畠中祐

畠中祐のゆっくりすくすく 第54回

畠中祐

このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。

今回選んだ作品は映画『茄子 アンダルシアの夏』。

僕は生まれも育ちも相模大野というところです。

そこで幼少期から中、高、大学生までのひと時を過ごしました。まあそりゃいろんな思い出がありますよ。たまに実家に帰った時に、よく街を散歩するのですが、いい思い出も、少し苦い思い出も頭を過って、少し感傷的になってしまいます。でもきっと故郷って、そういうものですよね。

実はこの映画、47分という短さです。たまたま見つけて、ちょっと仕事の関係であんまり長い時間映画を見れないなと思っていたので、見たというのが正直なところなのですが、いや、47分の中に、深い味わいとあるドラマがありました。

このドラマの主人公ぺぺは、ロードレーサーです。ビール会社がスポンサーになっているロードレースチームの「アシスト選手」成績的にもクビを切られるかきられないかのギリギリのラインです。

アンダルシアの故郷近くを通るレース当日、その日はぺぺの兄、アンヘルと、ぺぺの元恋人、カルメンの結婚式の日でもありました。

ぺぺの兄もロードレーサーを目指していた若い頃がありましたが、今はその夢を諦め、それをぺぺに託しました。そして、ぺぺ自身も、カルメンへの想いがありながらも、逃げるように、ロードレースの道にのめり込んでいった過去がありました。

彼にとってはこのアンダルシアは苦い過去、そこから逃げるように、彼は独走を続けます。集団プレーが勝利の決め手となるロードレース、その中で、後に引けない彼の戦いは見ていて少し危なっかしい。まさに、今の彼の人生と重なります。

だからこそ映画終盤、ゴール付近での彼の激闘は、作画、お芝居含めて手に汗握ります。自然とぺぺに声援を送ってしまう、そんな迫力が画面から溢れ出してきます。

「どこか、遠くへ行きたいんだ」
ぺぺのモノローグ。故郷でいろんなことを経験すればするほど、この気持ちは募るでしょう。嫌いじゃない。なんならずっとここにいれる。でも、辛すぎる。何にも縛られない場所に行きたくなる気持ちは、すごくわかります。

それでも、故郷は変わらずそこにあって、故郷の人達は変わらず暖かく迎えてくれます。だから彼は、遠くへ行く権利を、勝ち取りにいかなければいけなかったのかもしれません。

映画のラストシーン、彼は、アンダルシア名物の茄子漬けを、少し顔をしかめたあと、一口で頬張ります。この映画の味わい深さを全てぎゅっと濃縮したようなシーンに、思わず感嘆の吐息が漏れました。47分とは思えない濃厚な映画、皆さんもいかがでしょうか?

次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、3月27日(土)に更新予定! お楽しみに!

畠中さんに質問!

Q:子供の頃、何か習い事をしていましたか?(山梨県・Shuuuuuko)

Shuuuuukoさん!質問ありがとうございます!!!
僕は小学校から高校くらいまで、空手をやってました。これでも黒帯でしたよ!!懐かしいですね!!!

畠中祐が今、答えます!!!

畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたの人生で起きたレアな出来事」です。

次回のお便りのテーマは「もらって嬉しかった・あげて喜ばれた差入れのエピソード」です。3月4日は【差入れの日】ということで、オススメの差入れとそれにまつわるエピソードを募集いたします! たくさんのおたよりをお待ちしております!

畠中さんへの質問&お便りを大募集!


    はたなかたすく
    8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(永見祐)、『バジリスク ~桜花忍法帖~』(甲賀八郎)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。