斉藤壮馬

「本当に魔法みたいな旅」斉藤壮馬さんのアーティストデビュー5周年を記念したライブ『斉藤壮馬 5th Anniversary Live ~étranger/banquet~』2日目の様子をレポート!

斉藤壮馬

アーティストデビュー5周年という節目の年を迎え、アーティストとして活動の幅を広げる斉藤壮馬さん。5月27日、28日には自身最大規模のライブとなる『斉藤壮馬 5th Anniversary Live ~étranger/banquet~』を開催。2万人規模の会場が、彼が楽曲を通じて描き出す独創的な世界観に染め上げられた。今回はライブ2日目となる“banquet”の様子をお届けしよう。

斉藤壮馬5年間の旅路、
その想いを詰め込んだ至高の夜宴

『斉藤壮馬 Live Tour 2021 “We are in bloom!”』の千秋楽から数えて約2年ぶりとなった今回の2DAYSライブ。
昨今の衛生状況を鑑みてマスク着用の状態であれば声出しも可能となったため、肉声で彼を応援できる瞬間を今か今かと心待ちにしていたファンも多かったはず。
そして、その瞬間がついにやってくる……。

9つに分断された大型スクリーンに映し出されたのはモノクロームの街並み。
最奥にある建物だけは真紅に煌々と輝き、招待客をもてなすかのように扉を開け放っている。
カメラが扉の中に入るとステージ下から照明がせりあがり、舞台の開幕。
ステージ上に現れた斉藤さんはシルエットの美しい燕尾服をまとっており、客席からはどよめきにも似た歓声が巻き起こった。

斉藤壮馬

最初の楽曲は、2nd EP『my beautiful valentine』に収録されている「ラプソディ・インフェルノ」。
小さなアイリッシュバーの一角にあるようなライブステージをバックに、斉藤さんは踊りだしたくなるほど軽快に、けれどもドキッとしてしまうような艶やかさを秘めた歌声を響かせていく。
圧巻の世界観構築というほかないが、来場者もそのパフォーマンスに呑み込まれるだけではない。
負けじと緑と赤のペンライトを振って応えていた。
そんな気骨のある会場だからこそ「クラップ・ユア・ハンズ!」で客席とステージの声が一つになった時は、たまらない楽しさと美しさがあった。

続く楽曲はどこかスリリングな旋律が印象的なディスコファンク「エニグマ・ゲーム」。
大型スクリーンに映し出された幾何学模様と、スパイアクションにつきものの“スポットライト”を想起させるようなライティングの妙技、そこにバンドメンバーの生演奏が加わることで「ラプソディ・インフェルノ」とはまたひと味違ったオシャレな世界観を形作っていく。
ステージを左右に歩き回りながら見事なファルセットを響かせる斉藤さんの姿もまた印象的だ。

3曲目は「デート」。
重厚な世界観に会場を浸らせたところで、現実感のあるこのナンバーを持ってくるのもアーティスト・斉藤壮馬らしさを感じる。
斉藤さんの歌唱も軽やかで楽しく、「テイクオフ!」でコートの裾をたなびかせて回ったり、「乾杯!」でテンションを上げたり、とにかく満面の笑顔でステージを闊歩している姿を見ているとこちらまでニヤけてしまいそうに。
アーティストというよりは役者としてのカラーも強く出ていた一曲という印象で、指先の折り曲げひとつにも機微が感じられ、同時に「斉藤さん自身もこのステージを楽しんでいる」と可視化できたような気がした。
これだけエンターテインメント性にあふれたステージだ。
楽曲のラストの「ありがとう!」のあとに黄色い歓声が飛び交ったのは言うまでもない(男性からの野太い歓声も!)。

