畠中祐のゆっくりすくすく 第42回

このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。

今回選んだ映画は『風の電話』。

僕は、大切な人を失ったことがまだありません。だから、作品の中でそのような場面を演じることがあったとして、それは、僕の想像の範疇の中でしかなくて、実際にそのような経験をした人から見ると「お前に何がわかるんだよ」と言われてしまうかもしれない。それでも僕らは、精一杯向き合って、必死に想像して、演じる。でもやっぱり、心のどこかで「想像でしかない」という罪悪感のようなものが残ります。

NHKさんのドキュメンタリー「風の電話~残された人々の声~」をはじめて見たとき、僕は、その罪悪感のような気持ちを強く感じました。そのドキュメンタリーは、震災から5年後の、岩手県大槌町の海を見下ろす丘に置かれた「風の電話」という、線のつながってない電話ボックスに訪れる人達を追ったもので、大切な人を失った人達の姿が、言葉が、しっかりとそこに残されていました。それを見たとき、あまりにも辛すぎて、でもこれを見ている僕の何倍もこのドキュメンタリーに出ている人達は途方もなく辛くて、その時に、演じることへの罪悪感を僕は感じてしまいました。僕が想像できるのか。お前に何がわかるのだと、思ってしまったのです。

だから、その「風の電話」にまつわるお話を、役者が演じ、映画になったということを聞いた時、見たい気持ちと、見たくない気持ちの両方に襲われました。この気持ちに役者さんたちはどう向き合っているのか、色々考えてしまいました。そんな気持ちを抱えながら、映画のチケットを買いました。

けど、やっぱり、僕はこの映画を見れて、本当に良かったと思います。津波で家族をなくしたハルという女の子が主人公なのですが、この子を演じたモトーラ世理奈さんが、本当に良かったのです。あぁ、彼女は本当に辛いんだろうなと、今までも、生きてる心地がしないくらい辛かったのかもしれないなと、本当にそう思いました。だから、風の電話で家族に自分の気持ちを正直に話すシーンは、圧巻でした。もう、辛すぎて辛すぎて、本当に胸が痛かったです。でも、画面の向こうでその気持ちとちゃんと向き合って演じるモトーラ世理奈さんに、何か大切なものを教えてもらった気がしました。

やっぱり、本当に大切な人を失った人達の気持ちを、全てを理解し想像し、演じることができるのか。経験をしたことがない僕にはわかりません。それでも、真摯に、向き合っていくしかない。やれる事は全てやって、想像するしかない。その人たちに精一杯寄り添って考えていくしかないのです。役者にできる精一杯を。この映画をみて、僕はそう思いました。

映画館を見終えたあと、この気持ちを忘れずに、ずっとずっと考えて続けていける役者になりたいと、強く思いました。皆様も、『風の電話』ぜひご覧ください。

次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、3月28日(土)に更新予定! お楽しみに!

畠中さんに質問!

Q:目玉焼きには何をかける派ですか?(神奈川県・おしゃべりにんじん)

おしゃべりにんじんさんありがとうございます!!! いや!!! 塩です!! ソースとか醤油もいいですけどね、卵の味を心底楽しみ体から優しめな味付けがいいですね!!!

畠中祐が今、答えます!!!

畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「言い間違いに気づいた出来事

次回のお便りのテーマは「聞いてよ! 男の子の知らない女の子あるある」です。皆さんの大人にになったと感じたエピソード、お待ちしております!

畠中さんへの質問&お便りを大募集!


はたなかたすく
8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(永見祐)、『バジリスク ~桜花忍法帖~』(甲賀八郎)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。