自身の誕生日である11月15日に、アーティスト活動5周年イヤーを迎える富田美憂さん。
アニバーサリー当日に、1年ぶりとなる新曲「Silent Beat」がデジタルシングルとしてリリースされます。アーティスト・富田美憂の“これまでとこれから”を優しくシルキーな歌声で表現した本作。どのような思いで制作に向かったのかをうかがいました。
この1年の変化や成長が新曲に表れていると思います
──1年振りの新作となりますが、この1年を振り返ってみるとどのような思いがありますか?
ありがたいことに怒涛の1年でした。アーティスト活動のレコーディングや取材の稼働はなかったんですけど、アーティストとしてイベントやフェスに出演させていただく機会が多くて。いろいろなアーティストさんのライブを観ることができて刺激をもらいました。声優としての活動も、この1年でさまざまな変化がありました。今までは「この役は自分にピッタリだ!」と思えるような、自分的にもしっくりくるようなキャラクターのオーディションで合格をいただくことが多かったのですが、最近は、「自分、こういうキャラクターにもトライできるんだ」と思うようなキャラクターとのご縁があって。例えば『あやかしトライアングル』の風巻祭里♀役もそうです。男性の姿(風巻祭里♂)を演じている千葉翔也さんのお芝居のニュアンスを意識しながら演じるという、これまでとは違った役作りにも挑戦できました。それに加えて、王道のヒロインを演じさせていただく機会もあって、すごく新鮮な1年でしたね。
──いろいろなアーティストのライブを観たことが刺激になったというお話がありましたが、例えば?
たくさんありますが、直近だと、9月にコロムビア所属のアーティストが集まる『colutte Presents Future Notes Fes SPECIAL』に出演させてもらったんです。同じ声優アーティストである大西亜玖璃ちゃんのステージがとてもかわいくて! 実は後ろの客席から観させてもらっていたんです。私もかわいい曲を歌うことがあるので、そういう系統の曲を歌うときには亜玖璃ちゃんのパフォーマンスを思い出してみようかなって(笑)。また、NANOさんはアーティストデビューしたばかりの頃の『ANIMAX MUSIX』以来の共演で、久しぶりにお会いできてうれしかった記憶があります。いろいろインプットできたので、新曲にはその成果が出ているのかなって思ってますね。
──新曲「Silent Beat」はトレンド感がありつつも、その中で富田さんの確かな強さが軽やかに表現されていますね。
曲を受け取った時は、私も「今っぽいな」と思いました。パッと聴くと明るい印象があるんですけど、どこか切なくも冷たい雰囲気が入っていて……今まで歌ってきた「Present Moment」や「翼と告白」など、今までの楽曲の集大成という雰囲気にも感じました。5周年に突入していくにあたってピッタリな曲なのかなと思っています。
──実際に歌詞には“翼”という言葉が入っていますね。
そうなんですよ! もしかしたらAiraさんが汲み取ってくださったのかも。歌詞の世界観のオーダーをさせてもらった時に「5周年目に入る節目の年になるので、私のアーティスト活動を応援してくださった皆さんが聴いた時に、今までのライブやイベントなどを思い出せるような曲にしたいです」と伝えていたんです。そしたら<初めて見た景色に>という言葉からはじまる歌詞をいただいて、私自身も(2019年の誕生日に行われた)ヴィーナスフォートでの初めてのイベントを思い出しながら歌っていました。懐かしいですよね(笑)。
──懐かしいですね。それでいて、一歩先に向かう決意も込められた曲になっています。
そうなんです。今までの自分の弱さや失敗なども受け入れたうえで、それを強さに変えて、新しいステージに一歩踏み出していくという内容になっていて。まさに最近「弱さを受け入れられたら人間的に強くなれるんじゃないかな」と感じていたんです。
──それは、どんな場面で感じられたんです?
いろいろあるんですけど……アニメのお仕事であれば、日々オーディションを受けて、当然ですけど、誰かが受かって誰かが落ちるんです。自分が落ちた側に行ったとき、これまでは嫉妬だったり、「なんで自分はそこにいられないんだ」って不甲斐ない気持ちがあったりしたんです。でも、「受からなかったということは、受かるべきではなかったんだろうな」と最近は思えるようになって。他人を羨む気持ちが芽生えても、「自分にしかないものもあるから」と。自分の弱さや欠点も含めて富田美憂なんだ、と思えるようになった気がします。
──前向きに捉えられるようになったのですね。そう思えるようになったのは、ファンの方たちの存在も大きい?
はい、とても! 日々皆さんからお手紙やSNSでいただく言葉が、私の元気の源なんです。皆さんがいるからこそ私は強くいられます。アニメのお仕事のときはキャラクター込みで私のことを応援してくださっている方もいらっしゃると思うんですが、いちアーティストの富田美憂のファンでいてくださる方たちは、きっと私の人間性を含めて応援してくださっていると思うんです。本当に感謝してもしきれません。
──ある意味、今回の曲が生まれたのもファンの皆さんの存在あってこそとも言えるのかもしれませんね。
そう思います。アーティスト活動をはじめた当初は「いつまで続けられるんだろう?」という漠然とした不安があったんです。でも毎年曲をリリースできて、ライブができて、皆さんの前で歌えて……ということができているのも、皆さんのおかげです。この5年間ありがとう!という気持ちを込めて歌っていました。
──ところで、Airaさんが富田さんの曲を手掛けられるのは初めてですよね?
そうです! レコーディングにも立ち会ってくださったんです。新しい作家さんとの出会いをくれた曲になりましたし、タイトルもAiraさんがつけてくださったんです。アーティストとして経験を積むなかで、歌声に乗る感情をコントロールできるようになって、そういう今の私らしさもタイトルに出ているなと思います。自分が秘めている思いを歌で表現することができました。