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桜咲千依「“声優を辞めたくないけど、いつ辞めてもいい”そんな考え方が自分に合ってるみたいです」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

【声優図鑑】桜咲千依

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場するのは、『D.C.Ⅲ 〜ダ・カーポⅢ〜』の瑠川さら役、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の白坂小梅役、『ワガママハイスペック』の宮瀬未尋役などで活躍する桜咲千依さん。自分との向き合い方が変わった運命的な出会い、声優という仕事に対するスタンスなど、経験に裏打ちされた独自の視点を語ったトークは必見です!

桜咲千依
おうさきちよ●2月12日生まれ。フリー。
主な出演作は、アニメ『D.C. Ⅲ 〜ダ・カーポⅢ〜』(瑠川さら)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(白坂小梅)、『ワガママハイスペック』(宮瀬未尋)ほか

オフィシャルサイト:https://cat222.jp
Twitter:https://twitter.com/ousakichiyo

★桜咲さんの手書きプロフィール公開中!
https://ch.nicovideo.jp/seigura/blomaga

声優を始めた頃は「100%元気の押し売り」

――声優になるために東京アナウンス学院に通っていたそうですが、声優を目指すようになったきっかけは?
6歳くらいから児童劇団に入って舞台を中心にお仕事をしていたんですけど、ボイストレーニングの先生から「特徴ある声だし、声優を目指してみるのもいいんじゃない?」って言われて、「じゃあやってみる〜」と間に受けて……。子供だからよくわかってなかったんです(笑)。そして高校生の頃、アニメ好きの友達に誘われて声優さんのイベントに行ってから、声優という仕事に本格的に興味をもつようになりました。事務所には所属していたんですが、声優の基礎をしっかりと勉強したくて東京アナウンス学院に通っていました。

――児童劇団から声優の道に。ちなみに、友達と一緒に行ったイベントというと?
何も知らない状態で行ったので……アニメのイベントだったと思います。声優さんが生アテレコをしたり、キャラクターソングを歌ったりするのを見て、こんなにいろんなことするんだ〜って。人がいっぱいいるイベントに衝撃を受けました。インドア気質でゲームをするのが好きだったので(笑)。実はこれが私にとって初めての旅で、東京に行くのは怖かったです。

――いろいろな衝撃が(笑)。初めて受ける声優のレッスンはいかがでしたか?
最初は舞台と同じように、台本を全部覚えていってたんです。そしたら、台本は覚えなくていいよって言われて。画面と台本を交互に見ながらセリフを追っていくというやり方に、なかなか慣れませんでした。

――舞台とはまったく違っていたんですね。声優としてはどんなお仕事から始めたのでしょうか。
アナウンス学院を卒業してからすぐに、ラジオの1時間番組でアシスタントを務めたのが初めてのお仕事。それからwebアニメなどに出るようになりました。今思えば、いつもがむしゃらで、ずっと気合いを入れたまま過ごしていたなと。気を抜くところがわからなかったんです。だから途中で疲れちゃうこともありました。

――頑張りすぎて空回りするようなことも?
めちゃめちゃありました。オーディションでも、100%元気の押し売りみたいな。過去の映像は恥ずかしすぎて見られません(笑)。もともと負けず嫌いで、失敗したときに自分を許せなくなるんです。自分の100%でやらなきゃっていう気持ちは今も変わりませんけど、経験が少ないからこそ空回りしていた気がします。

“いつやめてもいい”という気持ちになれた作品との出会い

――2012年にゲームが発売、2013年からアニメが放送された『D.C.Ⅲ ~ダ・カーポⅢ〜』(瑠川さら役)は、転機にもなった作品だそうですね。
アニメやキャラソン、イベントなどを初めて経験した作品でした。養成所に通っているときから『ダ・カーポ』と『アイドルマスター』に出ることが夢で、でも事務所の方向性でアイドル色が強い作品は難しいかもって言われていて。そんななかで決まったので、思い入れが強いです。メインキャストの5人がすごく仲良かったから楽しくて。

