【声グラ限定】高野麻里佳さんの2ndシングル「New story」は爽やかで希望が感じられる曲

seigura.com_os

3年前

2021年2月にソロアーティストデビューを果たした高野麻里佳さんが、2ndシングル「New story」を発表！　初となるタイアップへの思いや制作秘話など、言葉の一つひとつに高野さんのこだわりがあふれています。

“希望”が見えるアニメに楽曲で寄り添いたかった

――デビューから半年足らずで2枚目のシングルを発表した高野さん。しかも、今回のシングル表題曲『New story』は、TVアニメ『精霊幻想記』のオープニングテーマなんですよね。
そうなんです。2ndシングルをリリースしますというタイミングでタイアップ情報も解禁されたので、ファンの皆さんからは期待の声をたくさんいただきました。喜んでいただけたんだと思うと私もうれしいです。

――楽曲の制作には、どのように関わりましたか？
私は、曲の選考（コンペ）から参加させていただきました。候補となったデモ曲の中には、『精霊幻想記』の重厚感を表現したクールでロックな曲、異世界らしいポップな曲などいろいろあって。最初は『精霊幻想記』の根幹にある“重さ”を表現できる曲のほうがいいんじゃないかという考えではありましたね。

――つまり、その時点では「New story」は少しイメージとは違った。
はい。でもアニメのシナリオを読んだとき、最終話に向かって歩みを進めていく“希望”が見える作品なんだなと思ったんです。であれば、楽曲も最終的にハッピーに向かっていくほうがいいだろうなと思い、爽やかで希望も感じられる「New story」を選びました。アニメの監督（ヤマサキオサム氏）の意見とも合致したので、これだと。

――たしかに、聴いてみるとメロディからも歌詞からも、キラキラとした希望を感じます。
そうなんです。2サビの後半にある＜君へのコンパスは違わず私の「前」になる＞という歌詞は、最初「どういう意味だろう？」と思っていたんですが、作詞をされたhisakuniさんに聞いたら「どんなに道に迷っても、進行方向である前は君の居る場所だという意味です」と教えてくださったんです。これは誰かを思う曲なんだな、なんてあったかい気持ちになれる歌詞なんだろうって思って、この曲をより好きになりました。

――「孤独」や「不安」など、ワードだけ拾っていくと少し切ない印象を受けるところもありつつ。
アニメの主人公が最初にいる位置は、たしかに孤独で寂しいと思うんです。だけど、そこから立ち上がっていく姿にリアリティや希望がある。誰にとっても前向きになれる楽曲だと思います。

――レコーディングはいかがでしたか？
今回はタイアップなので、私らしさよりもアニメを考えた仕上がりにこだわりました。1stシングルのときは私らしさを追求して明るくてポップなトーンを目指したんですけど、今回は明るさがあってはコンセプトがブレてしまうので、落とすところでしっかりと影を落とすように歌っています。

――“影を落とすように”というと、具体的には？
例えばなんですけど……孤独感や冷たい温度といった状況をイメージしながら歌いました。イメージするだけで声に表れるんじゃないかなと。ある意味役作りに近いですね。

――繊細にレコーディングされたんですね。では、MVについても聞かせてください。こちらも、制作にはどのように関わったのでしょうか？
今回はMVを撮りつつジャケットやアー写も撮っていくという流れだったので、衣装は最初にしっかりと意見を交わして固めました。『精霊幻想記』のキーワードの一つに“お花”があるからどこかに入れようと思っていたんですけど、ただ単に取り入れるだけではポップになりすぎてしまうし、完成されすぎた衣装になってしまう。今回の場合、それではいけなかったんです。必要なのは、道端に咲いている花を「キレイだな」と思って手にとって、自分の服に移すような感じ。

――最初から服に飾り付けられているものではなく、さり気なさというか。
そうですね。その絶妙な手作り感が出る衣装にしたいと思っていました。それがMVだけでなくジャケットやアー写からも表れてくれたら、アニメの雰囲気を踏襲した素敵な雰囲気を出せるんじゃないかなって。なので、ジャケットにも写っているこのお花にはすごくこだわっています。

――満足度も高そうですね。映像自体はいかがですか？
真っ白の部屋にTシャツとジーパン姿の私が居るという“何もない”シーンから始まり、少しずつ大切なものを得ていくというストーリーになっています。（前述の）お花の付いた衣装には途中から変わるんですけど、その背景には青空と虹色のカーテンをなびかせてもらって、自分を彩っていく明るさが視覚的にも伝えられるんじゃないかなと思っています。

