【声優道】島本須美さん

主役を狙うよりも
〝素敵な脇役〟を目指せ!

私は今、声優学校で講師を務めています。最近の若い人たちを見ていて思うのは、いわゆる〝主役タイプ〟の声じゃないのに主役を狙っている人が意外と多いということです。

最初はどうしても主役を狙いたくなるし、気持ちはわかるんだけど、女の子は特にそういう子が多い。「どうやったら、きれいな声が出せるんだろう?」と声の出し方ばかり頑張っているんだけど、見ていて「違うキャラクターを狙ったほうがいいよ」と思ったりします。

もし声優になりたいんだったら、主役だけじゃなくてほかにも素敵なキャラクターがあるから、自分に合った演じやすい役を狙っていってもいいのではないかと。

周りががっちりキャラクターを作ってくれていると、主役が生きて素敵に見えるし、みんなも素敵になる。個性豊かな、先ほどお話しした千葉繁さんがやっていたような作業をみんながやっていけると素敵だなって。だから、脇の素敵なキャラクターを自分のものにする努力をしてほしいし、そのほうが近道じゃないかと思いますね。声優を目指している人たちには、「素敵な脇役を目指せ」と言ってあげたいです。

素の自分を出せるようになるために
自分が素敵になる努力をしておくこと

ほかに、若い人たちを見ていて思うのは、もうちょっと本を読んだほうがいいのかなと。まず漢字が読めない人が多いし、単純に文章の読解力が弱い気がします。言葉の裏にあるものや、感情の作り方も言葉どおりにしか読んでくれない。たとえば、怒って言っている言葉だから単純に怒って言う、みたいな。「なんで怒っているのか?」というところまで考えないで読んでいるんです。

いっぱい本を読むようになれば、主人公の気持ちの裏側にある心情までもっとわかるようになるだろうし、漢字も読めるようになります。ゲームもいいけど、時間があるなら本を読めば?と思いますね。そういう私も一時期『ファイナルファンタジー(FF)』にハマっていて、『FF』に出ている声優さんたちに「私も出たい!」とアピールして、本当に出させていただいたこともありましたけど(笑)。

私が授業でいちばん最初にやってもらうのが、〝歩くこと〟です。「普通に歩いて」と言うと、みんな〝暗~いヤツ〟みたいに肩を丸めて歩くんですよ。「次は素敵に歩いてみて」と言うと、一生懸命頑張るんだけど、不自然で、なかなかほどいい感じにならない。そうやって何度か歩かせて、ある程度かっこよく歩けるようになったところで「それをベースにしなさい。普段のあなたがそう歩ければ、普段から素敵に見えるよ」と言います。その辺の捉え方は難しいと思いますが、「自分が素敵になる努力をしておけ」とはいつも言うことですね。

しゃべり方も同じで、ナチュラルにしゃべることって意外と難しいんです。若い頃は、特に〝こう見せたい自分〟みたいなしゃべり方もあると思うけど、やっぱりうそっぽくなりますよね。オーディションのときなんて特に顕著ですが、必要以上に明るくハキハキと、女の子は精いっぱいかわいい声で自己紹介する人が多い。でも、プロの声優がセリフを本気で言ってるように聞こえるのは本気で言ってるからであって、声を作ったところでやったらうそになっちゃうんです。もちろん、どんなにつらくても作って出さなきゃいけないときもありますよ。

だからこそ、本当の自分にもなれて、作ることもできて……と自分のコントロールができることが必要。そのためには、素の自分を出せることがいちばん大事です。オーディションのときも素を出して、それに近いキャラクターを狙っていけば早いんですよ。それでも「素の自分を出す勇気がない」という人は、一人の部屋で独り言を、作らない自分でしゃべって、その作らない自分を教室でも出せるようになると伸びていくと思いますよ。素の自分が〝素敵になる〟努力もしながらね。

(2016年インタビュー)

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