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声に自信がある人求む!声優界のレジェンド・若本規夫が「若本塾」を開校&生徒募集中

若本規夫_若本塾

教えることは「声を鍛える」ことだけ。メソッドはとてもシンプルなんだ――。

声優活動50周年を迎えた今も、さまざまな現場に引っ張りだこの若本規夫さん。そんなザ・レジェンド声優がなんと、声優・ナレーターの若手育成のために「若本塾」を立ち上げた! 若本規夫が育てたい声優とは? 5月の新規開講に向けてプレオープン中という「若本塾」のレッスンに込めた思いや、究極のメソッドの秘訣を聞いた。

どんな要求にも応えられる声

Q 『若本塾』で教えていることを一言で表すならば?

どんな要求にも応えられる声を作ること。その声を我がものとする。それができれば、クライアントのどんなリクエストにも応えられるわけだよね。もっと素晴らしいのは、要求を突き抜けて、最初から「これ」というもの……ベストorオンリーのパフォーマンスを表現できるようになることだと思う。

 

Q そのためには、何が必要だと思いますか?

まずは、身体。バランスのとれたフォルムになっていなきゃいけない。身体ができていないと、上半身だけで声を出すことになる。気持ちが上に上がりすぎないように、身体全体をバランスよく使えるようにする。

 

Q つまり若本塾では、声優としてあらゆる声を表現できるための身体作りを学べるということですか?

声を出すために、使い勝手の良い身体を手に入れたい。オペラ歌手は生声だから、2000人くらいいる劇場で声を通さなければならない。でも、声優にはマイクがある。だからそこまで声量はいらないと思われがちなんだけど、やっぱり声優も豊かな声量は必要なんだ。限られた中でいろいろなニュアンスや、味わいを表現するためには、ある一定の靭(つよ)い身体を養成していかないとね。

 

Q そもそも『若本塾』を立ち上げた理由は?

ぼちぼち本物を育てなきゃいけないと思ったから。声優界全体で言えることだけど、人材が枯渇していると感じる。だから僕の目が黒いうちに、伝えられることを伝えておきたいと思ったんだ。

 

若本塾は、半年間、月に1回、3時間講座ですよね。こういった短期集中型というのはどういう意味があるのでしょうか?

声優の鍛錬は、何年もかけて声優学校に毎日通って習得しなければいけないものではない。誰かに手取り足取り教えてもらうんじゃなくて、自分で探究鍛錬するもの。だから、教えることは「声を鍛える」ことだけ。その人自身がトーンを決めるのであって、先生がトーンを決める必要はない。

 

Q そのトーンを決めることも声優の仕事ということですね。

声優は何をしなければいけないかっていうと、声オンリーであらゆる要求を満たせるようになればいいだけ。どんどん鍛え上げて、その声の力で、どんなシチュエーションでも自然に表現として成り立ってくれば、どんなバリエーションでもその人が好きなようにしゃべれるわけだよ。

 

Q 「こうやったらいい」という、例や正解を先に教えると、言われたことばかりに意識がいって、自分で考えられなくなる。根幹を教えてもらえるから、自分なりの表現もできるし、それが個性につながるということですね。

そう、それがオリジナルということ。教えるとき「それ、違うんじゃない」「こうやってやるんだよ」というように見本をやってしまうと、生徒はそれに寄ってしまう。それが、いちばん良くない。そのセリフはその人のものじゃなくて、その先生のものになってしまうんだ。

 

Q 表現は個人に任せるけど、表現のもっと前の「源」を教えるということですか?

要するに、表現の源流をしっかりと作り上げる。それが何かっていうと、声優にとっては声しかないじゃない。だから、その声はそのシチュエーションに合っていれば、なんでもいいんだよね。僕がメソッドだけを教える。それをうちに持ち帰って、自分で毎日鍛錬する。それだけ……。

 

Q プレオープン中のレッスンを見学させていただきました。若本さんは鍛錬の方なので厳しい雰囲気なのかと思ったのですが、実際はすごく優しいと感じました。どうしてそんなに優しいのですか?

