岡田夢以さんが、アーティスト「MEI」としての第一歩を踏み出した。これまでバンドや声優ユニットの一員として活動を重ねてきた彼女が、初のソロミニアルバム『Radiance』を完成。短期間での制作にもかかわらず、全6曲の楽曲には、これまで培ってきた音楽的バックボーンと、彼女自身の“今”が色濃く投影されている。「音楽は体の一部」と語る彼女が、このタイミングでソロ活動を始めた理由、楽曲に込めた思い、そしてこれから目指す未来を、たっぷり語ってもらった。
急ピッチで走り出したソロプロジェクト
──まずはソロデビューおめでとうございます! 今回のミニアルバム『Radiance』のリリースにあたってお聞きしたいのが、MEIさんの音楽の“原点”について。どんな音楽に触れて育ってきたのでしょうか?
私が音楽に強く惹かれたのは、中学生の頃ですね。当時K-POPがすごく流行っていて、少女時代さんのライブを観に行ったことがあって。あの完成されたパフォーマンスに衝撃を受けて、「歌って踊るってこんなにかっこいいんだ!」と感じたのが、今につながる最初のきっかけでした。
──表現で魅せる音楽のパフォーマンスに惹かれたんですね。ご家庭でも音楽はよく聴かれていたんですか?
はい、家では母がマドンナやレディー・ガガをよく流していて。あと、MISIAさんのような日本のアーティストの楽曲も自然に耳に入ってくるような環境でした。ジャンルに縛られずに、いろんな音楽に触れられたのが良かったなと思っています。思わず鏡の前で踊っちゃうような、体が自然に反応するような楽曲が好きなので、今回はまさに、そういう楽曲たちを目指して制作しました。
──その頃からソロアーティストになることは想定していましたか?
全然してなかったですね(笑)。高校生の頃は女優を目指して養成所に入って、事務所内のオーディションで誕生した転校少女歌撃団としてデビューしました。歌やダンスは好きだったけど、自分がステージに立つなんて思ってなくて。だからこそ、10年越しにソロとしてデビューできることが本当にうれしいですし、不思議な気持ちです。
──ステージに立つことで見えてきた“自分の可能性”があったんですね。では、ソロとしての意識が芽生えたのはいつ頃からだったのでしょう?
『D4DJ』というコンテンツに関わるようになってからですね。音楽に深く関わる時間が増えて、次第に「もっと自分で表現できることがあるかも」と思うようになって。声優や舞台のお仕事でも常に“音楽”が軸にあったので、それならその軸を活かして、自分の中の音楽をもっと前に出してみたいと感じるようになりました。
──これまでのアイドル活動や舞台での経験も、今のソロ活動にしっかり活きていますか?
間違いなく活きてますね。特に、ステージ上での立ち居振る舞いや、準備の進め方ですね。「この日までにここまで仕上げていれば大丈夫」という逆算の感覚は、グループ時代に培ったもので。あと、転校少女*時代はリーダーだったので、メンバーを見ながら進めていく力も養えたと思っています。
──その経験値が、今回のプロジェクトでも発揮されたのではないでしょうか。今回のソロプロジェクトが始動したのは、どのようなタイミングだったんですか?
実は本当に急なスタートだったんです。「いつかやれたらいいな」くらいに思っていたところに、プロデューサーさんから「今、このタイミングでやろう」と声をかけていただいて。年明け早々から動き出して、一気にミニアルバム制作まで駆け抜けました。
──まさに急ピッチだったわけですね(笑)。制作期間もかなりタイトだったとお聞きしました。
そうなんです(笑)。ミニアルバムにはオリジナル楽曲が6曲も入っていて、さらにMVも撮影があって……本当にスタッフの皆さんに支えていただいて、怒涛のスケジュールを全力で走り抜けた感じでした。
──今作の楽曲はすべて、『D4DJ』でもお馴染みの都田和志さんが手がけられているそうですね。プロデューサーとのやりとりも密だったのでは?
