村上奈津実さんと田中ちえ美さんによるユニット・NACHERRY(ナチェリ)が、TVアニメ『紫雲寺家の子供たち』のOPテーマ「ハニーレモン」を5月28日にリリース。作品の世界観にぴったりな、ちょっと切ないポップチューンだ。カップリングは、それぞれが希望した楽曲を収録。全3曲について、話してもらった。
恋は緩急……。「ハニーレモン」のボーカルのこだわり
――TVアニメ『紫雲寺家の子供たち』のOPテーマ「ハニーレモン」を受け取ったとき、どんな印象を受けましたか?
村上 めちゃめちゃ作品にぴったりじゃん!って思いました。何曲か候補があったんですけど、この「ハニーレモン」が光り輝いて見えたんです。最初の〈飛びこんでしまえ 味はハニーレモン なんて密やかなサワー〉というフレーズだけで、『紫雲寺家の子供たち』のオープニング映像になっている未来が見えました。
田中 私も作品にリンクしていて、ぴったりだなと思いました。最後の〈この気持ちに名前をつけるなら「恋」だ。〉という歌詞も、全(女性)キャラに当てはまっていますよね。これまで10年以上兄弟姉妹(きょうだい)として過ごしてきて、いきなりあなたたちは本当の兄弟姉妹ではないと言われるなんてあり得ないことだけど、「これってやっぱり恋なんだ……」っていうのが、どのキャラにも当てはまるから、それぞれのイメージソングだなって思いました。
――第1話から、実は養子だったと、衝撃の事実が明かされる感じでしたからね。
田中 しかも7人兄弟姉妹ですからね。現実世界ではありえないことだけど、ちょっと想像しちゃいました(笑)。私、兄がいるんですけど、お兄ちゃんが大好きなんですよ。それがいきなり「本当の兄妹ではない」なんて言われたら、どうなっちゃうんだろう?って。ありえないからこそ、考えちゃいました。
村上 私も兄がいるけど、田中みたいに「お兄ちゃん大好き!」って感じではないからな~(笑)。
――先ほどおっしゃったとおり、歌詞が紫雲寺家の姉妹に当てはまるからイメージソングというのもわかりますね。
村上 だからこそ、女の子5人に〈「恋」だ。〉と言わせたい!
田中 普通にセリフとして、CVで言ってほしいよね。
村上 もう、本当に〈「恋」だ。〉だけでいいので何とか……!
田中 欲を言えば、5人それぞれに歌ってほしい!(笑) 同じ歌詞でも、主人公の新(あらた)へのアプローチが違うように、歌い方に個性が出そうじゃない?
村上 そうだね。それこそ〈あの日から胸がなんだかうるさい〉なんて、前から新お兄ちゃんのことが好きだったことのちゃん(CV.市ノ瀬加那)は「飛び込んじゃえ!」って感じになるだろうし、新と双子として育ってきた謳華(おうか)ちゃん(CV.高橋李依)は、まだどうしていいかわからない胸のざわめきがあるだろうし……。
田中 そうだね。双子じゃないとわかった瞬間に、今まで普通にやっていたことができなくなったりして、そういう想いも曲に乗せて歌ってくれそう。
――いろいろな恋の形が楽しめそうですね。レコーディングでは、それぞれどんなアプローチで歌っていったのですか?
田中 NACHERRYは、だいたい同じ日にレコーディングをするんですけど、今回は、なっちゃんから歌っています。
――ボーカルの方向性については話しましたか?
村上 どういう感じで歌うかという相談は、いつもそんなにせず、お互いが持ってきたものをその場で出して、ディレクションをしていただきながら合わせていく感じになります。なので私は、作品の世界観に合うようにというのはもちろん、気持ち的には、5人の誰でもない、私も新お兄ちゃんの妹という気持ちで、新を想像しながら感情を乗せて歌うというアプローチの仕方でした。だからずっと新のことを考えていたかもしれないです。もどかしい恋心で、バァーっと好きという気持ちを出すというより、ラスサビに向けて、徐々に放出していくイメージでした。
田中 恋っていろんな波があると思っていて、いい感じのときは気持ちも高ぶっているし、うまく行かないときは気持ちも下がる……。歌詞にもそういうニュアンスがあったので、それを歌で表せたらいいなと思いました。自分の中では、サビで強く出ることは意識していたので、Aメロ、Bメロ、サビでメリハリが付けて、恋の揺れ動く感情を表せたらいいなと思っていました。アプローチでいうと、私はどのキャラクターでもなく、それこそ、兄と兄妹じゃないと言われたら……みたいなことを想像しながら歌っていました(笑)。
――〈なんだかまるで カンジンな私を置いて〉からのDメロの部分が印象的で、そこから落ちサビ、そしてラスサビで盛り上がっていく流れが良かったです。
田中 私も好きです! 特に落ちサビでのなっちゃんの歌声がいいんですよ。Dメロで感情が爆発して、どうしていいかわからないっていう気持ちが頂点にまで来ちゃっているところから、なっちゃんの歌で一旦落ちる感じの緩急がめちゃくちゃ良くて! 恋という感情の揺れ動きが、なっちゃんの歌声で、より伝わると思ったので、ここの入りは好きなんです。2人でレコーディングをするから、歌割りも一緒に考えるんですけど、「ここは絶対になっちゃんが良いと思います」と言いましたから。自分も歌っているけど、ここは自分から折れました(笑)。
村上 そう言ってくれたんですよね。ありがとう……。でも私は、落ちサビ後半の〈キラキラキラ〉の田中の歌も好きなんです。本当にキラキラが入っている感じがして、すごくいいんです。
田中 ホントに? ありがとう。
――ジャケットやMVのビジュアル的なこだわりはありますか?
