【声優道】朴璐美さん

声優総合情報誌『声優グランプリ』25周年を記念し発売された、『声優道 名優50人が伝えたい仕事の心得と生きるヒント』が3月9日から公式サイト「seigura.com」にて期間限定で無料公開中!

アニメや吹き替えといった枠にとどまらず、アーティスト活動やテレビ出演など活躍の場を広げ、今や人気の職業となっている「声優」。そんな声優文化・アニメ文化の礎を築き、次世代の声優たちを導いてきたレジェンド声優たちの貴重なアフレコ秘話、共演者とのエピソードなど、ここでしか聞けない貴重なお話が満載。

それぞれが“声優”という仕事を始めたキッカケとは……。

声優ファン・声優志望者だけでなく、社会に出る前の若者、また社会人として日々奮闘するすべての人へのメッセージとなるインタビューは必見です。

体と心と魂が一つになる瞬間

▼軽い気持ちで演劇部に入ったら、たちまち演劇のとりこに……
▼韓国留学と一つの別れ 失意のどん底にいるときに再び演劇に出合う
▼自分にとって芝居は神聖なもの 演技でお金をもらうことにピンとこなかった
▼これが最後だと受けたオーディションに合格 声の現場は舞台以上に舞台だった
▼自分とは性別が違う「少年」というフィルターを通すこと
▼私のプロ声優人生は『シャーマンキング』から始まった
▼感覚を引き出してくれる音響監督さんとの出会い
▼お芝居のプロデュースに挑戦するも東日本大震災で公演中止に……
▼役者が全力でぶつかりあうからこそ、舞台は面白い
▼ボイススクールを始めたのは今の若者と向き合ってみたかったから
▼まず大事なのは自分と向き合うこと 一度きりの人生なんだから、全力で生きて

【プロフィール】
朴璐美(ぱくろみ)
1月22日生まれ。LAL所属。主な出演作は、アニメ『進撃の巨人』(ハンジ・ゾエ)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(エドワード・エルリック)、『BLEACH』(日番谷冬獅郎)、『NANA』(大崎ナナ)、『シャーマンキング』(道蓮)、『∀ガンダム』(ロラン・セアック)、洋画でヘレナ・ボナム・カーター、ヒラリー・スワンクの吹き替えほか、舞台にも多数出演。2013年よりボイススクール「studio Camblia」を主宰。

軽い気持ちで演劇部に入ったら、
たちまち演劇のとりこに……

実は、役者になろうと思ったきっかけって、これと言ってないんです。高校のときに演劇部に入ったのも、先輩から誘われたというだけの、ほんの軽い気持ちでした。ところが入ってみたら、たちまち誘ってくれた先輩よりも夢中になっちゃって、演劇漬けの3年間を送ることになりました。でも自分が演じることに興味があったわけではなくて、みんなで一つのものを作っていく感覚が好きだったんです。照明の色を組み合わせたりして、イメージしたものを具現化できるというのも魅力的でした。当時はどちらかというと、演出に興味があったんですね。

今でも忘れられないのは、高校3年のときに出場した全国高等学校演劇大会の地区大会です。女子高だったので、ミヒャエル・エンデの『モモ』の登場人物を全員女性に改稿して演じたんですが、何と本番で私たちが演じている最中に停電になってしまったんです。もちろん上演は中止。私は灰色の女役でちょうど舞台に立っていたときに真っ暗になったので、「これだけ稽古してきたのに、もう演じられないのか」とものすごくショックを受けてしまったんです。私以外の部員もみんな、号泣したりパニックを起こしたりとおかしなテンションになっていました。

しばらくして電源が復旧。もう一度最初から演じられることになったときには、テンションが上がりすぎたのか逆に冷静になってしまい、自分が灰色の女にしか見えなくなっていたんです。一体感というか、今まで感じたことのないすごく変な感覚でしたが、それを味わってしまったらもう演劇のとりこになっていました。

韓国留学と一つの別れ
失意のどん底にいるときに再び演劇に出合う

その後、進路を決める時期になりましたが、中学高校と女子校だったのでエスカレーター式の女子大に進学したくなかったんです。もう女子だけの環境はイヤ!と思って……(笑)。でも両親は大学進学希望だったので、国語1教科と実技の試験しかなかった桐朋学園芸術短期大学の演劇科に進学しました。ところが共学に進学して念願の彼氏もできたら、高校時代に感じた演劇の情熱なんて忘れてしまって、「このまま彼氏と仲良くやっていければいいじゃない」と思うようになってしまったんです。一生を賭して演劇をやっていくなんて、考えもしませんでした。

そんな私に再度の転機が訪れたのは、短大卒業後のこと。中学の頃から、一度は父の国である韓国で生活してみたいという思いがあり、短大卒業と同時にせっかくできた彼氏を置いて韓国に語学留学したんです。実際に生活して肌で感じた韓国の現実は、思い描いていたものとは違っていました。

そして「ここは母国ではなく、祖国だった」という想いを胸に愛しい彼の元へ戻ってきたところ、何とラブラブだったはずの彼氏が私の友達と……(笑)。あり得ない状況にがく然として、ショックのあまり引きこもりのような状態に。もう自分の人生は終わったと思いましたね(笑)。

失意の日々を過ごしているとき、ある人から「そんなおまえにぴったりの場所がある。そのドロドロした思いを全部吐き出せる場所だ」と紹介され、オーディションを受けに行ったのが『演劇集団円』。そこで演出家の福沢富夫先生に出会い、「この人にならすべてを見せられる」と思ったことが円の演劇研究所に入ったきっかけでした。