はい。都田さんとは、私の声や世界観に合うものを一緒に考えながら、全曲“決め打ち”で作っていただきました。「こういう楽曲が似合うと思う」とご提案いただいて、私自身も「これしかない!」と感じる納得感があって。収録順やアルバム全体の構成についても、丁寧に話し合いながら進めていきました。
──アルバムタイトルの『Radiance』にはどんな想いが込められているのでしょう?
“輝き”という意味が込められているんですけど、プロデューサーさんが、私のイメージから「繊細さを感じられるような言葉がいい」とおっしゃってくださって。そのときに「私、繊細なんだ?」ってちょっと驚きました(笑)。でも、自分ではあまり意識してなかった“儚さ”とか“守ってあげたくなる存在感”みたいなものを見つけていただけたことが、すごくうれしかったですね。
──たしかに、今回のビジュアルも“美しさ”と“強さ”が共存するような仕上がりになっていますよね。
ありがとうございます! 全体的にはクールでビューティーな印象を目指していて、衣装もスーツをベースにしつつ、ふわっとしたスカートで可憐さも取り入れていて。私がこれまで演じてきたキャラクターの要素も少しずつ盛り込まれているんですよ。ピアスも衣装さんの手作りで、とてもお気に入りです。
曲ごとに異なる表情が光る、“等身大のMEI”を詰め込んだ1枚
──では、各楽曲についても聞かせてください。1曲目の「Faraway」は、表題曲でもあり、ご自身の“推し曲”とうかがいました。
「Faraway」は私の声をいちばん活かせるように作っていただいた楽曲なんです。プロデューサーとも高速道路を夜にドライブしているような流れる風景が目に浮かぶような曲にしたかったとお話しながら作り上げていきました。歌いやすさもあるし、実は新しい歌い方にもチャレンジしていて。シティポップっぽさもあって、懐かしさがありつつ、ずっと車で聴いていたくなるような曲だなと思います。都会のネオンに囲まれた風景を走るイメージというか、そんな情景が浮かぶような楽曲ですね。
──サウンドも心地よくて、テンポ感も絶妙でした。
そうなんです。ゆるやかなのにテンポは遅すぎず、乗って聴ける。MV撮影もこの曲だったんですけど、ダンスも意外と激しめで、滑らかさと繊細さが求められる振付でした。フォーメーションがない分、自分の身体で空間を埋めるような振付構成になっていて、すごく新鮮でした。
──ソロとしての初MVという点でも、印象深い作品になったのでは?
グリーンバックで撮影して、後からCGで世界観を構築していただいて。完成映像は想像以上に美しくて感動しました。「Faraway」の世界にぴったりの仕上がりでした。ライブでもこの楽曲をどう見せるか、表情の付け方や間の取り方をいろいろ試してみたいと思っています。
──続いて「romance」についてもお聞きします。先ほどの「Faraway」とはまた違って、ちょっとかわいらしさやエフェクトが印象的なミドルナンバーですよね。
ちょっと懐かしい感じもありますし、音の質感や言葉選びにもかわいらしさがあって。女性らしさがすごく出ている曲だと思います。最初に聴いたとき、「こういうテイストもあるんだ!」って、自分でも新鮮でした。
──言葉選びが本当に繊細で、情景が浮かぶような曲ですよね。
個人的にも、感情が表に出やすい楽曲だなと思っています。「Faraway」が少しクールで情景寄りだったのに対して、「romance」は“誰かに伝えたい気持ち”が真っすぐ描かれている。だから、歌っていても自然と気持ちが入りますし、ライブでの表現にもすごく幅がありそうだなと感じています。
──「My birthday」は、タイトルからは明るくてハッピーな曲を想像する方も多いと思いますが、実際に聴いてみるとちょっと違った印象を受けました。どこか物悲しさや素直になれない気持ちが漂っていて……。
どこか寂しさや素直になれない気持ちが漂っていて、ただの“お祝い”じゃないところがこの曲の魅力だと思っています。私自身、昔から「誰と過ごすか」を大切にしてきたので、その想いが歌詞に反映されていてとても嬉しかったです。実は「何を⾷べるかよりも 誰と⾷べるかが⼤切」というフレーズはプロデューサーに私が話したことが反映されているんです(笑)。
――MEIさんは誰かとの関係性を大切にしてきたタイプなんですね。
そうですね。私にとって、誕生日って“何をもらうか”よりも“誰と過ごすか”がすごく大事なんです。小さい頃から家族が多くて、三姉妹の家庭だったんですけど、“誰かの誕生日には必ず全員で集まる”という決まりがあって。だから、誕生日をひとりで過ごすことのほうが、プレゼントがないよりもずっと寂しいと感じるんです。一緒にいてくれるだけで、十分に幸せだなって思えるタイプですね。
──となると、歌っていて共感できるポイントが多いですか?
