サイトアイコン seigura.com

【3日連続掲載】緒方恵美さんとアニメ業界関係者が業界の現状や未来について語り合う(第1夜)

ロフトグループ応援企画トークライブ「わたしたちのこれから -アニメのおしごと-」
第1夜「今までのアニメ、これからのアニメ。作り続けるために」

アニメ放送の延期やイベントの中止など、新型コロナウイルスの影響により大打撃を受けているアニメ業界。今後、アニメ業界はどうなっていくのか――。緒方恵美さんと第一線で活躍するアニメ業界関係者の方々が、業界の現状や未来について語り合うオンライントークイベント「わたしたちのこれから-アニメのおしごと-」が、7月31日から3週に渡って開催された。今回は、アニメーションプロデューサーの方々をゲストに迎えて行われた第1夜の模様をお伝えしよう。

<ゲスト>アニメーションプロデューサーの方々
・堀川憲司さん(P.A.Works ヨミ:ピーエーワークス)
・舛本和也さん(TRIGGER ヨミ:トリガー)
・比嘉勇二さん(Larche ヨミ:ラルケ)

新人教育の場がなくなってしまうかもしれないという怖さ

堀川さんが代表取締役を務めるP.A.Worksは富山県に本社があり、大都市圏ほどの影響はなかったものの「リモートでの作業は、人を育てる環境をなくしてしまう」と危惧していたとおり、自社で運営している養成所に関しては、一度に教える人数を半分にして講習を行わざるを得ない状況に陥ってしまったという。

これには舛本さんも「新人教育は大変。時間をかけてやっていくしかない状態」と同調。緒方さんも「現場で先輩声優の演技を見ながら学ぶことができなくなってしまっているのは怖いです」と声優の立場からコメントした。また、大勢での「ガヤ録り」もできなくなってしまっているのが現状で、「新人声優にとっては、アピールの場にもなるので残念」と儀武さんが口惜しそうに語る。

なお、舛本さんによれば、新型コロナウイルスが中国で流行り始めたタイミング(1月後半~2月)と時を同じくして中国での作業がストップしてしまったそうで、その後、4月の緊急事態宣言を受けて急速にテレワーク化が進んだとのことだ。ちなみにネット環境さえ整っていれば、通常はすぐにテレワークに移行できるが、クリエイターともなると専用の機材が必要なため、それらを各クリエイターの自宅へ運ぶのが大変だったという。

通常のプロデューサー業と並行してテレワークができる人とできない人の選別も担当したという比嘉さんは、「Larcheの社長はデジタル志向が強かったので、数年前からテレワークの土壌はできていました」ということだが、それでも苦労は絶えないそうだ。

ピンチをチャンスに変えて

新型コロナウイルスはイベントにも暗い影を落としている。一時期に比べるとイベントは少しずつ増えてきてはいるものの、あくまでも小規模なものに限られており、コロナ前の状況には遠く及ばないのが現状。また、舛本さんから「海外イベントが軒並み中止になってしまった」との報告があったとおり、緒方さんも、自身が出演予定だったイベントが中止になってしまうという憂き目を見ている。

また、緊急事態宣言以降はリアルイベントがオンラインイベントに切り替わるパターンが急増しているが、Larcheが制作している『IDOLY PRIDE』(2021年冬放送予定)について、「アニメ情報の発表をどのようにするか話し合いました」と自身の経験談を交えながら比嘉さんが語ってくれたように、新作や新情報をイベント形式で発表することも多い昨今。定石通りネットや紙媒体を通じて情報発信することは引き続き可能だが、さらなるファンの盛り上がりやSNS等での拡散を狙おうと思えば、リアルイベントの開催は非常に重要であり、現在はその機会すら失われてしまっているという八方塞がりの状況といえるだろう。

暗い話ばかりになってしまったが、そのなかでも希望はある。アニメ業界の今後について、比嘉さんは「デジタル化が進むと思います。ベテランの方を含めて、このコロナ禍で動きが早まった気がするんですよ」とコメント。堀川さんが「これを機にスタッフを説得し、変えるチャンスだと思うようにしています。この危機感を推進力に変えていきたいですね」と続ければ、舛本さんは「新しいツールなど、若者から学ぶことがたくさんあると感じましたので、これからも活かせるところは活かしていきたいです」と、登壇者全員がピンチを前向きに捉えているのが非常に印象的だった。

制作作業の遅れに伴って2020年春以降に予定されていたアニメの多くが放送延期となったことは記憶に新しいが、みんなが一丸となってこの危機的状況を脱したとき、きっと新たなる扉が開かれる――。そう思わせてくれる第1夜であった。

ロフトグループ応援企画トークライブ「わたしたちのこれから -アニメのおしごと-」
<配信日時>
7月31日 19:30-21:00
<配信場所>
渋谷ロフト9(無観客有料配信)
<MC>
緒方恵美さん、構成作家・アシスタント:儀武ゆう子さん
<企画・制作>
ブリーズアーツ、LOFT9 Shibuya

第2夜は9月5日(土)に掲載いたします。