田中 MVやジャケットの世界観だと、オーロラみたいに光るフィルムを背景に置いて撮影したので、その世界観に合った衣装をいくつか用意してくれたんです。そこから一番世界観に合っている服を選んだんですけど、このチュール生地とかのふわふわした感じが、甘すぎず、でもかわいいという、大人になったNACHERRYを感じられたので、即決しました。
村上 いやらしくない感じで、肌も出ていていいよね。
田中 抜け感、透明感だね。儚い感じがすごく好きです。
――MVも儚い表情をしていましたね。
村上 それは頑張りました……(笑)。笑顔しかない人間なので……。
田中 撮影の時、儚げな表情が苦手だって言ってたね(笑)。
村上 アンニュイな表情と言われると、困ってしまうんですよ。
――だからこその、最後の笑顔だったんですね。
村上 きっとNGで、カットされると思っていたら使われていましたね。でもあれは、田中がよくわからない音を立てたんですよ!
田中 私もけっこう堪えていたんです。近いから息とかごめん!と思ってて(笑)。お弁当も食べたし、歯は磨いたけど、エチケットとして息を少なくしようとしてたら、鼻が鳴ってしまって(笑)。でも私の鼻がピクピクしているのは、映像ではわからないと思う。
ーーそんな雰囲気が、メイキング映像では見られるのですか?
田中 そうですね。撮影自体は楽しかったんですが、これってどういう映像になるんだろう?と思いながら撮影しているところもあったんです。
村上 楽しくて、ふざけていたところもエモい感じになっていたりするので、すごい!って思いました。
田中 糸電話のところも、ふざけた声を出しながら撮影したりしたので(笑)。
――音は見えないですからね(笑)。
歌詞〈飛び込んでしまえ 味はハニーレモン〉より
奄美大島で一人旅をしました! 写真集(田中ちえ美1st写真集「未確認」)で沖縄に行ったこともきっかけになっていて、
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「一人旅をしてみたい!」ってツアーに申し込んだんです。車を運転できないから移動がバスだったり徒歩が多くなるだろうし、体力もいるから……ってずっと悩んでたんですけど、もう行っちまえ!と(笑)。結果、成長したなと思いました。飛行機も一人で乗るのは初めてで、私、空港に一人なんだ!っていう感覚も不思議だったし、いざ島に着いた時は、「ひとりだー!!」って解放感がすごかったです。私のことを知っている人が誰もいないっていうのが新鮮で。きっと、東京に疲れてたんですよね。自分のペースでゆっくり歩けなかったり、パーソナルスペースも狭いじゃないですか。もちろん魅力的な街なんですけど、みんな無意識にストレスをためていると思うんです。大自然に放り込まれて一気に解放された感じがすごく良くて。それに私、人見知りなんですけど、現地の方に「この辺で、おいしい居酒屋あります?」とか「自然が豊かで本当に良いですねぇ。やっぱり移住する方とか多いんですか?」って自然と話しかけてて(笑)。人間力が上がった気がしたので、次は宮古島に行こうかなと思ってます。
味は、ヤギの刺し身の味? 沖縄の伝統料理なんですけど、そういう未知の食べ物をいっぱい食べたし、黒糖焼酎もいっぱい飲んで楽しかったです。一人だと、何でも自分のペースでできるから、ただただ海をずっと眺めている時間とかもあったので、すごく良い経験になりました。
私は、何かに飛び込んだというか、飲み込まれたというか……。最近、お酒で大失敗をしちゃったんですよ……。
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仕事の打ち上げだったんですけど、飲み方を間違えてしまったんですよね。自分はお酒を飲めるほうという自負があって、周りからも「何杯飲んでも変わらないね」と言われ続けていたんですけど、その日は2杯しか飲んでいないんです……! でも、メガハイボールを氷抜きで頼んだら、原液なんじゃないか?ってくらい茶色いハイボールが来て(笑)。それを半分くらい飲んで以降、何もかもまったく覚えていないんですよね……。その打ち上げの後に写真が送られてきたんですけど、「きっと私は早急に先輩たちに運ばれて帰宅していただろうから写ってないはず」っと思ったら、めっちゃニッコニコの笑顔で写真に写っていたんですよね……。それを見て、こわっ!って。記憶がないだけで人と話してるわけで、そこで記憶を飛ばす恐怖を感じました(笑)。先輩方は優しくて、「迷惑はかけてないし、こんなに楽しくなってくれる子はいないからうれしかったよ」ってフォローもしてくださって。ただ、申し訳ないので、お詫びの品を一人ずつに用意して回りました……。
