9月に発売され、女子高生コスプレも相まって大きな話題を呼んでいる“永遠の17才”声優・井上喜久子さんの自叙伝『井上喜久子17才です「おいおい!」』。書籍発売記念イベントとなる特典ブロマイドサイン会が、11月から12月にかけて、三省堂書店アトレ秋葉原1、芳林堂書店高田馬場店、ソフマップAKIBAアミューズメント館の3店舗にて開催されました。ここでは11月12日に芳林堂書店高田馬場店で開催された模様と、さらに本の反響を受けたアフターインタビューをお届けします。
【『井上喜久子17才です「おいおい!」』発売記念 イベント限定特典ブロマイドサイン会レポート】
笑顔でサインブロマイドを手渡し
花柄のワンピースにピンクのカーディガンといういでたちで現れた井上さん。大きな拍手を浴びてニッコリお辞儀をすると、「いつものアレをやりたいと思います」と切り出しました。
「こんばんは~! 井上喜久子、17才です。おいおい。ハイハイ」
ご時世で声出しはNGということで、「おいおい」もセルフツッコミでしたが、「サイレントの“おいおい”、ちゃんと届いています」と楽しげ。
トークでは自叙伝について、「ありったけの想いを込めて作らせていただきました。出来上がってうれしい気持ちでいっぱい」と語り、久々のイベントに集まったファンの皆さんに「元気で過ごしていますか?」と問い掛けたりも。
イベント前には少し時間があり、「久しぶりにタピってきました」とのこと。
「タピオカブームは去ったと言われますけど、おいしくて“今日も頑張るぞ”と会場に入りました。みんなにこの元気を分けてあげたい。みんなも好きなものを食べて、寒い冬を健康に過ごしてくださいね」
優しく気遣いを見せた後、一人ひとりにブロマイドに名前とサインを書き入れて、手渡ししていきます。
「いつもありがとうね」などと話しながら、終始笑顔で、時折り笑い声も出たり。井上さんにもファンの皆さんにも、穏やかで心温まるひとときになったようです。
【『井上喜久子17才です「おいおい!」』発売記念インタビュー】
何十年も応援してもらって親戚のようです
――対面イベントは久しぶりですか?
至近距離でお客様に会うのは、もう何年ぶりだろう? コロナ禍からはまったくなくて、多分3〜4年ぶりで、すごく緊張したのと同時にうれしかったです。
――それだけ空いても、「いつもありがとう」という言葉が出ていました。
もう20年、30年と応援してくれている方がいらっしゃるので。17才なのに、おかしいですけど(笑)。だから、何年か空いても「久しぶり」という感じで、親戚のような気持ちです。
――イベントの雰囲気も昔と変わりませんでした?
変わらないですね。みんなの元気な顔を見られたのがうれしくて。もちろん初めましての方もそうですけど、こうやってイベントに足を運んでくださるということは、体調も良いのかなと。お互い、もう具合が悪いと、家から出られませんからね(笑)。
若い子にも17才と認知してもらえました
――本の反響はいろいろありますか?
本を出してから、なんだか運気が上がったような気がしているんです。「井上喜久子17才です」「おいおい」の掛け合いは何十年も前からやっていますけど、ここ数年は「若い子は知らないだろうな」と思っていました。でも、この本を出してから、たくさん取り上げていただいて、タイトルも『井上喜久子17才~』とジャストそのままだったので(笑)、改めてすごく認知されたなと思います。若い子にも「17才なんですよね?」と言ってもらえました♪ あと、本の中でアンケートに答えてくれた水樹奈々ちゃんも取り上げてくれて。
――水樹さんのラジオにゲスト出演されました。
そうなんです。奈々ちゃんはものすごく本を読み込んでくれて、こっちがビックリするくらい情熱的に「何もかも面白かった」と言ってくれました。あと、対談をした堀江由衣ちゃんも、私の出てないラジオの中で私のことをたくさん語ってくれて。
――「若い気持ちには無限の可能性がある」という言葉が印象的でした。
ありがとうございます。本にも書きましたが、17才と言っていても、年齢を重ねる現実に目を背けたいわけではなくて。いつまでたっても未完成という心で、若い気持ちがあるかぎり、まだまだ成長できるし、きっとずっと笑顔でいられると信じているんです。
――本の中で「令和の17才教は男性でも入れるようにしたい」とありましたが、その後「入りたい」という男性はいましたか?
えーと……まだ、特にいません(笑)。門戸を開けたのに、誰も入ってくれないという。ちょっと切ない感じもしますけど(笑)、いえ、いいんです! みんな、入りたいときに入れますから! 前は「甘酸っぱい感じでやりたいから、女子しか入れないんだ」と言ってきましたが、これからは、心に17才があれば、男性でも、いくつになっても、ウェルカムです(笑)。
昔やらかした懐かしいことを覚えていてくれて
――「私たちが見たきっこさん」という声優さんアンケートでは、特に印象に残った回答はありますか?
