【声優道】藤原啓治さん

芝居のもつ力……
演じることの魅力とは

芝居をする――演じるというのは僕にとってはリハビリのようなものかもしれないなと、ときどき思います。芝居には、どこか「自分を取り戻す」という作業に通じるものがあるように感じているんです。

以前、とある精神科を見学する機会があったのですが、そこで行われていたセラピーが、深く印象に残っています。人形を使って、患者さんたちにセリフを言わせている……演じさせているのです。そうやって、患者さんが言いたいことを言葉として口に出させ、他者との関わりをもたせていくという治療の一環でしたが、この光景は僕にとってとても感動的でした。それが芝居のもつ力だと感じたんです。

僕は新人の頃からなんとなく周囲にうまく打ちとけられず、思ったことも口に出せないようなところがありました。これは、仕事に限った話ではないですけどね。だから、キャラクターが語っているセリフを通して、言えないことを吐き出し、そうやって自分の形を確認するということは、僕にとって多くの意味をもっています。自分が芝居をリハビリと感じているのも、あながち間違いではないのだな、とものすごく感じました。

いろいろと語ってしまいましたが、僕自身、自分はもうこのままやっていけるんだと安心することはありません。道の半ばにいる人間です。正直、こんな話を僕がしてしまっていいのだろうかと恐縮しています。さっき「そこがスタートラインだ」と言いましたが、だからといって、ゴールがどこかというと、明確な答えが見つかるわけでもありません。ともあれ、やはりスタートを切らないことには何も始まらないのは事実。簡単な道のりではないと思いますが、必ず自分が生き残るんだという気持ちをもって、頑張ってもらえたらと思います。

(2009年インタビュー)

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