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【インタビュー】「ボテロ展 ふくよかな魔法」は伊東健人さんの音声ガイドで作品をより深く楽しめる

ボテロ展伊東健人
日本国内では実に26年ぶりとなる大規模展が開催中!

7月3日(日)まで、Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)でコロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロの「ボテロ展 ふくよかな魔法」が開催中だ。今年90歳になるボテロ本人が監修した本展示は、初期から近年までの油彩ならびに水彩・素描作品など全70点で構成されている。

ボテロの絵は、人物、動物だけでなく、果物や楽器、布までも“ふくよか”に描かれていることが特徴的。官能、ユーモアやアイロニー……複雑な意味をもつ、このふくよかな魔法について、音声ガイドで伊東健人さんが優しく案内する。伊東さん自身もボテロ展を見ながら、さまざまな想像を膨らませたそうだ。

■伊東健人さんインタビュー

──美術展の音声ガイドを務めるのは初めてとうかがいました。伊東さんご自身はプライベートで美術館や展覧会どに足を運ばれることはありますか?
よく行くほうだと思います。ただ、「行った」ということはあまり言ってないんですけど(笑)。最近はモネの展示を見に行きました。今はインターネットで検索したらすぐに絵画を見ることができますが、実物を見ると、画面上ではわからない絵の具のちょっとした凸凹のようなものがあったり、角度を変えて光の反射を楽しむことができたり。美術館だからこそ味わえることがたくさんあって、普段とは違った刺激をもらえる場所だなと感じています。それを今回のボテロ展でも感じました。

──絵の凹凸を間近で見ることで、実物ならではの迫力を感じます。
そうですね。特にボテロさんの絵は迫力のある大作が多くて。ボリュームが大きいので、実物を見るとそれを如実に分かってもらえるんじゃないかなと。忘れられない絵が多いと思います。

──音声ガイドを務めるうえでいちばん意識されたことは?
ナレーションは“情報の伝達”がいちばん重要な部分ですので、ボテロさんの思想をわかりやすく伝えるということを強く意識しました。絵画は文字で表されるものではないので、それ以外の情報……例えば、なぜ人物が概ね無表情なのか、なぜふくよかなのか……。ボテロ展をご覧になった方の誰もが疑問に思うことに対する答えや、「こういう見方もあるよ」という提案をしているのが、今回の音声ガイドです。ボテロさん自身の言葉を引用したり、僕がボテロさんになりきって話したりもしています。聞きながら作品を見ていただくことで、「そういうことだったのか!」とスッキリすることも多いと思います。なかには少し怖さを感じるような絵もあるかもしれませんが、その裏に秘められたボテロさんの考えを知ると、恐怖が興味に変わると思いますので、ぜひ音声ガイドも楽しんでください。

──恐怖が興味に変わるというのは、音声ガイドを聞きながら作品を見る醍醐味ですね。
自分で言うのもなんですが(笑)、あらためてナレーションって良いものだなと思いました。ただ、音声ガイドで話していることが100パーセント正解の解釈かと言われるとまた違うようにも思います。歴史的な背景など、展示内でも補足されていることも多いので、さまざまな情報を見ながら想像を膨らませてください。

──伊東さんは特に《コロンビアの聖母》がお好きだそうですね。涙を流す聖母、小さなコロンビア国旗を持ったイエスを描いた作品です。
展示を見ていくなかで特に心に残った作品でした。その理由を考えてみたのですが、一つはこの作品の象徴でもある涙にあります。今回展示されていた《泣く女》や《キリスト》にも涙が描かれていますが、ボテロさんの描く液体の表現がすごく好きなんです。それ以外でも、なぜ天使が飛んでいるのか、なぜ緑の布を掲げているのか、コロンビア国旗がどうしてこんなにも小さいのか……そういったことを考えるのも楽しかったです。分かりやすいテーマがありながらも、考えさせられる隙間があるのが面白いなと思いました。色の配色も魅力的です。

──ガイドではボテロの人生も語られていますが、そこから新しく得たものや発見はありましたか?
たくさんありました。大きなくくりでいうと、美術もエンターテインメントの一つなんだということ。ボテロさんの表情の描き方や考え方は、僕らの仕事にもつながるところがあるように感じています。

──では伊東さん自身が「もっとふくよかにしたい」と思ったこと・モノはありますか?
ズバり言うと“心”ですかね。自分の心でもあり、世の中の人たちの心でもあり……。コロナ禍になってから、ふくよかじゃないことが多いなと感じることが増えました。特にエンターテインメント業界は、ここ数年「不要不急」と何かとやり玉にあげられることが多いですが、人の心を豊かにするのが、娯楽の意味だと僕は思っていて、そういった思いもボテロ作品のふくよかさに内包されているんじゃないかなと。あくまで僕の解釈ですが(笑)。

──ボテロ展は7月3日(日)まで開催されています。これからご覧になる方にはどんなところを楽しんでもらいたいですか?
初期の作品から2020年の最新作《モナ・リザの横顔》までが展示されているので、ボテロさんの進化の歴史、絵の変化など、見どころがたくさんあります。作品はテーマごとに飾られているので、美術展にあまり行ったことがないという方でもすっと入ってくるんじゃないかなと。ぜひ音声ガイドと合わせて、90歳を超えてもいまだ現役で活躍されているボテロさんのふくよかな魔法を楽しんでいただけたらと思います。

■「ボテロ展 ふくよかな魔法」開催概要

南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロの生誕90年を記念した「ボテロ展 ふくよかな魔法」。日本国内では26年ぶりの展覧会となる。本展は、ボテロ本人の監修のもと、貴重な初期作品から近年の作品まで、油彩画、水彩画、素描など70点を紹介。ラテン・アメリカの人々の日常や信仰、サーカスなどを題材にした作品から、その名を一躍有名にした古典の名画を題材とした作品まで、いまなお精力的に制作を続ける、ボテロの画業をたどる。

【会期】2022年4月29日(金・祝)~7月3 日(日)
【開館時間】10:00~18:00(入館は17:30まで)、毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる場合がございます。
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急百貨店本店横)
※状況により、会期・入場方法等が変更となる場合がございます。
【入館料】一般1,800円、大学・高校生1,100円、中学・小学生800円(いずれも当日券)
※学生券をお求めの場合は、学生証のご提示をお願いいたします(小学生は除く)。
※障がい者手帳のご提示で、ご本人様とお付き添いの方1名様は半額となります(一般900円、大学・高校生550円、中学・小学生400円)。当日窓口にてご購入ください。
※未就学児は入館無料。
※本展では、会期中のすべての土日は【オンラインによる入館日時予約制】ですが、当日予約枠に余裕があれば、予約なしでもご入場いただけます。

■音声ガイド概要
本展では、展示室入口で専用ガイド機をレンタルしていただく「会場レンタル版」と、展覧会会期中ご自宅でもお楽しみいただける「アプリ配信版(聴く美術)」をご用意しています。

【会場レンタル版】貸出料金お一人様 1 台 650 円(税込)
【アプリ配信版】「聴く美術」(iOS/Android)販売価格730 円(税込)
※配信期間:2022年4月29日(金・祝)~12月11日(日)予定
※ご自身のスマートフォンやタブレットにアプリをダウンロードしてご利用いただけます。
※展示室内でアプリを利用される場合は、ヘッドホンまたはイヤホンが必要です。
※展示室内は通信環境が不安定です。安定した場所でダウンロードをお願いします。
※会場レンタル版とは、BGM が一部異なります。

▼「ボテロ展」公式HP:https://www.ntv.co.jp/botero2022/