それは歳をとったから(笑)。 オリジナルなものを引き出すためには、ガンガン言いすぎると、その人の本体が奥に引っ込んでしまう。それがいちばん良くない。

 

Q グループレッスンだけど、個別指導のように懇切丁寧だなと思いました。けれども、教えすぎず、きっかけを与えているという感じがします。

個を見たいから、生徒の人数を少人数に限らせてもらっている。現場でも、要求する側がリクエストを詳しく言わないのは、声優を型に押し込めちゃうことになるからなんだよね。だからまず、「やってください」と言われて、どれだけのモノを出していけるか、ここが最初のハードルなんだよね。

 

Q 授業では、人体模型のようなものを使って、体の構造や生態を学んでいましたね。

みんなの体の中にこういう骨格構造があってこうなっているんだよっていう話から始める。だけど、そうしたことは現場に行ったら考えない。鍛錬している時はそれを意識するけど、現場ではそれは忘れること。身体の中に声の回路ができてくれば、自然と出てくるようになるから。

 

Q レッスンの中には、歌もありましたよね。歌唱することで、どういう効果があるのでしょうか?

歌のいいところは情感を入れられるところ。歌詞を歌うんじゃなくて、自分の感情を「ウォウウォウ」というように母音で入れる。そうすると声だけに集中できる。情感が身体全体から出るようになってくるんだね。そういう鍛錬をしていると、マイクの前で物怖じしなくなるし、自由自在なパフォーマンスができるんだ。

 

Q 授業では、いっさいセリフ読みがないですよね。

言葉を使わないから、生徒さんからはびっくりされるね。歌唱レッスンでも歌詞を歌わないから、感情を交換しあっている感覚になると言われた。感情をこうやって人に伝えていくんだ、というのを体感できる。それが自然と仕事の場で出るんだよね。

 

Q 授業で、表声と裏声の練習もされていましたが、あれはどういう意味があるんですか?

表声というのは、声帯が完全に両方にピタッとくっついて出る声。裏声っていうのは、少し隙間があるんだよね。そこへ空気がスパッと通るから、表声と裏声を同時にやると呼吸と声の通りが良くなる。表声と裏声を鍛えることによって、声帯が覚えていくんだよ。表声だけだと通らないんだよね。

 

Q 体に染み込ませることで、自然と声が出るようになっていくんですね。

そう。声帯が覚えるんだよ。声帯に命令して声を出すんじゃなくて、声帯から勝手に出ていく感じかな……。声も楽だし、マイクにも乗るから声も続く。マイクに乗るから、自分も気持ちが良い。気持ちが良いから、さらに良い声も出るしいいセリフも出るわけだ。

Q 若本塾のメソッドはどこからきているんですか?

僕は40代で、いわば一つの危機があってね。そこで一念発起して修業を始めて、今まで30年くらい、いろんなところに教えを請うてきたんだ。たとえば「古神道」とか、「祝詞」とか。呼吸法も歌唱法も習った。鍛錬しながら、自分の声をどう創っていくか、いろんなメソッドを吸収して、整理して、分解して、必要なエキスだけにして集約させたんだ。

 

Q その数々の鍛錬については、著書『若本規夫のすべらない話』にも書かれていますよね。

だから、生徒さんには授業に入る前に1冊ずつ買ってもらっている。そこに、どんなことをやってきたか全部書いてあるから。ちなみにあの本を読んで、たくさん感想の手紙が来たよ。各章が短くてわかりやすいから「一気読みしました」という感想が多くて。それが何よりも褒め言葉。

若本規夫のすべらない話

Q 募集要項に「声に自信がある方」と書かれていますが、どういう人に来てもらいたいですか?

それはやっぱり、声に自信がある人(笑)。その自信と、人が聴いたときの声がビシャーっと結びついていけばいいね。未経験でも大丈夫という意味で、幅広い表現を使ったんだ。オリジナルを探すためにね。

 

Q 生徒さんにも感想を聞いたら「継続することで自分の成長がわかる」という声がありました。実際、半年間教えた生徒さんたちの変化はどうですか?

確実に変化があるよ。成長している。それを一人一人、言葉でも伝えている。たとえば「息のあがりが少なくなって、音程が落ち着いてきた。声もグーンと伸びるようになっているし、太く深くなってきている。このまま精進して、今持っている天然のキャラクターを生かしたしゃべりを磨いてほしい」とか、「か細い声筋が徐々に束になってきている。一見地味だが、よく聞いてみると中心を貫いた一本のピアノ線のような声に聞こえてくる。精進して図太いキャラクター、多彩なバリエーションをこなせるべく、母音歌唱レッスンで大胆な歌い方にも挑戦してほしい」とかね。メッセージを書いて渡しているんだ。

 

Q 生徒さんの声を聞くだけでどういう練習をしてきたかとか、どの程度までわかるのですか?

