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新人声優・アーティストの結城萌子さんデビューシングルEP「innocent moon」インタビュー

制作陣に、川谷絵音さん(ゲスの極み乙女。)や菅野よう子さんらを迎えたデビューシングルEP「innocent moon」を8月にリリースした結城萌子さんにインタビューを敢行。楽曲に関してはもちろん、まだあまり知られていない彼女の素顔にも迫りました。
「スタートラインから半歩進んだくらいの私でも、一人の表現者として何か感じてもらえる存在になりたい」と語る彼女の展望とは――。

――声優グランプリ初登場ということで、まずは自己紹介からお願いします。

 新人声優、そしてこのたびアーティストとしてメジャーデビューしました結城萌子です! アニメや漫画であふれた家庭に育ったので、必然的に立派なオタクに成長した今の私があります(笑)。幼い頃から「このキャラクターには声をあてている人がいるはずだ!」と気になって、調べていくうちに声優という職業に興味をもちました。自分以外の人生を歩める、演じられるという仕事に憧れて、気が付いたときには声優になりたいと思っていました。私が目指し始めた頃は、声優=裏方のイメージが強くて、裏側から作品を支えるっていうところも素敵だなって。当時から活躍されていた日髙のり子さん、林原めぐみさん、高山みなみさん……皆さんに憧れて声優になりたいなと思ったんです。

――幼い頃からという話でしたが、どんなアニメが好きなんですか?

 1番は決められないんですが、『ママレード・ボーイ』『るろうに剣心』『名探偵コナン』『シャーマンキング』『ジョジョの奇妙な冒険』『テニスの王子様』『HUNTER×HUNTER』『幽☆遊☆白書』とかが好きです。それから夏になるとどうしても観たくなるアニメが映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』です。学園祭の前日が繰り返されていて、「今はいったいいつなんだ?」というシリアスな展開から始まるお話。TVシリーズとはちょっと違った雰囲気が印象的で、ファンの間でも賛否両論あったりするのですが、私はあの世界観がとても好きなんです。子供の頃、夏に感じていたわくわく感とか、なぜか寂しくなるような気持ちがぎゅっと詰まっていて……。それと、物語終盤であたるくんがラムちゃんに好意を抱いているかのようなセリフもあるんです。私はあのセリフが良かったと思うんですけど、一方で「それを言わないのが『うる星やつら』でしょ!」って勢力もあったりして。とにかくオススメの映画ですので、観たことのない方にはぜひ観てほしいですね!

――想像以上に熱く語ってもらいました(笑)。そんな結城さんが実際に声優としてお仕事をスタートしたわけですが、養成所に通い始めたのは最近のことなんですよね?

 結城萌子として活動し始めてからなので、1年前くらいからです。厳しいレッスンは覚悟していたのですが、「みんな声が出てないからスタジオの周りを走って来い!」って体育会系な先生だったので、「そっちの厳しさか!」と驚いたのを覚えています(笑)。

――声優としての初仕事は、今年の1月に公開された劇場アニメ『あした世界が終わるとしても』でした。

 最初の現場だったので、養成所の先生に「これをやったら声優業界を追放されちゃうみたいなタブーってありますか?」と聞いてから現場に行くほど不安でした(笑)。マイクワーク一つとっても驚くことばかりで、養成所での知識や技術の勉強だけでなく、もっと現場に出て経験を積まないといけないぞと危機感を抱きました。ほかにも、レッスンでは「もっと声を出して」と言われていたところを現場では「リアルなトーンで」とディレクションがあったりと、監督さんや作品によって演技の方針があって「これが正解」みたいな便利なものはないんだと肌で感じた現場でもありましたね。

――そして8月には、「innocent moon」でデビューされました。こちらの紹介もお願いします。4曲すべての作詞・作曲を川谷絵音さんがご担当されていることでも話題になりました。

 声優になる前に少し音楽活動をしていたのですが、「やっぱり夢は声優だから……!」と音楽活動を辞める決心を固めていたんです。そんな時期に声をかけてくれたのが、川谷さんでした。ただ、あまりにも住んでいる世界が違う人というイメージだったので、実際に川谷さんとお会いするまで実感が湧かなかったというのが正直な感想です(笑)。

――アレンジ陣も超豪華ですが、アニメファンとしてどう感じましたか?

