キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。
今回登場するのは、『それでも歩は寄せてくる』で八乙女うるし役などを演じ、『ウマ娘 プリティーダービー』ではナリタトップロード役としてライブやイベントでも活躍を重ねる中村カンナさん。養成所に通っていた頃の葛藤、順調なお仕事の中で感じていることなど、普段はなかなか聞けないパーソナルなお話をうかがいました!
中村カンナ オフィシャルサイト:https://rushstyle.net/talent/kannanakamura/ |
歌手志望、オタ活の追っかけ、そして声優の道へ
――ものまねや変顔が特技という意外な一面を持つ中村さんですが、子供の頃はどんなタイプのお子さんでしたか?
とにかく人を笑わせるのが好きで、親戚の集まりでもステージを作って、その時に流行っている面白いCMの曲を歌ったり、変顔をしたりするような子供でした(笑)。幼稚園のお遊戯会でも目立つ役を選んだり、人前に立つことは好きでしたね。
――声優は人前に立つこと多いお仕事ですよね。声優を目指そうと思ったきっかけは?
小さい頃にすごく太っていて、外見にコンプレックスがあったんです。でも人前に立つようなお仕事にずっと憧れがあって。音楽の授業で歌を褒められたりしたので、当時好きだったaikoさんみたいな歌手になりたいと思っていたんですけど、私はピアノとか音楽系の習い事をしてこなかったし、ゼロから音楽を作っていく才能はないかも……と。小学生高学年の頃、『ローゼンメイデン』で沢城みゆきさんのことを知って、私も沢城さんのように幅広く演じられるような声優になりたいと思いました。
――10代の頃に夢中になっていたことはありますか?
いったん演劇部に入りましたけど、強豪校で厳しかったからドロップアウトしてしまって。なので、ひたすらオタ活を謳歌していました! 田村ゆかりさんを応援していたので、全国ツアーの東名阪は必ず行きましたし、Twitterや当時流行っていたモバゲーで同い年くらいのコミュニティーを作って、現地で会ったりして仲良くしていましたね。母親は勉強には厳しかったけどオタク気質で、追っかけをすることは許してくれたんです。中学生の頃から一人で東京や広島、名古屋などに遠征していました。
――充実したオタ活をしていたんですね!
オタ活の影響もあって歌への興味が膨れ上がっていたので、高校では地元のボイトレに3年間通いました。将来声優になりたいことを先生に伝えて、『創聖のアクエリオン』の楽曲を歌っていたAKINOさんの曲や、水樹奈々さんの裏声と地声の高低差があるような楽曲など、アニソン中心で歌っていました。声楽家の先生から発声の仕方を一から教えていただき、その時に習った基礎が今でも仕事で活かされているので、あの3年間は貴重だったなと思います。
――演技を本格的に習い始めたのはいつ頃ですか?
憧れの気持ちはずっと持ち続けていましたけど、ちゃんと習い始めたのは養成所に入ってからです。高校卒業後に上京して、大学に通いながらRush Style付属養成所で勉強しました。実はその前にほかの養成所に2年間通っていたんですけど、そこではうまくいかなくて。でも就活を始めてからも諦めきれず、もう一度チャレンジしたくてRush Style付属養成所に入り直したんです。養成所時代からオーディションのお話をいただいて、ゲームのお仕事などを始めました。
――諦めずにチャレンジしたことで夢が実現したんですね。よほど強い想いがあったことが伝わってきます。
長く憧れてきたことだから、もはや執着というか(笑)。それ以外に興味がある仕事もなかったし、就職するにあたって自己分析をした結果、やっぱりエンタメで表舞台に立ちたいということが改めてわかったんです。養成所でも所属できるか不安はありましたけど、就活後にスーツ姿で養成所に通っていたら、「どうやらカンナは就活してる!」という話になったようで(笑)。ある日、代表の速水奨さんに「中村さんは所属にしたいと思うから、就活はしなくて大丈夫だよ」とおっしゃっていただいたんです。ギリギリのタイミングでした。今は入所の形式が変わっているかもしれませんけど。
お客さんだったアニサマに『ウマ娘』で出演
――声優になりたての頃は吹き替えのお仕事も多かったようですが、その頃、どんな声優になりたいのかビジョンはありましたか?
小さい頃からアニメを観ていたのでアニメに出たい気持ちはあったんですけど、大学に入ってから映画館でアルバイトをしていたこともあって映画が好きになり、事務所はどちらの方面にも強いので、両方を希望していました。
――なるほど。さまざまな作品を経験して、2022年夏にアニメ『それでも歩は寄せてくる』で初のヒロイン役。どんな思い出がありますか?
それまでアニメのオーディションを何度受けても合格できなくて……。やっと役をいただいた作品でした。セリフも掛け合いも多くて、こんなにしゃべらせてもらえるんだっていうくらいしゃべらせていただいて。私が初めてということで先輩方に気を遣っていただき、和気あいあいとした現場でした。今でもグループLINEでつながっていて、一緒にご飯に行くことがあります!
