池田秀一さん

誰もが知るあの人気作品に出演している超豪華ベテラン声優50名のインタビューを1冊にまとめた『声優道 名優50人が伝えたい仕事の心得と生きるヒント』
大人気アニメのオーディションやアフレコ秘話、共演者とのエピソードなど、ここでしか聞けない貴重なお話も満載。声優戦国時代を生き抜いてきた名優50人に「選ばれる」仕事術、そして「声で生きていく」道の厳しさを語っていただいたこの1冊は、すべての声優ファン&声優志望者必読のバイブルとなっている。

そんな『声優道 名優50人が伝えたい仕事の心得と生きるヒント』に掲載されているインタビューを少しだけお見せしちゃいます!

それぞれが“声優”という仕事を始めたキッカケとは……。

 

『シャア』を演じ続ける責任

作品の影響力の大きさで演じることの面白さを知る
▼TVドラマで感じた挫折…… 洋画の吹き替えから声優への道を歩き出す
▼「二度とアニメはやらない」はずが…… シャアというキャラクターとの出会い
▼ライバル心をもって切磋琢磨した現場 徹ちゃんとは当時あまり口をきかなかった

【プロフィール】
池田秀一(いけだ しゅういち)
12月2日生まれ。俳協所属。主な出演作は『機動戦士ガンダム』(シャア・アズナブル)、『機動戦士Zガンダム』(クワトロ・バジーナ)、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(ギルバート・デュランダル)、『機動戦士ガンダムUC』(フル・フロンタル)、『ONE PIECE』(シャンクス)、『HUNTER×HUNTER』(カイト)、映画『エデンの東』、『理由なき反抗』(ジェームズ・ディーン)、大河ドラマ『花燃ゆ』(語り)ほか多数。

作品の影響力の大きさで演じることの面白さを知る

 芸能界に入ったきっかけは、最初は遊び半分みたいなものでした。児童劇団に入っている友達が近所にいて、「今度その劇団で募集しているから君も受けてみない?」と誘われてちょっと行ってみたら受かってしまったという感じで。俳優になりたいとも特に思っていなくて、映画を見てチャンバラごっこをして遊んでいるという、その延長くらいの感覚ですよね。それに受かったといっても、落ちる人はあまりいなかったんじゃないかと思いますよ(笑)。
 そうやって劇団に入ったのが昭和33年(1958年)の10月で、11月にはもう現場に出ていました。その頃はテレビの創生期で、民放は日本テレビとTBSがあったくらい。フジテレビもやっとできたかどうかという時期ですね。だからテレビというより、ラジオがまだ全盛期の頃でした。最初のテレビ出演は僕が小学校3年生のとき……といってもガヤみたいなもので、「長屋で子供が泣いている」というシーンのために呼ばれました。そのときは何が悲しいのかわからなくて、全然泣けなかったというのをすごく覚えています。それでディレクターがどうしたかというと「泣けないか。じゃあ、泣かなくていいや。横で遊んでいて」と、あっさりシーンを変えてしまった(笑)。そんなに重要な役じゃないし、どうしても泣いてなきゃいけないというものっでもなかったんでしょうね。そういう意味ではゆったりとした、いい時代でした。

中学生になるとNHKの『次郎物語』というドラマを2年間やらせていただいて、映画では『路傍の石』という作品を撮りました。その頃からですね。ちょっとずつ真剣に「俳優を続けてみようかな」と思うようになったのは。自分なりに仕事の面白さを感じ始めた時期でもありました。たとえば『次郎物語』の次郎を演じていると、「次郎ちゃんは大変ね」みたいな手紙が来るわけですよ。ドラマの中で苦労していると「学費が足りないのなら」といって現金が送られてきたりする。そういうことがあると、僕たちの仕事というか、演じるということは影響力があるものなんだって、ガキなりに何か感じるようになるんですよね。それで生意気にも「この仕事はバカにしちゃいけないぞ」「もっとちゃんとやらないと」と思うようになりました。
映画も面白かったですね。うちの劇団は基本的に学校を休んで仕事をするのがダメだったので、『路傍の石』は、「夏休みの間に撮りますから」ということで撮影が始まったんです。まあ、だいたい1カ月ですよね。夏休みだから。でも結局、2カ月半くらいかかったんですよ。約束が違う(笑)。撮影の間は、僕は映画が初めてなものですから、とにかく「すごいなあ」と感心してばかりでした。職人の世界ですよね。当時の映画界の人たちは「テレビは紙芝居だ」と言っていましたが、それもわかるなというくらい、皆さんがこだわりをもっていて。また、スタジオの何ともいえない静寂の中に響きわたる「カチン!」というカチンコの音もよくて、あれはちょっとやみつきになりそうでした。そんななかで、僕が主役だったから、皆が待ってくれるんですよね。僕のアップ、ワンショットを撮るのに、気持ちができるまで監督も待ってくれる。でも、僕は中学生だから気持ちの作り方なんてわからないし、作ろうともしていない(笑)。今思えば、周りの大人を見て「やっているフリしなきゃなあ」なんて思っていたんでしょうね。

その頃は「声優さん」という言葉もなかったんじゃないですかね? 声の仕事もまだアニメというよりは洋画のイメージが強くて、僕も当時は『ララミー牧場』とか『スーパーマン』とか観ていました。でも、全然それには興味がなくて、別世界のものだなと思っていましたね。

 

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