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東山奈央さんと安野希世乃さんによる『ぽかぽかイオン 1st LIVE ~Re : me & you~』ライブレポートを公開!

ぽかぽかイオン
アンコールでは『マクロスΔ』ワルキューレの「唇の凍傷」を熱唱

2025年7月19日(土)、『ぽかぽかイオン 1st LIVE ~Re : me & you~』が東京・立川ステージガーデンで開催された。声優・歌手として活躍する東山奈央さんと安野希世乃さんが2017年、あるテレビ番組での共演をきっかけに意気投合、“自称”としてはじまったユニット・ぽかぽかイオン。ここまでの道のり──前日に関東甲信が梅雨明けを迎え、ライブ日和のなかでの開催に至るまでの歩みは、とても“らしい”ものだった。

2021年、公式結成を発表したぽかぽかイオン(なおときよの)は、「ぽかぽか担当/ピンク」の東山と「イオン担当/ブルー」の安野による声優ユニット。「人々の心を癒し、明日への活力《ビタミン》を届けること」をコンセプトにしており、2022年3月2日の1stシングル「やじるし→」、2025年3月5日の2ndシングル「リミー」のリリースと、暖かい時期限定で、のんびりと活動を続けてきた。

ふたりがぽかぽかイオンとしてステージに立つ機会は、これまでとても貴重なものだった。それぞれに出演していた『リスアニ!LIVE 2022』で、ユニットとしてもサプライズ出演したのが人前での初のパフォーマンス。その後は2022年6月26日に東京で開催されたTVアニメ『スローループ』スペシャルイベントと、今年3月15日、29日にそれぞれ東京・兵庫で開催された「リミー」リリース記念イベントで歌唱を披露している。

今回は、ぽかぽかイオンに癒されてきたリスナーが待ちに待った1stライブ。嬉しいことに、今年の“暖かい時期”はすこしだけ延長となり夏のギラギラした日差しが降り注ぐなかでの開催となった。

昼の「第1部 Solo Solo Ion Stage」は、その名の通り、豪華なツーマンライブ。爽やかなピンクとブルーのパステルカラーがマーブル模様となった「pokaio公式クールTシャツ」の色味が、客席を染め上げていく。手拍子が鳴り響くオープニングで迎えられたのは、前日の公開ゲネプロで「ミネラルズ」と命名された、もともとふたりと縁が深いバンドメンバーたちだ。
期待感が渦巻くなか、東山さんが「ぽかぽかイオンのぽかぽか/ピンク担当、東山奈央です! みんなー、最高の一日にしましょうー!」と2Fステージから華やかに登場。ピンクのアシンメトリーなドレススカートという衣装で歌い出したのは、東山さんの代名詞的な楽曲のひとつであるロックナンバー「群青インフィニティ」だ。拳を振り上げて「飛べー!」と叫ぶ東山さんに、フロアも声援で応える。「初めてツーマンライブで対バンをやらせてもらうのが安野希世乃さんで、すごい嬉しいなって思っています!」と意気込む東山さんが、続いて歌ったのは青春感が駆け抜ける「イマココ」。

「大好きな人がいまここにいるいるんだよ」という歌詞に、「大好きな希世乃がここにいるいるんだよ」と、とっておきのアレンジを加えていく。そんな東山さんと入れかわりで、安野さんが「ぽかぽかイオンのイオン/ブルー担当、安野希世乃です!」と登場、これまた「うぉー!」という歓声が響き渡る。安野さんはブルーのロングパンツスタイル。差し色には東山と同じく黒が使われており、ぽかぽかイオンとしての結びつきと共に、ふたりの大人っぽさも感じさせる衣装だ。

アッパーな空気を引き継ぎながら安野さんが歌ったのは、自身の代表曲のひとつである「ロケットビート」。東山さんの明るく煌めく歌声と、安野さんのシルキーさと力強さを兼ね備えた歌声が、心地よいコントラストを描き出す。安野さんもまた、「ふたりでひとつのイベントをつくる」ことを「特別なことじゃないですか」と喜び、心浮き立っている様子。ライブの構成に関しても、ふたりが「入れかわり立ちかわり、ひとつのライブをつくっていく」ものになるよう工夫したという。

実際に、安野さんのバラードである「夏色花火」では「夏色の花火が開く/色とりどりに浮かぶ」という歌詞と共に花火が打ち上げられるような照明の演出が、「夏祭りに二人で見上げた花火」と歌われる東山さんのバラード「月がきれい」では上空から降り注ぐような月の光の演出がなされ、ふたりの世界観がシンクロしていった。

「希世乃さんと……」「奈央ちゃんと……歩み寄りたい」「濃厚に絡み合いたい……」という独特のMCの後(けしからんもっとやれ)、突入したのはふたり揃って歌うこの日だけのスペシャルメドレー。