特に女の子同士は、困ったとき相談に乗ってくれたり、お揃いのものを身に付けてみたり。発売イベントで大阪に行ったときは、後泊して宮崎羽衣ちゃんとUSJに出かけました。あの頃はイベントでも『ダ・カーポ』の制服を着たり、自分たちで新聞を配ったりしていました。

――初々しいですね! 転機になったと感じたのは、どんなところでしたか?
その頃は本当にがむしゃらで、空回りすることも多かったから、今の仕事は合わないんじゃないかと思い始めてしまって。これでラストにしようと思って受けたオーディションが『ダ・カーポ』だったんです。ただ、オーディションでは作品名を知らされていなかったので、社長から電話で報告を受けたときに「え?なんのこと?」って(笑)。『ダ・カーポ』だとわかってからは大号泣しました。役に共感することも多かったです。その頃の自分みたいに頑張りすぎたり、空回りしたり。台本読みながら「まるで自分を見ているようだ」と感じていました。

――悩んでいるときにいい作品に恵まれて。それが声優を続ける意志につながることもありましたか?
ありましたね。悪い意味ではなく、頑張りすぎるのはやめようって、肩の力を抜けるようになりました。声優という仕事をやめたくはないけど、いつでもやめられるような気持ちで過ごしていたほうが、芝居も私自身も柔軟になれるのかもしれないって、この時期に感じていました。

――それはやっぱり、悩み抜いたからこそ、たどり着いた境地なんでしょうか。
いろんなことを感じるなかで、“いつやめてもいい”っていう気持ちが自分にはいちばんしっくりきたんだと思います。そういう気持ちの落としどころを見つけられていなかったら、今はもうここにいないんじゃないかなと思います。

年数を重ねるたびにシンクロ率が上がっています

――『アイドルマスター シンデレラガールズ』もまた、養成所時代から憧れていた作品ということでしたね。
アイマスも転機になった作品でした。最初に所属していた事務所を辞める時、社長が「アイドル作品やりたかったよね。オーディション受けてみる?」と卒業祝いみたいに受けさせてくれたんです。

――白坂小梅役は、10年以上演じ続けている役。この10年で向き合い方が変わるようなことはありましたか?
最初は小梅ちゃんのことを理解するのに時間がかかりました。過去の音声を聴くと、悩みながら演じてるなって。1年くらいは模索していたと思います。年数を重ねていくことで次第に自分とのシンクロ率が上がっていき、「小梅ちゃんならこう言うかな」と感じられるようになりました。

――『ダ・カーポ』の瑠川さら役はご自分と似ているところがあったそうですが、小梅役は?
ホラー好きという点が似ています。スプラッター、めちゃめちゃ好きなんですよ。「キャラに合わせてるんでしょ」と言われるのが嫌で、しばらく黙ってたんですけど、少しずつ出すようにしたら、「もしかして……」とファンの方も気づいてくれるようになりました。母親がホラー好きで、小さい頃から毎日のようにホラーに親しんでいたので。『チャイルド・プレイ』とか、笑いながら観ています(笑)。

――ホラーって慣れるものなんですね(笑)。ちなみに、小梅ちゃんの好きなところをあげるとしたら?
最初は内にこもっていたけど、たくさんのアイドルと関わっていくうちに、いろんな表情を見せてくれるようになって。今では、周りの人を驚かせて笑わせる……みたいなイタズラっ子な一面も。私自身は人見知りなので、見習いたいところです(笑)。この10年で小梅ちゃんの成長を感じています。

――小梅ちゃんの成長に合わせて、役としての向き合い方も変わった?
最初は本当におどおどしたイメージだったので、こんなに変わるとは想像してなかったですね。小梅ちゃんもいろいろ経験したんだなって。親の心境です、完全に(笑)。ライブでは毎回、小梅ちゃんを愛してくれる人がいるかどうか心配で、小梅ちゃんTシャツを探してしまいますし、Twitterではコスプレやイラストの投稿にこっそり「いいね」を押したりしています(笑)。

休日は一日中パジャマでゲーム三昧です!