多いですね。感情をストレートに乗せやすくて、特に“哀”や“怒”に近いニュアンスが自然と出てくる曲でした。実は“楽しい”とか“嬉しい”って、表現が難しいんですよ。演技でもそうですが、シンプルな喜びの表現ほど奥が深くて。この曲は、その対極のリアルな感情を丁寧に表現できてよかったです。
──「Proof of Love」は、アクセサリーの描写が印象的でした。
私、アクセサリーが本当に好きで、特にピアスはファンの方から誕生日プレゼントでいただくこともあるくらいで(笑)。ピアス集めてますって公言しているくらいなんですけど、歌詞の中に出てくるピアスやネックレスの繊細さ、輝きっていう表現が、今回のアルバムのコンセプトとすごくマッチしていて。後々プロデューサーに聞いたら偶然だと聞いてびっくりしましたが、それだけに運命を感じてしまいました。
──メロディや構成で気に入っている部分はありますか?
この曲のメロディもすごく好きで……特にサビ終わりの心に決めたあとのフレーズとか、Bメロのコード進行が切なくて、美しくて。個人的にめちゃくちゃ刺さってます。
――具体的な表現が多いですよね。
“クロス”って、実はネックレスのことを指してるんですよ。本当は“ネックレス”って言葉にしようって話もあったんですけど、ちょっと直接的すぎるかなっていうことで、すごく迷われていて。でも、“ネックレスって、胸元=ハートの近くにあるものだから、歌詞のテーマ的にこれがぴったりなんじゃないか”っていう流れになって、最終的に“クロス”という表現に落ち着いたんです。そういう細かい言葉選びのセンスも含めて、すごく丁寧に作っていただけた楽曲だなって思います。
ゆくゆくは全曲作詞・作曲してみたい
──そして「Get lit」。アルバム後半の流れを大きく変えるような、テンションの上がるナンバーですね。最初に聴いた時、これはライブで映えるだろうなって直感的に感じました。
そうなんです! 本当にライブのためにあるような楽曲だと思っていて。イントロが鳴った瞬間に「これ絶対盛り上がるじゃん!」って(笑)。振付もキャッチーにしたいし、コール&レスポンスも盛り込みたいなと思っていて。ファンの皆さんと一緒に作っていける曲になる予感がしています。
──この曲以降、ラストに向けてテンションも一気に上がっていきますよね。アルバム全体の流れを考えるうえでも、重要な立ち位置の1曲だなと感じました。
まさにその通とおりで、「Get lit」は“橋渡し”の役割を担っているんです。前半はちょっとしっとりめだったり、感情を掘り下げるような曲が多いんですが、この曲を挟むことで一気にスイッチが入るような感覚があって。ファンの方が自然と両手を挙げたくなったり、体が動くような曲にしたかったんです。
──“両手上げて”や“弾け飛んで”という歌詞もストレートで、まさにライブ向きの言葉選びだなと。
そうなんですよね。聴いた瞬間にわかる、キャッチーなフレーズが多くて。ライブの空気を一気に引き上げてくれる楽曲って、やっぱり特別だなと思います。私自身、この曲があることで「絶対大丈夫」っていう自信を持てるし、パフォーマンスする側にとっても心強い存在ですね。
──ラストを飾るのが「ギミギミ」。これまでの曲とは雰囲気がガラッと変わって、どこかキャラクターソングっぽさもあって、新鮮でした。
そうですね。「ギミギミ」は実は「Faraway」よりも前に制作された、今回のプロジェクトの中で最初の1曲だったんです。私が「こういう曲が好きです」っていう参考動画をいくつか送らせていただいて、それをもとにプロデューサーがピックアップしてくださって。ポップで、サビにドン!と入る感じとか、アクセントがしっかり効いた曲が好みなので、それをしっかり汲み取ってくださっていました。
──“うふふ”っていう遊び心のあるパートも印象的でした。あれはどうやって生まれたんですか?