 一生分の運や幸福を使い切った気分です(笑)。たとえば1曲目「さよなら私の青春」のアレンジをしてくださった菅野よう子さん。私は『カウボーイビバップ』『マクロスF』が大好きで、それこそ「星間飛行」を踊りながら歌ったりしていた私がまさか菅野さんのアレンジ曲を歌えるなんて思ってもいませんでした。初めてお会いした際には、「菅野さんって本当にいるんだ!」と感動しちゃいました……(笑)。

――その「さよなら私の青春」はストリングスの音色が印象的な一曲になっています。

 私の勝手なイメージなんですが、川谷さん楽曲はとがっていたり、攻めているイメージがあって。でも、この曲は思春期特有の女の子の気持ちが見事に言葉にされていて、そこに菅野さんの神秘的なアレンジが重なってとても繊細な楽曲に仕上がりました。残念ながら私はこんなに甘酸っぱい青春は過ごしていないんですが、私をイメージして書いてくださった楽曲だけあって、感じることが多かったです。曲中に「責任取ってよね」というフレーズがあるのですが、先ほどお話しした『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』で、ラムちゃんらしき幼い女の子が最後に「責任取ってね」というシーンがあるんです。ルーツというか、私を構成する根本に触れられたようで、運命的なものを感じました。もちろん川谷さんは私が『うる星やつら』を好きだとはご存じないので、本当に偶然なんですけど(笑)。

NEXT PAGE▶▶▶「散々花嫁」の印象的なMV

――2曲目の「散々花嫁」は先行配信されていた楽曲で、たくさんの女性に囲まれて歌っているMVが印象的でした。

 無機質な空間に動かない女性がたくさんいて、アップシチュエーションが多めのおしゃれなMVに仕上げていただきました。曲のタイトルが「散々花嫁」なので、最初はネガティブな女性が主人公なのかなと思っていたら全然そんなことはなくて。Tom-H@ckさんのアレンジが加わって、アニソン要素も感じられる楽曲になったと思います。

――歌詞を見ると「わからん」など砕けた口調も目につきます。

 「わからん」という言葉はこの曲で初めて口にした言葉だったので、どんなニュアンスで歌うのが正解なのか考えちゃいました(笑)。Tom-H@ckさんからディレクションで「夢の中にいるようなウィスパーな感じで」といただいたので、ささやくように歌わせてもらったんです。

――「幸福雨」は、ドラム&エレキサウンドが効いた攻めの楽曲。

 バックの演奏がとてもリッチな曲ですよね。特にドラムの柏倉隆史さんは、川谷さんが「めちゃくちゃうまい人だから!」と太鼓判を押していた方で、私でもわかる超絶技巧でした! 「幸福雨」はドラマ『神ちゅーんず ~鳴らせ!DTM女子~』に出演させていただいたときに作中で私が歌唱した曲でもあって。そのときのドラマーさんも「この譜面は普通に無理だと思います!(笑)」とお手上げ状態だったので、ぜひCDではドラムテクニックにも耳を傾けてほしいです。

――そして4曲目が「元恋人よ」。素敵なバラードになりましたね。

 バラードを歌った経験がなかったのですが、イメージでいうと松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」や山口百恵さんの「さよならの向う側」みたいなエモーショナルな曲を連想していました。「元恋人よ」は仮歌でいただいたときから泣きそうになるほど感動的な楽曲で……。共感してというよりも、理由の無い涙がこみ上げてくる楽曲でした。

――ミトさんのアレンジによる影響も大きいのではないでしょうか?