全員に感謝でいっぱいですけど、やっぱり久川綾ちゃんとは付き合いが長くて。本の中でも書いたとおり、お誕生日が私が9月、綾ちゃんが11月で、10月に「おめでとう私たち」というお祝いを何年も続けているんですね。この前の10月もやって、お礼を言いました。私が昔やらかしたことを、面白おかしく書いてくれたので(笑)。
――留守電に「私は誰でしょう~」とクイズみたいなメッセージを残した話ですね。
留守電がまだ珍しかった時代で、吹き込むのが楽しくなっちゃたんでしょうね(笑)。そんな懐かしいことを綾ちゃんは覚えていてくれました。
――日髙のり子さんからは、井上さんに「いっぱい守ってもらったから今度は私が守ってあげる」と言われたというエピソードが寄せられていました。
のんこさんとも『らんま1/2』から何十年のつき合いで、いろいろありましたからね。でも、その話はちょっと覚えてなくて(笑)。そんなことを私が言っていたのかとビックリしました。『サクラ大戦』の舞台では大変なことも多くて、泣いちゃったようなときも励まし合いながら成長できました。99%は私が励まされていたんですけど(笑)。
女子高生コスプレの撮影はちょっと人目を気にしました(笑)
――本の中でコスプレを披露していたのは、久しぶりというわけでもないですよね?
コスプレはずーっと好きでやってきましたけど、実は自分の中で、波があって。ワーイって楽しんでいる時期と、いい加減やめたほうがいいかも……とうつむき加減で、でもやっちゃう時期があるんです。まあ、どっちにしろやるんですけどね(笑)。この本がきっかけで、また「わーっ、楽しい!」となってきました(笑)。
――先行カットが話題になった、女子高生コスプレも違和感なく?
どうでしょうね(笑)。コロナ禍でも着たりしていたので、たいして久しぶりでもなかっ
――外で撮ったカットもありましたが、人目は気になりませんでした?
ちょっと気にしました(笑)。最初は室内だけで撮る予定でしたけど、「お天気いいですね。外でも撮っちゃいます?」なんて言って、バババと行って帰ってきました。制服で撮っていたら、遠くから男子高校生二人がうれしそうに近づいて来たんですね。きっとアイドルか誰かの撮影だと思ったんでしょうけど、私の顔を見てギョッとして通り過ぎていきました(笑)。期待していたのにごめんねと、謝りたいです(笑)。
――ラウンドガールや政治家は初めてでした?
そうですね。メイド服は何度も着ているので入れて、やったことがないものもいろいろ考えて、ラウンドガールはマネージャーさんの案でした。「17のプラカードを持つのはどうでしょう?」と。17ラウンドだと「どれだけ戦っているんだ?」という話ですけど(笑)、一見“K-1”に見えて私の頭文字の“K-I”でいけるというのは、自分で気づきました。
想いをすべて込めた本だから人生の宝物に
――ヴィジュアル面でもイメージどおりの本になったわけですか?
本当にイメージどおりで、悔いがありません。これでもかというくらい自分の想いを注いで、それを形にしていただいた1冊で、私の人生の新たな宝物になりました。それくらい、私のすべてが込められています。
――自叙伝ということで、忘れていた記憶を思い出したりも?
10代の頃のこととか、いっぱい思い出しましたね。それを文字にできたのが、すごくうれしいです。あと、このタイミングで出せたことが良かったと思っています。10年前だったら、こんなに楽しい気持ちで作れなかったかもしれません。それは特に理由があるわけではないですけど、今はなんだか解放されているというか……。娘も大きくなっていて、子育てで大変というのもないですし、「こんなこと言ってもいいのかな?」と悩んだりもせず、自由に本にしていただけました。
仕事仲間に「声優のバイブル」と言ってもらえて
――出演作についてもたくさん触れられていた中で、『おねがい☆ティーチャー』の舞台になった木崎湖には発売後も行かれたそうですね。
たまたまなんです。木崎湖は本当にいいところだから、チャンスがあったら行きたいと思っていて。行ったら、聖地のキャンプ場の管理人さんが本を買ってくれていて、みずほ先生のことも書いていたのを喜んでくれました。今年は放送から20周年ですが、またいつかイベントなどできたらうれしいですね。
――たくさんの作品が出てきたなかでも、『有頂天家族』に関しては「作品に対する愛が、我ながら深すぎる」ということですが、そこまで思い入れがあったとは意外でした。
どの作品にもそれぞれ良さがありますけど、『有頂天家族』は私にとって、かなりツボなんです。この前もプライベートで京都に行って、『有頂天家族』と『平家物語』の聖地をダブルで巡ってきました。自分が生まれた場所のほかに、作品でのふるさとのようなところが日本の各地にあるのは、幸せなことだと思います。
――外画やナレーションの話はレアでした。
語る機会があまりないですからね。そのことも含め、奈々ちゃんやほっちゃん、佐藤聡美ちゃんとかお仕事仲間たちが「声優のバイブル的なところもありますね」と言ってくれて、と
みんなに笑顔になってもらうのが人生のテーマ
――さらに、華道や『文芸あねもねR』など、プライベートや自主活動にも触れられていました。
プライベートのことも入れられて良かったです! 『文芸あねもねR』は私が取り組んでいるチャリティ活動で、発信していくのがなかなか難しくて。何も恥ずかしいことはしてないのに、何か言い辛いのは、日本人特有のものなんですかね。でも、本の中で一度しっかり書かかせていただけたことが、とてもありがたかったです。
――本にすることで、あらためて、ご自身の声優人生について思ったこともありましたか?
とにかく周りの人や環境に恵まれているなと思います。だからこそ、どうやって恩返しをしていくか。みんなに少しでも笑顔になってほしい想いが、さらに強くなりました。それが私の人生のメインテーマです。
――来年はデビュー35周年です。
まだ何も決めていませんけど、ありがたいことにお仕事もいろいろ待っているので。またみんなと楽しい時間を過ごせたらいいなと思います。
取材・文/斉藤貴志