10年前の2013年4月3日に1stシングル「会いたいよ…会いたいよ!」でアーティストデビュー、この4月で10周年を迎えた三森すずこさん。
4月5日にリリースとなったベストアルバムには、これまでに発表してきた数多くの楽曲をRed、Pink、Blueの3つのカテゴリーに分けて、ファン投票により選ばれた楽曲や新曲が収録されているとのこと。
声優グランプリは、そんな三森さんにインタビュー。10年間を振り返っての思いや、気になるアルバムの内容、今後に対する率直な思いを聞いた。
ファンのみんなと一緒に作りたかったベストアルバム
――アーティストデビュー10周年を迎えられての、率直な思いをお聞かせください。
振り返ってみると「もう10年なんだ」という気持ちにもなるし、「10年、長かったな」という気持ちにもなるし……。でもやっぱり、一年一年をじっくり歩んできた感覚があるので、あっという間という感じではないですね。その間にいろいろなグループがファイナルを迎えたり、自分自身の生活も変わっていったり、あとはコロナ禍になったり、いろんなことが起きた10年だったので、同じ年は一度もないなというのはすごく感じました。
――10年前の2013年4月3日に1stシングル「会いたいよ…会いたいよ!」が発売されました。その当時のことを今でも思い出したりはされますか?
思い出しますね。初めて会議をしたときとか、初めてCMを作った日のこととか。今回のベストアルバムでジャケ写の撮影をする日も、そういえば10年前の「会いたいよ…会いたいよ!」のジャケ写撮影の日にスタッフの皆さんにケーキを焼いていったなって思い出して、今回も皆さんにケーキを焼いていきました(笑)。10年前はにんじんケーキを焼いていったんですけど、今回はバナナ味とチョコレート味の2種類で。そんなことを思い出したりとか、忘れていたことがふとよみがえったりしています。
――ベストアルバムは3枚組で、それぞれ「Red~情熱的、エネルギッシュ、パッション~」「Pink~ラブリー、ハッピー、キュート~」「Blue~リラックス、クール、アオハル~」と収録曲のカテゴリーが分かれています。
色分けにしたこと自体はシンプルな発想かなと思うんですけど、このベストアルバムはみんなで作りたいなという気持ちがあって、「この曲はこの色かな」というのをファンのみんなに決めてもらいたいなと思って、投票してもらったんですね。で、みんなが投票してくれた曲たちを見ていたら「やっぱりね!」と思う曲と「あ、意外だな」と思う曲があって、特に「ユニバーページ」とか意外でした。私はPinkのイメージだったんですけど、みんなのなかではRedなんだって。私から見える世界と、みんなが見てくれる三森すずこの世界はちょっと違うのかなという気もしたし、面白いなって思いました。
――色のイメージまでファンの皆さんに決めてもらうというのは面白い試みですね。
あと、「Xenotopia」はMVで青い衣装を着ていたからBlueかなと自分的には思っていたんですけど、ファンのみんなはライブに来て聴いているときの、あの感覚で投票してくれているのかなと思いました。自分がそのとき何色のサイリウムを振っているか?みたいな。「Xenotopia」にしても「ユニバーページ」にしても、ウルトラオレンジを振っている曲が赤に入っているのかな? そうなったのも、みんなと一緒にライブとかで時間を過ごしてきたからこそなのかなと思っています。
グッと来て、涙が止まらなくなりました
――新曲もそれぞれのディスクに1曲ずつ収録されていて、計3曲もあるという。
かなり欲張りな感じになっているんですけど、まず今回のベストアルバムで新曲を誰に書いてもらおうかな?となったときに、何気に山田マン(山田高弘さん)に書いてもらったことがないなと思ったんですね。『ラブライブ!』とかキャラソンではお世話になったことはあっても、自分の曲を書いてもらったことがなくて。私も「Snow halation」が大好きなので山田マンにいつか書いてほしいなという気持ちはどこかにありつつ、タイミングを見計らっていたところもあって、それで今回のベストで曲を作ってもらおうということになりました。それがRedに収録されている「ね、そうでしょう!?」で、畑(亜貴)さんの歌詞と相まって、今までの自分を振り返るような曲になりました。隣にいるファンのみんなに語りかけるような感じになっているんですけど、この10年間はずっとみんなと一緒にいられたわけでもなくて。でも、会えないときでも気持ちは変わらないし、つらい季節をみんなで乗り越えてきたよ!みたいなメッセージが含まれていて、胸がギュッとなりましたね。
――ちょうど今のタイミングに合っているのも、運命的なものを感じますね。
やっと世の中的にもコロナ禍から抜け出せそうな感じの時期にこのベストが出るというのは、のちのち振り返ったときに「そうだったなあ」って思えるんじゃないかなって。で、Pinkの「大きな愛で君を抱きしめよう」はデビュー曲コンビの太田(雅友)さんと畑さんで、メロディーもデビュー当時の三森すずこのイメージがさらに膨らんだ感じになっていて、当時のレコーディングのことを思い出しました。すごく緊張してたなあとか、たくさんのスタッフさんが見守っていて、みんなの期待に応えなきゃ!と思ってたなあとか。
――そのときの緊張までよみがえってきたというわけではないですよね?