なので、どのような味かというと、ウィスキーの味です(笑)。
2人がそれぞれ希望した、対照的なカップリング曲
――カップリングもすごく良い曲ですね。
田中 2曲ともすごく好きで、皆さんに早く聴いていただきたいと思っているんです。全オタク、全人類に刺さる曲だと思っているんです! 「あれこれ、かれこれ」は、なっちゃんからどうぞ!
村上 カップリングは、それぞれがどんな歌を歌いたいかという希望を出して書いていただいたんですけど、「あれこれ、かれこれ」は私の希望で書いてくれた曲なんです。「ハニーレモン」に合わせたわけではないんですけど、恋愛の曲を聴きたいときって、とことん聴きたくなるんです。キュンキュンしたくなるので、同じ恋愛曲でもいいんじゃないかなと思って、恋愛の中でも、片想いの曲をお願いしました。失恋とか、叶わない、実らない恋の曲が大好きなんです。
田中 えーー! 切ないやん。両想いじゃダメなの?
村上 一方通行の恋がすごく好きで……。あと、ピアノの伴奏が聴こえる曲が良くて、あとは頭から、物語になっている曲がいいなと希望を伝えたら、私の想像を超えた曲を、渡辺 翔さんが書いてくださって……。
――まさにオーダー通りですね。
田中 実らない恋がいいと言ってはいたけど、片想いが最後に実るんじゃなくて、実らないまま終わるんだ!ってなりました。
村上 そうそう。だから終わらせ方も、〈叶わない理由〉で終わるのがいいんです。やっぱり、一方通行の想いに酔いたいんですよね(笑)。
――〈なんでわかんの今なのかな〉から始まるのもいいですよね。すでに手遅れ感があって。
村上 この曲は、過去のことを、ああしておけば良かった、こうしておけば良かったって、たらればで後悔している歌なんですよ。
田中 タイトルも「あれこれ、かれこれ」で、それも良いよね。
――物語になっているけど〈手を伸ばせば伸ばすほどに 足が地面から離れて怖い〉も、詩的で良かったです。
村上 歌詞は詩的ですよね。渡辺翔さんはレコーディングに来てくださって、歌詞の意味もいっぱい聞けたのは良かったです。途中で〈青だったんだ〉という歌詞があるんですけど、ここは単純に“青春”の意味だったんですね。でも歌詞をいただいてから解釈をしていくなかで、私は青信号のことだと思っていたんです。あの人の信号は青だったんだから、そこで行けば良かったのに行かなかったという意味なのかなと。それを伝えたら、翔さんに「そっちのほうが詩的でいいですね」と言ってくれて、採用してくださったのがうれしかったです(笑)。
田中 その場のほとんどの人が、“青春”の青だと思っていたのに、なっちゃんだけが信号だと思っていて、なっちゃんこそ詩人?って思いました。
――たしかにその意味でも通じますからね。歌録りも、解釈を深めてから歌えたのですね。ボーカルは息が多めで、すごく近くで歌っているような感じがしました。
村上 仮歌の雰囲気もあったと思うんですけど、歌うというより、その歌の主人公が過去の自分を思い出しながらささやくようなイメージで、息を多めにしたアプローチで歌ったほうが、この曲のエモさや切なさが出せるような気がしたので、それは意識しました。
田中 これも一緒にレコーディングをして、なっちゃんが先に歌ったんですけど、それがもう完成されていたんです。世界観が伝わってきたので、私もその感じでやろうと思って、いざ歌ってみたら、全然違うものに仕上がったというか。ソロバージョンが聴きたくなるくらい違うんです。私のほうが子供っぽい感じで、「あのとき、ああしておけば良かったな〜。私ってばなんてダメなんだー!」みたいな感じ(笑)。それはユニゾンで聴くより、ソロで聴いたほうが伝わるのかなって思いました。
――ピアノの旋律もきれいでしたし、〈あれ?わたしはもう好きみたい〉の“好きみたい”の歌い方も良かったです。
村上 ありがとうございます(照)。