カップリングはこのシングルのエンディング曲的な立ち位置

――カップリング曲「さよなら星空」は、転調が独特な楽曲ですね。
2ndシングルを作る段階で、表題の「New story」がタイアップ曲でオープニングテーマと決まっていたので、カップリングはエンディングテーマをイメージした曲にしたいと思っていたんです。アニメタイアップだと、きっとアニメが好きな方に手にとっていただく機会も多いじゃないですか。その方たちが「New story」の流れでカップリング曲を聴いたとき、アニメのイメージとかけ離れすぎないようにしたかったんです。そこで選んだのが「さよなら星空」でした。実は、この曲も表題の候補に入っていたんですよ。

――なんと、そうだったんですね。
『精霊幻想記』の雰囲気をしっかりと捉えたとっても素敵な曲だと思いつつも、「どちらかというとエンディングテーマ向きの楽曲かも」と思ったんです。でも、このまま使われないのはもったいない楽曲だったので、それならカップリング曲として、このシングルCDのエンディングテーマのような立ち位置にできたらと思ったんです。

――シングル1枚の中に、高野さんなりの起承転結を作り上げたと。
そうですね。「New story」が、孤独だった主人公が大切な人と出会い、その人と前に進んでいくという過程を見せる曲だとしたら、「さよなら星空」はその過程を経て結果としてさよならすることになったけど、笑顔でいようね――という結末につながるイメージで、そこはかとなく後を引く寂しさがあるんです。そこがエンディングテーマっぽいところでもあって。

――デビューシングルでも、表題曲とカップリング曲のバランスを考えて選曲されていたかと思います。高野さんがCDを出す上で、そこも重要なポイントなのですね。
はい。「歌いたい曲を選ぶ」という決め方もあると思いますが、私はCD全体のコンセプトを考えて、流れで聴いたときに皆さんのお耳をどんな状態にしたいか、ということを大切にしています。

――「さよなら星空」につてはレコーディングはいかがでしたか？
この曲には、＜さよなら星＞という歌詞が3回出てくるんです。声優としては、同じセリフが3回出てくると「絶対に同じニュアンスで言わないぞ！」という声優魂みたいなものがうずうずしてしまうので（笑）、この歌詞に関してもニュアンスを変えて歌っています。皆さんにもその違いを感じていただけたらうれしいですね。

――転調が多いですが、難しくはなかったですか？
難しかったです……が、やはりそれ以上に魅力的な曲なので、「難しい！」より「もっと魅力的な曲にしたいのに！」という悔しさのほうが強かったですね。レコーディングでは、納得いくまで何パターンも録っていただきました。

――こちらも表題曲同様満足度が高そうですね。
この曲、インストもすごく好きなんです。ハモリも私の声で録っているんですけど、ウィスパーで歌ったコーラス部分がインストだと強く聞こえて、ハモリのメロディラインに温かさを感じられました。インストでも、エモーショナルな気持ちになってもらえるんじゃないかなと思います。

――本当にこだわって作られたのだなと感じます。すでにソロ活動での表現を楽しんでいる高野さんですが、今後のソロ活動でやってみたいことはありますか？
私自身、けっこうのんびりとしたタイプの人間なので、耳心地の柔らかい曲を歌ってみるのがいいんじゃないかなと思っています。声優らしく、セリフっぽく歌詞を歌うポエトリーっぽい曲とか。音を極限まで減らして、自分の声だけで楽曲を作るのも面白そうです。

――面白そうですね！　そう思うきっかけがあったのでしょうか？
イヤホンズで活動をしているときに三浦康嗣さんに楽曲を提供していただいてお話する機会があったのですが、三浦さんは人の声をサンプリングしてそれをドラムのようなアタック音に変えたり、ギターのようなメロディに変えたりしていると言っていたんです。それを知った瞬間、「声も楽器の一つなんだ！」と気づかされたんです。だからいずれは私の声だけで構成された曲や、声に重きを置いた曲を作れたらいいなと。「これは私の『た』が基になっているんです！」と、リリースイベントで説明できたら面白そうですよね（笑）。

■プロフィール
こうのまりか●2月22日生まれ。青二プロダクション所属。主な出演作は『エデン』（サラ）、『デジモンアドベンチャー：』（太刀川ミミ）、『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』（伊吹咲愛莉）、『SCARLET NEXUS』（ツグミ・ナザール）、『ウマ娘プリティダービー』（サイレンススズカ）、ほか。

■クレジット
取材・文／松本まゆげ