安野さんはマスコット「ぱくぱくモンスター」のパペットを、東山さんは可愛いペンギンのパペットをそれぞれ片手に、安野さんの「おんなじキモチ。」と東山さんの「冷めない魔法」が奏でられていく。それぞれTVアニメ 「異世界食堂2」のオープニングテーマ/エンディングテーマだ。
相手方の楽曲ではコーラスのみで参加かと思いきや、細かな歌い分けのもと、お互いがっつり歌唱で参加するというスペシャル仕様。自分のうちで暴れまわる怪獣をポップ&キュートに歌う東山さんの「真夜中の怪獣」に続くのは、整理のつかないやぶれかぶれなパッションが歌われる安野さんのラテンナンバー「世紀の祝祭」。観客も一緒にタオルをブンブンと振り回しながら、歌詞のラストで安野さんと東山さんが「「歌い、踊れ」」と煽り、メドレーは白熱したものになった。

これまでお互いのライブにも通っていたというふたり。東山さんが安野さんに「『世紀の祝祭』やりたーいってラブコールを送って」と熱っぽく経緯を明かせば、「いちオタクとして『真夜中の怪獣』が好きすぎて!」と安野さんも興奮を隠さない。
ライブは一気に終盤へ。東山さんはゴリゴリのデジタルロックチューン「グー」で可愛らしさを爆発させ、安野さんはゴージャスなロックナンバー「Wonder Shot」を繰り出し、持ち前のワイルドな歌声で魅了する。印象的だったのは、コール&レスポンスで東山さんと安野さんの各ファンクラブの会員──「わっかメイト」と「安野家。」たちを中心に、ふたりのファン同士がお互いをやさしく導いていたことだった。ぽかぽかイオンの“癒し”は、みんなでつくっていくものなのかもしれない。

締めは安野さんが大切に歌い上げた「生きる」。迷いながらも明日へ一歩ずつ踏み出す歌詞と、マーチング風のサウンドのなか、安野さんがこの日のために特別に用意されたというぽかぽかイオンのフラッグを力強く振る。

そして最後には東山さんもフラッグを手に登場、ふたりから大きなエネルギーを贈られて「第1部 Solo Solo Ion Stage」は終了した。

夜の「第2部 Poka Poka Ion Stage」冒頭では、前日の公開ゲネプロでは壇上で行われた「気合い入れ」が、ステージ袖から聞こえてきた。
「みんなに元気とビタミンを! 世界に癒しとミネラルを! ぽかぽかイー……オーン!」
バンドメンバーに続き登場したふたりの姿は、2ndシングル「リミー」のMVで着ていた衣装。東山さんは黒、安野さんは白というモノトーンで、トップスのスタイリッシュに組み合わせられたパターンが映える。

新緑のような味わいのデビューシングル「やじるし→」から第2部はスタート。「出会えたことってすごいことだと思う/ずっとわくわくしたいな」と重なり伸びゆくふたりの歌声が、会場の隅々までスーッと広がり、“ぽかぽかイオン=ふたりの心地良いハーモニー”という特徴が伝わってくる。MCでは安野さんが、「奈央ちゃんの歌に対して世界一上手くハモれる自信があった」ものの、リハを重ねるなかで「安野希世乃の歌に世界一上手にハモってくれるのも奈央ちゃんだなって」気づいたと話し、東山さんが「やだー! 締めの挨拶?(笑)」と照れる場面も。

2曲目の「きっとチェリー」は、互いに惹かれ合うふたりが、隣り合って揺れるさくらんぼに喩えられているキュートな楽曲。親指と人差し指で“さくらんぼポーズ”をつくった手が、フロアと一緒に左右に揺れる。続くゆったりとしたナンバー「まわりみち」では、「立川ステージガーデンをお散歩しちゃおー!」と、ふたりがステージを降りて客席のあいだを歩き回る驚きの演出。前日の公開ゲネプロでは伏せられていたとっておきのサプライズに誰もかれもが、ますます笑顔になっていく。

ステージに戻ったふたりが、さらにスロウに歌い出したのは「手紙の塔」。何通書いても相手に思いを届けられなかった日々を、ゆっくりと越えていこうとするバラードだ。

ステージ上で互い違いに位置していた東山さんと安野さんが、ラスサビで初めて目を合わせて歌う演出がなんともエモーショナル。こうした動きや振りのひとつひとつも、ふたりだけの「ぽかぽ会議」なる長時間の相談のなかで構成してきたという。東山さんも安野さんも声を合わせたように、これは「手づくり」のライブなのだ。

そして迎えた「リミー」。浮遊感を醸し出す変則的なリズム、一曲を通じての目まぐるしい展開、ふたりの間でコロコロと入れ替わるハーモニーの高低。前日の公開ゲネプロでも、バンドメンバーから本公演屈指の難度と明かされていた楽曲だ。全員の力を結集して演奏が進むなか、「溢れだす気持ちを/半分こにしよう」という歌詞が響き渡り、やがて「大好き」のフレーズと共に東山さんと安野さんが手をつなぎ、おでこを合わせる。「リミー(Re : me)」から、ライブのタイトルである「Re : me & you」へ──。思わず沸騰したかのような歓声が印象的だった。