 たしかに、レコーディングが終わってから「何かが自分に乗り移っちゃいそうな楽曲でした」とお話ししたら、ミトさんも「僕もそういうところを意識していたので」とおっしゃっていました。レコーディング中も自分を俯瞰で見るのが大変でした。

――いずれの曲もウィスパーボイスが印象的だと感じたのですが、自身の歌声についてはどう感じられていますか?

 無いものねだりかもしれないですけど、私はパキッとした声が好きなので、コンプレックスに近いかもしれませんね。もちろんパキッとした張りのある声はこれから声優として演じる機会があると思っていますし、歌う機会もあるかもしれませんので、その日が来るのを楽しみにしています。

――タイトルを「innocent moon」に決めたのは結城さんだそうですね。

 私にとって月はパワーをもらえたり、頭の中がごちゃごちゃしているときに気持ちをリセットしてくれる大切な存在なんです。それと月って三日月とか満月とか呼び方が変わるじゃないですか? 「結城萌子」も、声優だったりアーティストだったりという変化を内包していて、人によって私を何で知ってくれるかはまちまち。そんな人たちに向けて、名前や活動は違っても、すべて一つの結城萌子という存在なんだよという意味を込めて「moon」というワードをチョイスさせてもらいました。「innocent」には、何色にも染まっていない私が歌った最初のシングルという思いが込められています。

――声優、そしてアーティストとして歩み始めた結城さんですが、今後の目標などはありますか?

 まだ駆け出しの私ですが、林原さんなど尊敬する先輩たちの軌跡をたどるのが夢で、具体的には自分が出ている作品の主題歌を歌いたいという思いがあります。スタートラインから半歩進んだくらいの私でも、一人の表現者として皆さんに何かを感じてもらえる存在になりたいです。そして、皆さんのきっかけになれるような何かを届けられる存在になれたらうれしいなと思っています。今回のアーティストデビューで一生分の運を使っちゃいましたとお話しさせてもらいましたが、今後は来世から運や幸福を借りて頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!

 

結城萌子の由来は?
結城萌子は、私の好きなものを全部詰め合わせた芸名なんです。“結城”は昔インターネットで使ってたハンドルネームです……(笑)。“萌”は単純に好きな漢字。“子”は大好きな松田聖子さんから一字もらって、結城萌子になりました。

どんな性格?
周りからはマイペースとかおっとりしてるって言われますね。たしかに昔、修学旅行に出発する日に、自分がギリギリまで寝てたくせに朝風呂を我慢できなくて。「まあ遅れる人はほかにもいるでしょ~」って思ったら集合時間に間に合わなかったのは私だけで、引率の先生と二人で東京駅まで行ったことがありました……(笑)。

 

Major Debut Single EP
「innocent moon」

品番:WPCL-13091
価格:1,500円(税抜)

<収録曲>
01「さよなら私の青春」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:菅野よう子)
02「散々花嫁」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:Tom-H@ck)
03「幸福雨」(作詞:川谷絵音、作曲:川谷絵音/ちゃんMARI、編曲:ちゃんMARI)
04「元恋人よ」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:ミト)

結城萌子デビューシングルEP「innocent moon」は、ワーナーミュージック・ジャパンより発売中。収録全曲の作詞作曲を川谷絵音が手掛け、アレンジャーには菅野よう子、Tom-H@ck、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)、ミト(クラムボン)といった面々を迎える豪華仕様。プロジェクト全体の監修は、黒崎真音や内田真礼のプロデュースで知られる冨田明宏が担当。

 

<結城萌子 Profile>
ゆうきもえこ●3月31日生まれ。ジャストプロ所属(提携:KSR)。主な出演作は、アニメ『あした世界が終わるとしても』(小野寺)、ゲーム『ファントム オブ キル 失われた千年王国編《ロストラグナロク》』(モラルタ)、『ソフィアコネクタ』(妖狐ウララ)ほか。

<結城萌子 Official Web Site>
https://yukimoeko.com/

 

取材・文/田中克佳

※『月刊 声優グランプリ』2019年11月号の掲載内容を再編集しています。

 

声優グランプリ 2019年 11月号