キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。
今回登場するのは、『王様ランキング』のボッジ役、ゲーム『トワツガイ』のツバメ役などを演じる日向未南さん。人生を支えてくれたアニメ作品、そして少年役への憧れ。一つひとつの出会いを大切にしながら声優の道を突き進む日向さんのリスペクトする作品や先輩、仕事への向き合い方などをじっくりとうかがいました!
日向未南 オフィシャルサイト:http://www.axl-one.com/talent/hinata.html |
生き方に刺激を与えてくれた『AKIRA』
――今日は、撮影用に選んでいただいた私服がとても爽やかでした。
普段声優として少年役を演じることが多いので、自分のなかで少年っぽさを出すために青がいいかなと。ただ、ボーイッシュすぎるとラフすぎると思ったので、スカートにしました。
――演じる役を大切にされているんですね。この取材のためにいろいろ調べていたら、とにかくアニメ好きなことが伝わってきました。昔から好きだったんですか?
子どもの頃は外で遊んだし、スポーツもたくさんしましたけど、人生の中心には常にアニメがあって。物心ついた時からずっとオタクでした(笑)。『アンパンマン』から始まり、カートゥーンネットワークで『トムとジェリー』などにハマっていき……。母親もオタクだったので、ジブリやディズニーがいつも身近にあって、英才教育を受けてきたという感じでしょうか(笑)。
――なるほど。特に影響を受けた作品は?
人生を支えてくれたのは、『新世紀エヴァンゲリオン』『ベルセルク』『AKIRA』の3作品です。どう生きたらいいのかということや、人との関わり方を教えてもらいました。特に『AKIRA』は主人公2人の友人関係が幼少期から描かれているので、小学生とか中学生くらいの自分への影響は大きかったです。
――キャラクターと近い年齢だと響き方が違ってきますよね。
そうですね。好きなジャンルはダークファンタジーですが、ほかにも『HUNTER×HUNTER』『NARUTO -ナルト-』『ドラゴンボール』などのジャンプ作品、『アルプスの少女ハイジ』や世界名作劇場の『ロミオの青い空』『フランダースの犬』。手塚治虫の『ブッダ』や『メトロポリス』も大好きです。ただ、その話を始めると話が長くなります(笑)。
――では、それはまた別の機会に……(笑)。ちなみに、先ほどお話されたスポーツというと?
野球、水泳、バレーボール、テニス、バスケット、卓球。でも、ちゃんと部活に入っていたのはバレーボールとテニスだけです。野球は地域のチームに入っていたんですけど、女性は甲子園を目指せないことに気づいてやめました。大人になった今ではできることが限られていて、友達とテニスに行くくらいですね。普段体を動かさないので、翌日は体がバキバキになります(笑)。
――「読書」も趣味の一つだそうで、漫画が多いんですか?
漫画も読みますけど、読書でいちばん多いのはファンタジー小説です。『ハリーポッター』とか。ジブリ美術館の中に図書館があって、そこに置かれた本は大体どれも好き。『ハウルの動く城』の小説版とか、行くたびに何十冊も買って帰ります(笑)。3日に1冊のペースで読んでいるので日々新しい読み物を探していますが、一人暮らしで収納のスペースが限られているため、電子版を読むことが増えました。
少年への憧れが強すぎて声優に
――そんな中で声優を目指したきっかけは?
とにかくアニメに関わる仕事がしたい!と思ったんです。ただ、ネロやロミオのような少年への憧れが強すぎて、自分も少年になりたい!と。男に生まれていたら野球も続けられたし、違う未来があったのにという思いもありました。だから漠然と声優を目指したというより、二次元や少年への憧れという部分が強かったですね。
――コンプレックスから始まって夢を実現されたのですね。まさにボッジ役として少年を演じている『王様ランキング 勇気の宝箱』が、いよいよ4月からスタートします。
アニメ化されると聞いて「ありがとう」って思いました! このお話って、言ってみれば原作の小噺なんです。原作で描かれた大筋のストーリーをアニメ化したのが第1部だとすると、第2部は大筋の中で拾いきれなかった細かいエピソードをアニメ化するもの。スタッフさんたちの愛がなければ実現しなかったはずです。第1部からスタッフさんたちの作品愛をすごく感じていたし、自分もこの作品が漫画の頃から大好きで、アニメを観ながら「ファンの気持ちをわかってくださっているな」と思っていました。
――第2部の収録を経て、これから観る方に楽しみにしてほしいことは?
やっぱり作画がすごいです。“作画暴力”と思えるくらい(笑)。アフレコでも2話までフルカラーで収録しました。第1部で最後だと思っていたボッジとカゲの温かいやりとりがまたたくさんあるので、楽しんで見てほしいです。
――ボッジに親しみを感じるファンは多いと思いますが、日向さんご本人はボッジ役をどんな距離感で演じていますか?