ではないんですけど、あのときプロデューサーの皆様に言われた言葉を思い出して。「もっとキュンとする感じで、もっとかわいく!」って言われたのを思い出しながら歌っていたら原点に帰った感じがして、エモーショナルなレコーディングになりました。Blueの「鈴がなる日」もソロで初めて佐藤(純一)さんに作曲していただいて、初めてデモを聴いたときに涙が出てきてしまったんですね。歌詞も相まって、すごく心にしみるというか。作詞の中村彼方さんはプライベートでも交流があるし、同世代だし、今の私の心境とか、10周年を迎えた今の自分が見える景色とかを彼方さんが代弁してくれているなと思って。そう考えたらグッと来て、涙が止まらなくなりました。……ただ、レコーディングはめちゃくちゃ時間がかかって、初めて4時間超えしました(笑)。
――それは思いがあふれすぎてしまったからですか?
思いもあふれすぎていたんですけど、ハモリがとても多くて(笑)。佐藤さんの曲を歌わせていただくときはいつも、ハモやコーラスがしっかりした楽曲が多くて、スタァライト九九組で歌うときはパート分けされているから、そんなにめちゃくちゃ時間がかかることはなくて。でも、今回は一人だったの録っても録っても終わらないみたいな感じで、最後は佐藤さんも私も、スタッフさんもみんなヘロヘロで、やっと終わった……という感じでした(笑)。
――ベストアルバムと同日にMV集も発売されます。
MVもいっぱい撮ってきましたね。でも、自分で覚えていない曲もあって「これってMV撮りましたっけ?」ってスタッフさんに聞いてしまいました(笑)。で、見たら「あー!」ってなるという(笑)。ファンのみんなが見たらすごく懐かしく感じるんじゃないかなって思いますし、初々しい三森すずこから最新の三森すずこまで「こんなときあったよね」って楽しんでもらいたいですね。
――これからの10年に向かっての目標はありますか?
10周年までじっくり歩いてきた感じがありましたけど、それって「三森すずこというアーティストはどういうものなんだろう?」というのが自分でも手探り状態だったから、時間も長く感じたのかなと思っていて。だから、ここからの10年はもしかしたら今までもよりも早くなるのかもしれません。もう三森すずこというアーティストはこういうものだって、自分の中でも見えているので。あとはみんながライブに来てくれたときに「やっぱりみもりんの歌っていいよね!」って思ってもらえるように “コソ練”(コソコソ練習)を頑張ることかなと思います。……そう言ってる時点で、もうコソ練じゃないですけど(笑)。
『Mimori Suzuko 10th Anniversary Best Album「RPB」』はポニーキャニオンより2023年4月5日発売。「Red~情熱的、エネルギッシュ、パッション~」「Pink~ラブリー、ハッピー、キュート~」「Blue~リラックス、クール、アオハル~」の3枚組にファン投票により決定した楽曲を収録。また、それぞれのディスクに新曲も収録されている。Blu-ray『Mimori Suzuko Music Video Collection』も同日発売。これまでのミュージックビデオを網羅したMV集となっている。詳細は公式サイトにて。
取材・文/仲上佳克