あれ、実は最初は入れる予定なかったんですよ。でも、過去に演じてきたキャラクターとか、積み上げてきたものをちょっと垣間見せるような、“自分らしさ”を出す仕掛けとして、加えてみたんです。自分でも「これ、入れてみたい」って思って、あのタイミングで“うふふ”が生まれました(笑)。
──「ギミギミ」はTikTokとの相性も良さそうな気がします。
めちゃくちゃ意識してますね。最近やっとMEI名義でTikTokのアカウントを作ったばかりなんですが、この曲は絶対にTikTokで踊ってもらえるような振付にしようって決めていて。歌詞に“コスメ”とか“アクセ”とか“ドライヤー”とか、固有名詞っぽい言葉がたくさん出てくるので、そこをどう振付に落とし込むかを今考えてるところです。
──TikTokに限らず、そうしたSNSでの広がりを意識した楽曲って、今の時代すごく重要になっていますよね。
そうですね。実際、ライブの撮影可能曲とかでファンの方が撮って投稿してくれるのを見ると、すごくありがたいし、ファンの方と一緒に作品が育っていく感じがして、とても好きな文化だなって思います。だから「ギミギミ」は、私自身も投稿してみたいし、みんなが真似してくれたらうれしいなって思ってます。
──どの曲もカラーがはっきりしていて、まさにMEIさん自身の多彩さが伝わってくる1枚ですね。
そう言っていただけてうれしいです。短期間でこんなにも濃いアルバムを作っていただけたのは本当にありがたくて。今後は自作の楽曲にも挑戦して、もっと自分の内面を音楽で表現していけたらと思っています。
──5⽉17⽇には1st LIVE「Radiance」が開催されます。きっとファンの方も心待ちにしていると思います。
全編1人で歌って踊るっていうのは、実は初めてなんです。少し心細さもあるけど、それ以上にワクワクしていて。もちろん、ファンのみなさんの存在が励みになっていますし、仲間の声優さんたちも応援してくれていて、すごくありがたい環境にいるなと感じます。
──アーティストとしての今後のビジョンはどのようなものを思い描いていますか?
アニメの主題歌は一つの目標です! あとは海外イベントにももっと出演したいですね。前にタイに呼んでいただいたことがあるんですが、そのときはまだソロ曲がなかったので、次はMEIとしてちゃんと呼んでいただけるように頑張りたいです。ゆくゆくは全曲作詞・作曲したアルバムも作りたいですね。
■プロフィール
おかだめい●5月19日生まれ。エースクルー・エンタテインメント所属。主な出演作は、アニメ『D4DJ All Mix』(水島茉莉花)、『BanG Dream!』(八幡海鈴)、舞台『ROAD59 -新時代任侠特区-』(柊彩愛)、『魔法歌劇 アルマギア Episode.0』(マツリカ・オーナメント)、その他『らぶフォー』(最上羅巫)ほか。
■クレジット
カメラマン/川島彩水 取材・文/川崎龍也
■information
声優・岡田夢以のソロアーティストプロジェクトMEIとしての1stミニアルバム『Radiance』が4月30日リリース。初回限定盤にはCDに加えて、5月17日に開催されるMEI 1st LIVE『Radiance』のライブフォト&ビハインド映像が収録されたM-CARDが封入される。
初回限定盤(CD+M-CARD)
価格 ¥5,800(税抜)
通常盤(CD)
定価 ¥2,800 (税込)
<収録曲>
1 Faraway
2 romance
3 My birthday
4 Proof of Love
5 Get lit
6 ギミギミ
MEI 1st LIVE「Radiance」
⽇程︓2025年5⽉17⽇(⼟)
【1部】12:45開場/13:15開演
【2部】17:30開場/18:00開演
会場︓シアターマーキュリー新宿