――ナリタトップロード役の『ウマ娘 プリティーダービー』は超がつくほどの人気作品ですが、この作品に携わって良かったと感じることは?
『それでも歩は寄せてくる』と同時期に受かった作品で喜びは大きかったです。それから「ライブやります!」「生放送もあります!」と短い間にいろいろなことが始まって。学生の頃はお客さんとして行っていたアニサマにも出演させていただきました。ここ1年で新しい刺激をたくさんもらい、急激に自分のキャパシティーを広げていけたなと。わからないことも多かったけど考えていたらキリがないと割り切って。「なるようになるか!」精神で挑んでいました。
――2020年の『狐が僕を待っている』を皮切りに、歌声を披露する機会も増えてきましたね。ライブで難しかったことはありますか?
イヤモニ(インイヤーモニター)になかなか慣れなくて(笑)。ボイトレの時はヘッドホンを使っていたので、初めて使った時は不思議な感じでしたが、ライブの場数を踏ませてもらっているので、今はようやく慣れてイヤモニでも歌えるようになりました!
――ちなみに、MCや楽屋裏で特技のものまねや変顔を披露されるようなことは?
『ウマ娘』の現場には私より大阪人っぽい人たちがいっぱいいるので、私はボケ担当という感じではなく(笑)。ただ最近、けっこうMCが好きだなと気づきました。『ウマ娘』の番組で初めてMCをやらせていただいた時に、思ったよりスムーズにできて。考えてみたら私は人間観察が好きなので、相手のタイプを見ながら話を合わせていくのが強みなのかなと思っています。
物事の根拠について考えるのが好き
――プライベートでよく会う声優さんはいますか?
いちばんよく会うのは三川華月ちゃん。お互いの家に遊びに行ってお泊まりすることが多いですね。この前はたこ焼きパーティをしたし、今度はお鍋しよう!と話しています。ほかにはやっぱり『ウマ娘』のメンバーですね。
――スパイスカレーを作るのがご趣味とお聞きしました。
時間があればキッチンに立っているくらい料理が好きで、特にスパイスカレーはいろいろ遊べるので楽しみながら作っています。
――Twitterで拝見したのですが、一時期「宇宙」と「脳科学」にハマっていたとか。
自分があまり知らないことをずっと考えているのが好きで、最近はそれが脳科学でした。自分の情緒が乱れた時に科学的に解決できるのかとか、頭で感情が動いているのにどうして心臓がバクバクするんだろう……とか。それを本で調べるんですけど、内容が難しすぎて2割くらいしか理解できない(笑)。でも友だちにそういう話をしたりします。だから家の本棚に並んでいるのは、小説より専門書みたいな本ばっかり。宇宙はもともと好きです。
――理系っぽい香りがします。
大学は文系でしたが、もともとは数学が好きで理系を勉強していました。根拠にもとづいた物事を知るのが好きなんだと思います。難しすぎて、大抵知ったような気になっただけで終わりますけど(笑)。
実は今、将来のビジョンの立て直し中です
――これからが楽しみな中村さんですが、憧れの声優像に近づいている実感はありますか?
そうですね。人前に出るようなエンタメのお仕事も『ウマ娘』で体験させていただいたので。でもやっぱりいちばん大事にしていきたいのは演技。それは長い時間をかけて変わっていくものだと思うので、長い目で見ています。オーディションに受からなくて悩んでいた時期、速水さんから「カンナがこれからやりたいビジョンを教えてほしい」と言われて、今の課題、1年後、2年後……などの目標を書いて共有したんです。ありがたいことに、3年後までの目標はだいたいクリアさせていただいたので、今はこれからのビジョンを立て直し中です! ちなみに10年後は、いいお母さんになりたいって書いたような気がします(笑)。
――怒涛の勢いで目標を達成したんですね。では、演じてみたい役や出演してみたいアニメのジャンルを挙げるなら?
今は王道のヒロインを演じさせていただくことが多いので、憎らしい感じの悪役を演じてみたいです。ほかにも、テンポの速いギャグアニメとかプリキュアとか。プリキュアは、昔はずっとセンターのピンクが好きでしたけど、大人になってからはクールな役もかわいいなと思うようになって、ブルーにも興味があります。
――いろいろな役を経験して演技の幅が広がりそうですね。
いまだに自分が応援される側の自覚がなくて、私としてはファンの方とは対等というか、友達みたいな身近な存在でいたいと思っています。「あいつ、頑張ってるじゃん」みたいな軽いマインドでお付き合いいただけたら(笑)、お互いにいい感じの距離感でいられるような気がしています。
【声優図鑑】中村カンナさんのコメント動画
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
撮影=武田真和、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」