最初にぽかぽかイオンとしてレコーディングしたという記念すべき一曲「僕の宝物」を経て、東山奈央=作曲、安野希世乃=作詞による初めての共作曲「Symmetry Wings」へ。それは、ぽかぽかイオンの“はじまり”の瞬間から、“現在”にまで至る軌跡に等しい。ステージの左右にわかれ、お互いを信頼しながらハーモニーを重ねるふたりの姿は、まるで大きく広がる翼のように見える。
そして「僕の宝物」以前、2020年に初めてふたりで歌声を重ねたという、安野希世乃さんの「echoes」。東山奈央さんが“Buddy’s Vocal”(Backing Vocal)として友情参加していた楽曲だが、今回は東山さんがコーラスとして安野さんを支えるだけでなく、安野さんがコーラスにもまわる。「ふたりでひとつの/Hello, buddy with me」という歌詞は、不思議とふたりの姿に重なる。そんな情感を残して、本編は終了した。

アンコールの声に応えて、バンドメンバーがはじめた演奏……。あまりのミラクルに、観客一人ひとりから「⁉」という文字が飛び出るような一瞬の間。すぐに「うおー!」という叫びと、黄色と緑色のペンライトが会場を満たしていく。
「唇の凍傷」──。TVアニメ『マクロスΔ』から誕生した5人組ユニット・ワルキューレのナンバー(作詞・作曲・編曲の椿山日南子は、ぽかぽかイオンの「僕の宝物」でも作詞・作曲・編曲を、そして「Symmetry Wings」では編曲を担当しており、深い関係性に基づく選曲だ)。大人気を博してきたワルキューレは、東山さんと安野さんが親交を深めるきっかけとなったユニットでもある。カナメ・バッカニア役の安野(イメージカラーは黄)、レイナ・プラウラー役の東山(同じくカラーは緑)が熱唱する姿は、2年前のワルキューレ集大成のライブツアー「ワルキューレ FINAL LIVE TOUR 2023 ~Last Mission~」でいったんは見納めとなった……はずだった。
伝説は、何度でも蘇るもの。この日のためだけの、ふたりの歌声で響かせる「唇の凍傷」に、会場は熱狂し、一心不乱に黄色と緑のペンライトを振り続けた。アレンジされたpokaio公式クールTシャツを着て熱唱したふたりも、「一回しかできないのが名残惜しいですね……!」(東山)、「今日会場に来てくださった方のためのスペシャル・アンコールです!」(安野)と感慨深い様子。

ライブは、いよいよ最終盤へ。ぽかぽかイオンが生まれた頃を、安野さんは「ふたりでいられればそれでよかった」と振り返り、東山さんは「私たちふたりの心穏やかになれるハーモニーをもっと世界に伝えていきたいです」と言葉を重ねた。
そうして最後に歌われたのは、「フェアリーテイルは終わらない」。メルヘン調のサウンド、揺れるピンクとブルーのペンライト、リフレインされる「Fairy tale never ends」のフレーズ、お互いの歌声に心地よく身を委ねている東山さんと安野さんの姿……そう、これがぽかぽかイオンなのだ、という光景がそこにあった。
ステージを去る間際に、「次の夢」を語り合っていたふたり。安野さんはラジオといった「ふたりが定期的に活動できる場所」や、念願の「富士山の麓でのライブ」を改めて望み、東山さんは「アルバムがつくりたいなあ……!」と未来を仰ぎ見た。
「フェアリーテイルは終わらない」では、ぽかぽかイオンのロゴが入ったウイングハートが、天井から無数にひらひらと舞い落ちていた。風に乗るかのように客席の四方へ散ったその紙片は、ぽかぽかイオンがすこし早い“冬眠”を経て、また動き出すであろう暖かい季節へと、まるで紙飛行機のごとく飛んでいくことだろう。

Text by 宮田文久
Photo by 高田真希子

■Setlist
Solo Solo Ion Stage(昼公演)

01. 群青インフィニティ
02. イマココ
03. ロケットビート
04. 夏色花火
05. 月がきれい
06. メドレー
・おんなじキモチ。
・冷めない魔法
・真夜中の怪獣
・世紀の祝祭

07. グー
08. Wonder Shot
09. 生きる

Poka Poka Ion Stage(夜公演)
01. やじるし→
02. きっとチェリー
03. まわりみち
04. 手紙の塔
05. リミー
06. 僕の宝物
07. Symmetry Wings
08. echoes
〈encore〉
09. 唇の凍傷
10. フェアリーテイルは終わらない