キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。記念すべき初回配信に登場していただいたのは 、TVアニメ『チェンソーマン』の主人公・デンジ役や、多次元アイドルプロジェクト『UniteUp!』の清瀬明良役を務める、戸谷菊之介さん。
中学生の頃からお笑い芸人を目指していたという異色の経歴を持ち、トロンボーンの演奏をはじめさまざまな分野に挑戦している戸谷さん。話を聞けば聞くほど新たな一面が表れる、多才かつ多趣味な戸谷さんの素顔に迫りました!
戸谷菊之介(とや・きくのすけ) ソニー・ミュージックアーティスツ所属 オフィシャルサイト:https://www.sma.co.jp/s/sma/artist/495?ima=0000&link=ROBO004#/news/0 Twitter:https://twitter.com/Kikunosuke_Toya ★戸谷さんの手書きプロフィール公開中! https://ch.nicovideo.jp/seigura/blomaga/ar2129230
お笑い芸人になりたいと思っていたんです
――ソニー・ミュージック アーティスツ主催の声優オーディション『第6回アニストテレス』をきっかけに現在の事務所に所属した戸谷さん。声優を志すまでにはどういった経緯があったのでしょうか?
だいぶ遡っちゃうんですが、中学生の時、バカリズムさんにすごく憧れていて、お笑い芸人になりたいと思っていたんです。劇団ひとりさんとバカリズムさん、東京03さん、早見あかりさんが出演する『ウレロ☆シリーズ』というコント番組がテレビ東京でやっていて、「めっちゃ楽しそうだな」と思ったのがきっかけでした。芸人になるために、高校では漫才やコントをやっていましたね。
――お笑い以外には、どんな学校生活を送っていたんですか?
やりたいことは全部やっていましたね。ジャズ部でビッグバンドの合奏を仕切るコンサートマスターをやったり、放送委員会の委員長をやったり、体育祭では装飾を仕切っていました。
――本当にいろんなことをやっていた学校生活だったんですね。
いろいろやり過ぎて追いつかない、みたいな感じでした(笑)。いちばん大変だったのは、高校3年の文化祭で劇をやった時ですね。毎日部活もあるなかで、脚本・演出・主役を担当していたので、その頃はほぼ寝ずにやっていました(笑)。
――かなり多忙な学校生活ですね(笑)。そこから、どのようにして声優の道に進まれるんですか?
高校を出て、いろいろなオーディションを受けていきました。そのなかで、偶然参加したお芝居のワークショップで、お芝居でも人を笑わせることができるんじゃないかと感じて、俳優や声優という選択肢が増えていったんです。それから、18歳の時に受けたソニー・ミュージック アーティスツ主催の声優オーディション『アニストテレス』で特別賞をいただいて、本気で声優としてお芝居を頑張ろうと決めました。
本当に気持ちを持って発さないと、相手に伝わらない
――声優の道を選んでからは、どのように技術を身に付けていったんですか?
声だけでやらなきゃいけないことが多いので、まずは基礎を固めないと何もできないなと思いました。活舌や抑揚の付け方もわかっていなかったので、昔の録音を聴くと、もう……(笑)。そこら辺はすごい頑張りましたね。
――誰かの下でお芝居を学ぶ機会はあったんですか?
緒方恵美さんの塾・Team BareboAtに3年間通いました。それまでは誰かにお芝居を教わる機会がなかったので、緒方さんの所に行って初めて「こういうことができないとダメなんだ」ということに気づきましたね。
――緒方さんの下で学んだことの中で、特に印象的なことは何でしょうか?
大本をたどると、声優も俳優・役者と同じなんだなということに気づきました。緒方さんに「芝居は現実の再現だから、自分の気持ちを大切にしてください」って教えられたんです。演じる役の気持ちを自分の中でも思い起こして表現する。そういう気持ちの近づけ方を学びましたね。本当に気持ちを持って発さないと、相手に伝わらないんだ、と。
――緒方さんの塾では、周囲の方との交流もありましたか?
そうですね。もともとは舞台をやっていた方や、すでに声優をやっている方、あとは中学生の子もいて、本当にいろんな人がいました。舞台俳優の方は心にくる芝居をしていて勉強になりましたし、リアルな中学生はこういう発言をするんだなぁ、とか(笑)。すごく良い場所でした。
用意していったものとはまったく違うものが出る
――声優としての最初のお仕事はいかがでしたか?
『ウインドボーイズ!』というアプリゲームの清嶋桜晴という役が、いちばん最初のお仕事でしたね。高校時代に僕もやっていた、トロンボーンを演奏する男の子です。ずっと声を張っているキャラクターで、一回収録するごとに喉がやられてしまって。最初に何日か連続で収録していたんですけど、4日目くらいで声がうまく出なくなっちゃって、ちゃんとケアしないとダメだなと思いました。その日は途中で収録が終わりになってしまったので、反省しましたね……。
――最初のお仕事だからこそ、力も入ってしまいますよね。収録自体には緊張はしませんでしたか?
めっちゃしました(笑)。最初は、ディレクションに応えてお芝居を変えることもなかなか出来なくて、繰り返し繰り返し同じセリフをやって、キャラクターを作っていきましたね。
――そして、現在放送中のTVアニメ『チェンソーマン』に主人公・デンジ役で出演されることになります。アフレコはいかがですか?
