レモン色の髪をした男子高校生・三浦界と、彼に出会い少しずつ明るくなっていく女子・石森羽花を中心とした甘くて爽やかな高校生活を描く、『ハニーレモンソーダ』。2016年から『りぼん』で連載され人気が高まっていった本作は、2021年に実写映画化。そして、2022年9月には、朗読劇が開催されることになった。豪華声優陣52人が日替わりで出演し、その日、その公演だけの界と羽花を堪能できる。
そこで今回は、キャストを代表し岡本信彦さんと大橋彩香さんにインタビューを実施。キャラクターの印象や演技プランなどを語ってもらった。
岡本信彦
「せっかくブリーチしているので、金髪で臨みます」
――作品の印象を教えてください。
岡本 主人公の女の子がナイーブだなという印象がありました。そんな彼女に対して、界くんがカッコいいことを言うという、王道展開がいいなと思っています。原作を読んでいると羽花ちゃんのセリフがあった次のページの見開きで、界くんのセリフが来る、というイメージですね。そういうテンポ感も素敵な作品です。
――当然といえば当然ですけれど、界のカッコよさも際立っている作品です。
岡本 界くんって、クール系で一本筋の入ったカッコいい男の子ですよね。最初は見た目の印象も相まってぶっきらぼうで不愛想な印象が強いんですけど、踏み込めば踏み込むほど味が出るタイプなのかなと思います。
――とすると、そんな界に共感したポイントはありますか?
岡本 僕の場合、共感は難しいですね! とにかくカッコいい人というイメージなので、どちらかというと離れた存在というか。
――完璧な感じがしますよね。
岡本 そうなんですよ。まさに少女漫画に出てきてほしい男の子です。しかも、“自分だけ”とか“仲間たちだけ”に心を開いている感じも、特別感があっていいですよね。高校時代の僕の交友関係はどちらかというと浅く広くだったので、そういう意味でも彼と僕は真逆に近い気がします。考えるほど理想的な男の子で、男としてこうありたいとは思うんだけれど、難しい……みたいな。確固たる意志とプライド、そしてかっこいい顔がないと難しいと思います。
――では、今の段階ではどんなふうに演じようと考えていますか?
岡本 物語の最初から描かれると聞いているので、心を閉ざしている界くんが少しずつ羽花ちゃんとの心の距離を詰めていく様子をちゃんと表現したいと思っています。羽花ちゃんを助ける描写も含めて、どう変化をつけていこうかなという感じではあるんですけどね。でも……まあ、生ものなので。ご一緒する方々と掛け合ってみてからかなと思っています。
――今回は、52名もの声優さんが日替わりで出演しますからね。
岡本 このスケジュールの長さもすごいですよね。特に、月曜から金曜も公演があるのがすごい。こういう朗読劇で、土日以外もあるというのはすごい試みだなと思いました。しかも、土曜日も日曜日も、キャストが固定というわけではないんですよね。
――岡本さん以外の界役の声優陣は、全員が1公演のみの出演となっています。
岡本 びっくりしました。これだけ公演数があると全通はハードルが高そうですけど、土曜と日曜にはそれぞれ3種類の界くんが見れると思うと面白そうです。『ハニーレモンソーダ』が好きな人は、自分を好きな界くんや羽花ちゃんを見られるのもいい試みだと思いました。
――岡本さんご自身は、千秋楽の2公演に出演されます。しかも、界以外のキャストは違うんですよね。
岡本 みたいですね。だから、全然違う感じになる気がしています。まだちゃんと想像はできないですけど、男性でいうと関俊彦さんと東地宏樹さんというベテランの方と一緒に登壇できるのはすごくうれしい経験になりそうです。羽花ちゃん役でいうと……上田(麗奈)ちゃんとはあんまり絡んだことがないんですけど、高橋(李依)ちゃんとはよくレギュラーでご一緒させてもらっているんです。ただ、高橋ちゃんが“どのタイプ”で来るのかがサッパリわからない。いろんなボイスを持っているイメージがあるので、掛け合うのが楽しみですね。
――また、朗読劇だからこそ意識していることや、こだわりを教えてください。
岡本 アニメだと映像という情報がありますけど、朗読劇などの音声ものの場合、情報が音だけなので何を言っているかわからなくなるとけっこうきついんです。なので、若干明瞭になるよう意識していますね。界くんは、序盤ボソボソ喋ると思うので、ちょっと不明瞭になりそう。息もボフボフ言わないかなと心配なんですけど、感情表現とか、雰囲気で行けるところははっきりと聞こえなくてもいいと思うんです。そういったさじ加減は、ちょっとテクニカルな感じになるのかなと思います。
――では、朗読劇のどんなところに楽しさを感じますか?