――プライベートでは猫好きで知られています。いつから飼い始めたんですか?
7~8年前くらいです。新田恵海ちゃんと番組をやったとき、箱の中に手を入れて中身を当てるゲームをやったのですが、その答えが子ウサギだったんですよ(笑)。それでウサギを飼いたくなってペットショップに行ったら、猫と犬しかいなくて。たまたま見た目がちょっとウサギっぽいフワフワした猫がいて、とっさに「かわいい。飼いたい!」って。猫を飼ったことがなかったのですが連れて帰って、いろいろ調べました。

――どんな種類の猫ですか?
スコティッシュフォールドです。最初は猫の種類すら知らなくて、「耳折れてるけど大丈夫なのかな?」って思ってたくらい(笑)。家を空ける時間が多いから1匹だとかわいそうだなと思って、保護猫で相性の良さそうな子をお迎えしました。今はサバシロとマンチカンの2匹ですけど、近々もう1匹増える予定です。

――TwitterではFPSゲーム『Apex』の話題もよく上がっています。
もともとパズルゲームしか興味がなく、FPS系のゲームって『Apex』が初めてだったんですよ。仲のいい子から誘われて始めたはいいものの、すぐやられちゃうし、銃のアタッチメントとか全然わからなくて。でも他の人の配信を観ていると、キャラの特性がわかったりして、気づいたら毎日やらないと気が済まないくらいハマってました(笑)。強くなっていく過程が好きなんだと思います。

――今も毎日のように?
今は『VALORANT』という別のゲームにハマり過ぎて、休日は13時間くらい修行のようにやっています(笑)。ゲームが好きって言い続けていたら声優e-Sports部に誘っていただき、「何時に遊べる人?」って募集をかけることもあるほど、今はゲームが交流のツールにもなっています。

――お休みの日は部屋の中で過ごしている感じですか?
部屋から出ないですね。コンビニにも行かないです。冷凍食品などを買っておいて、一日中パジャマで過ごします。絶対外に出ないっていう強い意志で(笑)。

――ちなみに最近買って嬉しかったものはありますか?
ScoLar(スカラー)っていうブランドで福袋を4つくらい。冬を越せるくらい大量の服が増えました。今日着ているブラウスもScoLarで、じつはこれ、うちの猫なんですよ。好きすぎてコラボ商品を作らせてもらいました。服が大好きで、お店を開けるくらい持っています。クローゼットに収まらないので倉庫に預けています。写真を撮って管理できるアプリがあって、コーディネートも提案してくれるから便利なんですよ。

「明日死ぬかも」って思いながら生きていきたい

――声優のお仕事で楽しいと感じるのはどんなところですか?
いつでも新しいことに挑戦したいと思わせてくれるところが楽しいです。

――これから新しく挑戦したいことは?
「いちだーすのおんがくたい」っていうアコースティックユニットで、主に歌とギターで空間づくりをしているんですけど、ちょうど10周年なので、ライブやユニットという枠を超えた新しいことができないかと計画中です。あとで後悔するより、一回やってみて失敗したらやめればいいかって。「明日死ぬかも」って思いながら本気で生きていきたいなと思っています。

――『ダ・カーポ』のときに得た気付きが続いている感じですね。
そうですね。つらいこともありますが、楽しいこともいっぱいあって、全部楽しいほうに上書きされるので、「楽しいからいっか!」と思えることが多いです。

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします!
長く応援してくださっている方は一緒に年数を重ねてきて、変化があったからこそ「ここが好き」「ここは好きじゃない」みたいなこともあると思いますけど、それでもついてきてくださってありがたいです。そして、今の私を新しく応援してくださる方もいらっしゃいます。時々、そんなファンの方同士で交流されていることを聞いて嬉しくなるんです。いろんな出会いがあって、楽しいことしたり、お互いに好きなことを話したりするのって嬉しいですよね。おこがましい言い方かもしれませんが、これからも仲良くしてほしいな(笑)。もちろん、声優としての活動もがんばります!

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

撮影=武田真和、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」

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