何から話そう……いろいろすごく勉強になりましたね。第一線で活躍されている同世代の方たち……楠木(ともり)さん、ファイちゃん(ファイルーズあいさん)、さかしょくん (坂田将吾さん)とは、年が近いからこそいろいろ聞き合ったり、教えてもらったり、見て学ぶこともあります。
――やはり、そのお三方と一緒に収録されることが多いんでしょうか?
最初はその4人で収録することが多かったんですけど、話が進むにつれて別々に録るようになりました。パワー役のファイちゃんと一緒に収録することが多いですが、サムライソード役の濱野大輝さんをはじめいろんな方と収録できているので、勉強できることもいろいろありますね。ただ、岸辺役の津田(健次郎)さんとはまだ一緒に収録できていないので、生で一緒にお芝居をしてみたいですね。
――収録の中で、周囲のお芝居から刺激を受けた場面はありますか?
デンジとパワーが一緒にガヤガヤするところがあるんですけど、そういう時にファイちゃんがすっごい勢いで来るんですよ。それに対抗して、二人でどんどん上に上がっていくのが「めっちゃいいな」って思いました。マキマさんを演じる楠木さんは、距離感も完璧だし、一緒にやっていてドキドキするような空気を作っていて、すごいんですよね。それから、具体的にはまだ言えないんですけど、さかしょくんの演じるアキについては、すごく好きなシーンがあるんです。彼は、心がにじみ出るようなお芝居がすごくうまいなと感じます。
――そういった周囲から受ける刺激が、ご自身のお芝居にもつながっていくわけですよね。
はい。すごい人たちの芝居を受けて、僕が用意していったものとはまったく違うものが現場で出る。そういうことがいっぱいあるので、「良い現場だ……!」って思います。
ずっと声優として仕事をしていきたい
――少し話は戻りますが、お笑い芸人を目指していたことが今のお芝居に影響を与えている部分はあると思いますか?
あぁ、考えたことなかったですね……。でも、大筋からそれないようにちょっと変なアイデアを入れてみたり、「へ?」って反応するところで言い方を少し変えてみたりすることはあります。入れられるところには何か入れてやろう、みたいな気持ちはあるかもしれないですね。「それは直して」って言われるときもあるんですけど(笑)。
――ちなみに、今後お笑いやコントをやってみたい、という願望はありますか?
最近だと、東京03さんが声優さんとラジオコントで共演されることもありますし……。機会があったら、もちろんやりたいです! そういえば、この前テレビで佐倉綾音さんが東京03さんとコントドラマをやられているのを観て「うわぁ、いいなぁ!」って思っていました。
――声優さんがお笑い芸人さんと共演されることも増えていますし、今後そういった機会にも期待してしまいますね。
それこそ、さっき話した『ウレロ』っていう番組には井口裕香さんも出ていたんですよ。声だけでもコントはできますし、いつかやってみたいですね。
――ほかにも、ご自身のYouTubeチャンネル『TOYA JAZZ KIKU JAZZ』では、高校時代に部活でやられていたトロンボーンも演奏されていますね。プロミュージシャンたちとの演奏はいかがですか?
恐縮ですよね(笑)。「全然うまくないのに、一緒にやっていいのか?」と思いつつも、演奏するのは楽しいですね。
――この企画はどういった経緯で立ち上がったものなんでしょうか?
最初に僕がジャズや作曲を学びたいという話をして、それを事務所の方たちと相談して、形にしていきました。『チェンソーマン』のEDテーマもカバーさせていただいているので、ぜひ観ていただきたいです。
――過去から現在まで、いろんな表現に挑み続けているんですね。ほかにも挑戦してみたいことはありますか?
今はまず声優としての仕事を頑張りたいと思ってますけど……マラソンをやってみたいですね(笑)。走るのも好きなので。
――お話を聞けば聞くほど、いろんなことに興味を持って活動されているんだなと感じます。
「これが得意!」みたいなものがなくて、中途半端にいろいろやり過ぎたのかなって反省もしつつ……いろんなことに興味がありますね。趣味もいっぱいあって、自作PCが好きで、パーツを集めて組み立てたり、組み換えて性能を上げたり……。最近はサウナにもハマってます。
――本当に多趣味ですね(笑)。今後の活動につながっていくものもたくさんありそうです。それでは最後に、声優としての今後の目標をお聞きできればと思います。
ずっと声優として仕事をしていきたいっていうのが、第一の目標ですね。そのうえで、お芝居とは別の話になっちゃうんですけど、僕の目指す声優像は、現場に行ったときに周りを明るくできるような声優です。『チェンソーマン』では、ファイちゃんがそういう存在なんですよ。ムードメーカーで、来ただけで周りの空気も変わる、すっごい明るい方で。僕はそれにすごく助けられたので、そういう人に自分もなれたらいいなって思っています。周りの空気が良くなれば、それで出てくる良い芝居もあると思いますし。そういう声優になりたいですね。
【声優図鑑】戸谷菊之介さんのコメント動画
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
撮影=石田潤、取材・文=北野史浩、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」