岡本 生感です。朗読劇は、ディレクターさんの演出ももちろんあるんですけど、舞台に立ってしまえばあとはこちらのやり方次第、みたいなところがあるんです。舞台に近しい、というか。
――なるほど。アニメの場合は録ったものを調整・加工したりしますけど、朗読劇は違いますもんね。
岡本 舞台は舞台ですごく楽しいと思うんですけど、本を持ちながら動かずに、声だけの情報でやる勝負するっていうスタイルも楽しいなと感じます。
――ちなみに、本作への出演が発表された際、ブログに「金髪を保って置かなければ」といった文面を投稿していましたね。
岡本 あ、そうでしたね。『ハニーレモンソーダ』の由来は、界くんの頭の色じゃないですか。となると、やっぱり本番にピンク色の髪で臨んだらおかしいよなって思ったんですよ。「ブリーチしておいて……!」ってなりそうで(笑)。朗読劇に視覚情報はないとはいえ、そこには矛盾がないほうがいい気がして、そう書きました。あくまで僕はそうするというだけで、ほかの役者さんはそれぞれの都合によると思うんですけどね。
――では最後に、中高生時代のキラキラした思い出を伺いたいです。
岡本 そうだなぁ……。応援団の練習後に、みんなでご飯を食べた思い出はキラキラしている“ふう”な気がしますけど……実際、めっちゃキラキラしていたかと言われたら、そうでもない気がするんですよね(笑)。一応、行事には陰キャなりに頑張って参加していたんです。内申のために。なので、体育祭も文化祭もいろいろとやっていたんですけど、いい思い出ってそんなにない……。仕事に片足突っ込んでいるような状態でもありましたし。
――学校生活以外にも、頑張らなければいけないことがあったんですね。
岡本 養成所にも通いつつ、仕事とかもちょっとやっている頃でした。そう考えると、辛い思い出が浮かんできちゃいますね。高校2年生のときに「劇をやるぞ」となって。僕としては普通に芝居をしたつもりなんですけど、それを見たクラスの人達にいじられたんですよ。
――芝居経験があるばかりに。
岡本 言い方含めて、めちゃくちゃいじられました。だからわざと棒読みでセリフを言うみたいなことをしていましたね。そんな思い出が浮かんでしまいます(苦笑)。
大橋彩香
「羽花ちゃんの“グラデーション”をしっかり見せたい」
――本作に最初に触れたときの印象を教えてください。
大橋 実は『ハニーレモンソーダ』は、以前から友達におすすめされていた作品なんです。でも巻数が多かったので、読みたくてもすぐに読めずにいたんですよ。そんなとき、この朗読劇に「出るかもしれない」と聞いたので、読んでみたら……1日でサクサク読み進められるくらい面白かったです。どんどん次が読みたくなるし、イケメンがたくさんいるし!
――では、そのあたりが面白いと感じるポイントでもあったんですね。
大橋 そうですね! それにみんな性格がいいし、みんなカッコいいし、女の子はかわいいし。視覚的にもめちゃめちゃ楽しめました。
――そんななかで、羽花の印象はいかがでしたか?
大橋 最初はどんくさくて地味な印象なんですけど、もともと芯はある女の子で、ちゃんと明るいんです。界くんと出会ってからは、界くんにも周りの友達にも影響を受けてどんどん勇気を出せるようになっていって、立ち向かう姿も見せるようになります。そんなふうに変わっていく姿がすごく素敵だなと思いました。
――共感できる部分はありましたか?
大橋 気にしいで、自己肯定感が低いところは似ているのかなと思います。似ているからこそ、物語の中で変わっていく姿に勇気をもらえました。
――現状では、どんなふうに演じようと思っていますか?
大橋 内にこもっている羽花ちゃんが、界くんと出会いいろんな世界を知って、少しずつ明るくなっていき、言いたいことをしっかり言えるようになっていくという変化を、グラデーションで見せたいなと思っています。特に、最初のほうをどれだけおとなしく、柔らかくできるかが頑張りどころですね。あと……このラインナップ(キャスト表)を見ると、私の声が一番柔らかくなさそうなんです。だからこそ逆に、芯の強さを出せたらいいなと思います。
――また、今回は朗読劇です。アニメや吹き替えとは違う、朗読劇ならではのこだわりを教えてください。
大橋 朗読劇には絵がなく声だけで伝えなければいけないので、情景が浮かぶように演じようと心がけています。あと、アニメや吹き替えは尺やタイミングが全部決まっていますけど、朗読劇は自由。「どういうテンポでいこうか」「どのくらいの間合いにしようか」と、考えながらやるところも独特だなと思いますね。それに、撮り直しが無く全部一発勝負なので、そういう生感や緊張感を味わいながらやるのもすごく好きです。
――同じ声の芝居でも、演者のみなさんにとっては大きな違いがあるんですね。
大橋 最近は特に、アニメの収録で全員での掛け合いができないじゃないですか。場合によっては、一人ぼっちで録ることもあって「寂しいな」と感じてしまうくらいなんですけど、朗読劇は、登場人物が全員揃ってる状態で、みんなで一緒に掛け合いができるんです。その環境には最近すごくありがたみを感じていますね。朗読劇に出させてもらうたび、「みんなでできて嬉しいなあ」としみじみ思っています。
――最後に、界によってキラキラした学園生活を送るようになる羽花にちなみ、大橋さんの中高生時代のキラキラした思い出を教えてください。
大橋 私、すごい陰キャだったんですけど、陰キャなりに頑張って陽キャの子についていこうとするタイプの人間だったんですよ。体育祭のときはチアリーダーに参加してみたりしたし、文化祭の時もみんなでワイワイ買い出しに行ったりとかしていたし。そういう……「陰キャけど陽キャみたいな気持ちを味わっている時」が、一番キラキラしていたかなと思います。陽キャのみなさんって、ナチュラルに明るいじゃないですか。私はそんなふうにはできないから、エネルギー吸い取られるだけというときもあって、辛い瞬間もあったんですけど、キラキラした思い出を少しわけていただけてよかったなと思います。
――相性云々はあるけれど、いい思い出にはなっていると。
大橋 そうですね! 経験できてよかったなって思います。頑張ってよかったなって。
パンフレット撮影風景!
Information
アニマックス朗読劇『ハニーレモンソーダ』は2022年9月3日(土)~11日(日)までヒューリックホール東京で開催。今をときめく総勢52名の声優陣が三浦界、石森羽花、遠藤あゆみ、石森堅実を日替わりで演じる。チケットは好評発売中。詳細は公式HPをチェック。
https://www.animax.co.jp/animaxreading
取材・文/松本まゆげ