田中 そこも私が、「なっちゃんのが良いと思います」と推薦しました(笑)。
――続いて元気な「NACHERRY JET!」ですが、ユニット名を冠した楽曲ですね。
田中 これまでも「ナチェリのWa!!」「NACHERRY PARK」「HAPPY NACHERRY BIRTHDAY」とかがあるので、それと同じシリーズ、みたいなところはあるんですけど、この曲は私の希望曲で、EDMみたいな、みんなで楽しくノリノリになれる曲がいいなと思ったんです。
――タイプが全然違いますよね。
村上 カップリング曲のオーダーが似たことないよね(笑)。私は浸れる曲が大好きで、特に歌詞を聴きたい!って感じだからなぁ。
田中 私は逆にバラードとかあんまり聴かないからね。アニソンロックとかばっかりで、歌詞よりもメロディラインとかリズムで乗れる曲が好きだから、歌詞のわからない洋楽とかも好きなんです。
――逆に、自分からは出てこないタイプの曲が歌えるのはいいですよね。「NACHERRY JET!」は、それこそライブで盛り上がりそうです。
田中 歌詞でメッセージを伝えたいというよりは、体が勝手に乗ってしまうような曲ということでオーダーはしたんですけど、明るければ明るいほど、なんか泣ける…みたいな感じもあるんです。だから落ち込んだりとか、何かに挑みたいとき、飛び出したいときにぴったりな曲だなって思います。歌っていても、だんだん楽しくなってくるので、早くライブで披露したいです。そのときは、歌詞のカッコの部分を、みんなにどデカボイスで歌ってほしいです。
村上 この曲を受け取ったときから、ノリがいいし、ライブでお客さんが腕を振ってくださっているのが想像できちゃうくらい明るくて良い曲だと思ったんですけど、歌詞の〈自分も知らない 自分に叫ぶの -「大好き」って!-〉というところが大好きで、個人的にすごく背中を押されたんですよね。だからここは、私たちも大きく「大好き」って叫ぶけど、皆さんにも大きな声で、私たちに「大好き」をぶつけてほしいなって思いました。
――ちなみに、何で背中を押されたんですか?
村上 この曲を聴いたとき、自分の中で推しが生まれそうなときだったんです。そのときに、好きなんだろ? 叫んじゃえよ!って、この曲が言ってくれている気がしたので、私の中で、ちょっと思い出深い曲になっているんです。
田中 難しいことは考えず、いいじゃん、好きで!って曲だからね。
村上 だから、みなさんも自分も気づいていない好きに出会えたらいいなって思っています。
取材・文/塚越淳一
profile
NACHERRY(ナチェリ)
声優として活躍中の村上奈津実と田中ちえ美がユニットを結成し、Lantisよりアーティストデビュー。ユニット名「NACHERRY(ナチェリ)」は、自身の名前「奈津実」と「ちえ美」をかけ合わせ、“さくらんぼのように2人でひとつ。楽しいことは2倍楽しんで、足りないところは補い合おう!”という想いで、2人が名付けた。NACHERRYは、『好きなものに真っ直ぐな、遊び心を忘れない少女のように。ずっとずっと、ワクワクする。』というコンセプトのもと活動。カラフルでポップな2人が、ポジティブで力強いアメリカンロックを歌い、ワクワクを届けます。
information
NACHERRY NEWシングル
「ハニーレモン」
好評発売中
01.ハニーレモン
作詞:鈴木エレカ 作曲:鈴木エレカ、oni 編曲:oni
02.あれこれ、かれこれ
作詞・作曲:渡辺 翔 編曲:瀬名 航(SOVA)
03.NACHERRY JET!
作詞:辻 詩音 作曲:JEF(Core Creative) 編曲:ヤナガワタカオ
【NACHERRY盤】
価格:2,750円(10%税込)
仕様:CD1枚 Blu-ray1枚
[Blu-ray]
01.「ハニーレモン」Music Video
02.Music Video Making
【紫雲寺家の子供たち盤】
価格:1,650円(10%税込)
仕様:CD1枚
○NACHERRY公式HP
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○村上奈津実 公式X
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