自分のことだけで手一杯で、まったく先が見えていなかったのだと思います。そんな私を導いてくれたのが、林原めぐみさんと高山みなみさん。『シャーマンキング』の現場でご一緒するたびに、迷いがどんどん晴れて、私が今しなければならないことがはっきりと見えてきた気がするんです。おかげで胸を張って「私は声優です!」といえるようになりました。私のプロ声優人生は『シャーマンキング』から始まったといっても過言ではありません。膨大なエネルギーを使って、私にそういう意識をもたらしてくれた林原さんと高山さんは、私にとってはお母さんとお父さんのような存在です。それまではひとつの仕事が終わるたびに、「もうこれで最後なんだ」「キャストのみなさんと、もうお会いすることもないんだ」と思っていたんです。でも『シャーマンキング』の現場が終わったときには、「もっとこの仕事を続けたい。作品創りにおいて私に担えるものがあるなら、全力で支えていきたい」と思うようになりました。

 林原さんと高山さんには、未だに頭が上がりません。じつは今でも「ケガをしてギプスをしているときにヒールの靴を履くなんて」みたいに怒られることがあります(笑)。でもそうやって怒ってもらえるのがすごくうれしいんですよ。

 

感覚を引き出してくれる音響監督との出会い

  これまでさまざまな作品で少年役を演じさせていただきましたが、少年役であっても大人の女性の役であっても、私のなかでは役に対するスタンスは変わらないんです。演じるからにはとにかく役と一緒になりたい、自分のすべて出し切りたいと思っています。もし違いがあるとしたら、少年役は心が隠せないこと。大人は本心を隠すというか、あまりストレートに感情を出すことはありませんが、少年は気持ちや思いがもっと前面に出てくる気がするんです。『∀ガンダム』のロランで初めて少年役を演じて、『デジモンアドベンチャー02』の一乗寺賢、『シャーマンキング』の道蓮、『ドラゴンドライブ』の大空レイジと、さまざまなタイプの少年を演じさせてもらったことによって、ようやく『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックが演じられたのかなと思ってます。

 これまでの声優人生を振り返ると、さまざまなキャラクターとの出会いと同時に、さまざまな人との出会いがありました。デビュー作の『ブレンパワード』のときは、右も左もわからなかった私に、スタッフさんやキャストのみなさんが手取り足取り一から教えてくださったんです。

paku01-n

 私は、演技に関してはわりとねばる性格なので、自分が納得できるまで何度でも演じたくなっちゃうんです。それで現場でも、よく「もう1回演っていいですか?」とお願いしていました。監督や音響監督がOKを出したものに役者側からNGを出すって、本来ならしてはいけないことなんです。でも『ブレンパワードの音響監督だった浦上靖夫さんは、なにもいわずに私が納得いくまで演じさせてくださいました。あるとき、共演の方が「じつはあまりしてはいけないことなんだよ」とさりげなく教えてくださったので、その後で納得いかない演技になってしまったとき、「ベストの演技ができなかった自分が悪いんだ。仕方ないんだ」と思って黙っていたんです。すると浦上さんのほうから「納得がいってないんでしょ。もう1回演る?」って声をかけてくださって……。それからもたびたび「ここが気になっているんでしょ?」と声をかけられることがあって、すっかり見透かされてました(笑)。浦上さんには、私のさまざまな感覚を引き出してもらいました。私も演じていてすごく楽しかったし、感謝してもしきれません。

 音響監督さんでは、三間雅文さんとの出会いも大きいですね。三間さんは仕事に関してはすごく厳しい方なんですが、ダメ出しも腹が立つほど的確なんです。三間さんとのエピソードで一番印象に残っているのは『鋼の錬金術師』。お母さんが死んでしまうシーンで、エドが「え?」っていうんですが、その「え?」だけで20テイク以上演らされました。私は普通に「え?」という感じで演じていたんですが、三間さんからは「違う。子供なんだから、もっと状況を理解できない感じに演って」といわれてしまう。でも私としては、シーンの流れからしてそういうチョイスができなかったんです。おかげで『鋼の錬金術師』では、居残りも何度もありましたね。三間さんとのお仕事は、本当にしんどいです(笑)。でも、私もねばるけど三間さんもねばるので、いいバランスなのかもしれません。そんな三間さんですが、最近は私が「納得できなかったので、もう一回演りたい」といっても、「もう録れたから。もういらない!」って却下してくるんです。私の演技力が上がったということなのかもしれませんが、ちょっと淋しいですね(笑)。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

ページの先頭へ戻る