私にとってボッジは世界を動かしていく、雲の上の人のような憧れの存在です。もしボッジに「まじすげえです、本当に尊敬してます!」って伝えたら、ボッジから「あうっ…!?」って言われちゃうかもしれないけど(笑)。存在が大きすぎて、いまだに「ボッジを演じてるのが私ってマジか……」と思います。
――憧れの大きさが伝わりますね。
第1部のアフレコも、最初の頃は「なんでここにいるんだろ〜」と思いながら太田胃酸を持参して通ってました……(笑)。でも最後のほうはだんだん楽しめるようになってきて、ボッジを演じられるのもあと数回、幸せものだなと思いながら。あの強大すぎる主人公を演じるってすごいことですよね。正直、十日草輔先生のボッジへの想いを想像しながら、アニメにおけるボッジの声を作ることのプレッシャーはやっぱり大きかったです。こんなこと言うとみっともないかもしれないですけど…。
休日は友達の家でゴロゴロすることも……
――2月にリリースされたゲーム『トワツガイ』は、ヒロインたちが“ツガイ”になっているのが特徴。日向さんがおすすめするゲームの楽しみ方は?
個人的にも百合作品は好きなんですが、最初から公式がペア(=ツガイ)を提示してくれる作品は珍しい気がして。三角関係はよくありますけど、そういうのがほとんどなく、最初からペアというのが百合好きにはとてもありがたいです(笑)。だって、ペアがそれぞれハッピーエンドに向かっていく道筋がすでに見えてるじゃないですか。ダーク系の世界観だから、これからいろんな壁が立ちふさがると思いますが、“永遠のツガイ”ならば安心して見ていられる。そこがいちばんの楽しみ方だと思います。
――どんなことがあっても固い絆で乗り越えるわけですね。
そう、そうなんです。私が演じるツバメは、相方のモズと“ケンカップル”。ツバメはまっすぐだから「みんなで生き延びよう」っていう感じなんだけど、モズは「そういうとこ、だるいよね」ってひねくれてる。そんな2人がペアを組んでるのがたまらん!と (笑)。私は自分が演じているからツバメ・モズのペアが最推しですけど、他のペアのわちゃわちゃ感やすれ違いも楽しんでいただけたらと思います。美麗イラストもあって、それが2Dで動いちゃうし、しかもフルボイス。声優陣も、人気の方々の中に運良く自分も滑り込ませていただいて。舞台化も決まっているし、これからが楽しみです。
――忙しい毎日だと思いますが、休日はどんなことをして過ごしていますか?
家でゴロゴロしながらただゲームをしている時もあるし、この間は友達のおうちでケーキを作りました。あとはカラオケに行ったり、ディズニーに行ったり。すごく仲良しの友達が近くに住んでいて、隙あらば遊びに行ってゴロゴロしてます。5人くらいのグループがあって、一日中電話をつなげてることもありますね。一人は絵を描いていて、一人は仕事をしていて……と、電話でつながりながら、各々生活するというようなときもあります。
――声優さんのお友達も?
同じ事務所の嶋野花さんと藍川和伽さんは、特に仲良しで、嘘みたいにずっと一緒にいます。安藤ゆりあさんもよく一緒にいます!
自分の演技に「うん。面白い」と言えるような声優に
――作品の出会いや人とのつながりを大事にされている日向さんですが、特に影響を受けた方はいらっしゃいますか?
今パッと浮かんだのは、村瀬歩さんですね。私がいろんなところでお話しているので、迷惑をおかけするかもしれませんが……。『賢者の弟子を名乗る賢者』っていう作品で初めてお会いした時、すでに『王様ランキング』が決まっていたので、村瀬さんに芝居のイロハを教えていただき、芝居への向き合い方を軌道修正していただいて。
――どんな言葉を掛けていただいたんですか?
すごく響いたのは「自分のセリフは相手のためにある」ということです。今までは自分がセリフを言うことばかり考えていたけど、一つひとつのセリフはその前の皆さんがつなげてくれたセリフで、後に続く皆さんにつなげていくものだと。そんな当たり前のことも優しく教えてくださいました。そして、役と向き合って自問自答することも。たとえばタンスに小指をぶつけた時、そのキャラクターだったら「あ!」じゃなくて「う!」かもしれない。『王様ランキング』で、音響さんからのディレクションに応えられなくて困っている時、後ろから村瀬さんが「こうだよ!」と神の一言を掛けてくださって。
――では、『王様ランキング』の中でも演技に変化が?
ありました。もちろん最初の頃にしか出せなかった味がきっとあるんだと思います。ただ、今演じたら違う仕上がりになるかもしれないです。それくらい、村瀬さんと共演できたことが自分にとって大きな出来事でした。
――最後に、これからどんな声優を目指していきたいかを教えてください。
やっぱり少年への憧れが強いので少年役を演じていきたいですし、自分が演じたらこうなるんだっていうチャレンジもしていきたいです。たとえセリフ一言の役でも、どうやったらキャラクターが生きるのかを丁寧に考えて、いずれはお客さんと同じようにその作品を楽しみながら、自分が自分の演技に「うん。面白い」と言えるような役者になりたいです。
【声優図鑑】日向未南さんのコメント動画
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
撮影=武田真和、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」