全然練習をしてきてないなというのは、はっきりわかる。正しい方法で正しくやってきたら必ず結果が出るからね。でも間違ったことを何十年やっても結果は出ない。だから、何をやるかっていうのが非常に重要なんだよね。

 

Q 才能はあっても、才能だけに甘んじないで、高い意識で鍛錬することが必要ですね。

高い意識と、正しい訓練とは何かということを常に模索して、正しいやり方を身につけて何度も繰り返し探求していく。自分を見つめながらこの方法よりもこっちのほうがいいかなって更新しながら自分流のメソッドを確立していくということが大事だよね。

 

Q 最後に、来てもらう生徒さんに期待していることは何かありますか?

こういう世界を目指すんだったら、食えるようにならなきゃいけない。それだけじゃなくて、ずば抜けていってほしい。そこらの水辺で遊んでるんじゃなくて、大海の中まで入っていって、先に泳いでいるやつを出し抜いてくれ!と言いたい。すっと中心が通った声優になってほしい。本物の教育を受けたい人はぜひ、応募してください。

<受講生の声>

開校前のプレオープン中の「若本塾」で今指導を受けているのは、同じ事務所の若手声優たち。生徒の皆さんに、レッスンの魅力を聞いた。

生徒の声①「意識が変わった」

目の前で若本さんに実際にやってみせてもらえるので、すごくわかりやすいです。姿勢一つとっても意識がすごく変わりました。たとえば、下半身を意識してしゃべるなんてことは知らなかった。これまで、「カッコいい声を出せばいい」と思っているところがあったんですが、そうじゃないんだなと。若本さんに教わっていなかったら、多分一生、今までの発声のやり方で、カッコいい声ばかり出している声優になっていたと思います。

 

生徒の声②「力を引き出してもらえる」

授業内容は斬新で面白いです。たとえば歌唱にしても、歌詞を歌わないので、言葉がないぶん感情を感じて、交換しあっている感覚になる。こういうふうにアウトプットするんだ、声だけじゃなくて感情を、こうやって人に伝えていくんだなって、驚きばかり。若本さんのパワーで、僕たちの力を引き出していただいているなと感じています。

 

生徒の声③「現場で満足してもらえた」

昨日の現場でスタッフさんに「自分たちが想像していたよりももっといいものを出してくれたからうれしかったです。ありがとうございます」と言っていただいたんです。これまで「きれいな声ですね」「滑舌がいいですね」のように言っていただいたことはあるんですけど。「こんな表現の仕方があったなんて思いませんでした」という言葉が、すごくうれしくて。すぐに若本さんに報告しました。

 

生徒の声④「自分の個性をぶつけられるように」

今まで、クライアントさんの顔色をうかがうというか、気に入ってもらおうとしていました。その人の好みに合わせて声を出すというか、今思えば小細工みたいなことをしてたんですけど、今は、まず自分の個性をぶつけてみることができるようになった。それで「こうしてほしいです」って言われた時にも対応できるようになったと思います。

 

生徒の声⑤「表現するための大切なこと」

今までは、「そうじゃない、これはこう読むんだ」とセリフの読み方について言われてきて、でも「みんな同じ読み方になってきたな」と言われて(笑)。若本さんのレッスンを受けて、自分が表現したいことを表現するためには、身体を鍛えていくことが大切なんだよということを教えていただいて。こういうレッスンは初めてでした。どこにでも、どんな現場でも活かせる大切なことを教えていただいているなと思います。

  

撮影/石田潤 取材・文/佐藤智子

【information】

若本塾2023年5月オープン!

募集期間 2023年4月15日まで

問合せ wakamotojuku@gmail.com

募集要項
①6カ月間、毎月1回土曜日3時間都内でのレッスンを受けられる方
②ナレーターまたは声優を真剣に目指している方
③18~35歳の方
④事務所に所属されていない方
⑤声に自信のある方
※レッスン料6カ月分15.000円

上記条件を満たす方、ナレーションボイスサンプル・セリフサンプル各2バージョン、フリートーク、履歴書をGigaFile便でアップロードして生成されたURLをwakamotojuku@gmail.com 「若本塾担当者宛て」に送付。定員8名、選抜された方のみ、ご連絡いたします。