MCを挟み、「デラシネ」でパワフルかつ温かな歌声を響かせる斉藤さん。
間奏の「I miss you」で水底にいるかのような切なくも神秘的な歌声で会場を満たしたり、ラストの「風になって揺蕩っていたっていいんだ」で強い意志の滲んだ表情を見せたり、千変万化の表現で休むことなく会場を圧倒し続ける。
そして、5曲目は「幻日」。
しっとりした曲調とは裏腹に音の高低差が激しいナンバーなのだが、ぶれることのない歌唱はお見事。
スクリーンに映し出された風が吹き抜ける平原の美しく移ろう風景と相まって、郷愁にかられたという観客も多かったのではないだろうか。
ラスサビ前の自問自答を繰り返すような歌い方は儚くも美しかった。

斉藤壮馬

ライブも中盤戦に差し掛かったところでアコースティックパートに突入。
最初は『my beautiful valentine』に収録されている「林檎」から。
原曲はギャンブルを連想させるワードが散りばめられた大人なナンバーだが、アコースティックでも持ち味である色気は失われていない。
また、「カタルシスならもう騙るに死す」など小気味のいいラップ調のパートも見事に落とし込まれており、新たな世界を開拓していたという印象だ。

続く楽曲は「ワルツ」。
アニメ『灰羽連盟』の世界観をインスパイアする形で斉藤さんが作ったという同曲は透明感にあふれており、音色の多彩さも魅力の一つ。
今回のライブでもバンドメンバーたちがさまざまな楽器を演奏し、牧歌的な世界観を形作っていく。
ほぼファルセットのみで構成されたサビも美しく、耳にしているだけで魂が浄化されていくかのよう。
いつまでもこの世界に浸っていたいという感覚が湧き上がってくる。

アコースティックパートでは、昨年12月に発売された3rd EP『陰/陽』から「風花」も歌われた。
斉藤さんが絞り出す歌声は胸を締めつけてくるような焦燥感と切なさにあふれており、ただただ聴き入っていたという観客も多かったはず。
その卓越した表現力に楽曲が終わった後は自然に万雷の拍手が巻き起こった。
一つの劇を観終えたかのような満足感が残るが、アコースティックパートはまだ終わらない。
ラストの「Lonely Darling」は、声優でありアーティストの江口拓也さんの2ndミニアルバム『EGURand』に収録されている楽曲で斉藤さん自身が作詞と作曲を手がけ、更には斉藤壮馬バンドでレコーディングを行った1曲。
酔っ払いの孤独感を歌っている同曲だが、今回は会場からのクラップもあり“Lonely”という感じはない。
斉藤さんも歌詞の一部をアレンジして「もうちょっと歩きませんか いっしょにー!」とやさしく呼びかけたり、果敢に口笛にチャレンジしたりと楽しく歌唱。
ライブという場で披露するからこそ、そして斉藤さんがカバーしたからこそ、楽曲に新たなカラーが息吹いたようにも感じる。

斉藤壮馬

会場の熱が上がってきたところでライブパートへ。
バンドメンバーの激しい演奏に迎え入れられる形で、ギターを手にした斉藤さんがステージに降り立つ。
披露したのは「mirrors」だ。
ポツポツと音を水面に垂らして波紋を広げていくようなファルセットの歌い出しから、溜めに溜めてサビで一気に叩きつけるようなカタルシスはこの曲ならでは。
訴えかけるように「まやかしてよ 偽者のぼくを」と力強い叫びを響かせる姿にグッと来た人も多かったのでは。

そして畳みかけるようにソリッドなロックナンバー「蝿の王」。
縦ノリで身体を揺らしたくなるようなエッジの利いた楽曲だからこそ、ライブで演奏されたときの破壊力はとてつもない。
バンドメンバーの演奏にもさらなる熱が入り、会場のボルテージは最高潮に高まっていく。

12曲目は『my blue vacation』に収録されている「Paper Tigers」。
虎をイメージしたのか黄色いスモークが立ち込める中、重低音のバンドサウンドに彩られる形で軽快な歌声を響かせる斉藤さん。
ちなみにのちのMCでは、この曲でギターを弾くときに“ブリッジミュート”(ロックなどでよく使われるギターの奏法)を多用していることを明かしており、メチャメチャ筋肉を使うそうだ。
ただ、筋トレの効果が出ているため問題はないようで、むしろ本格的に筋トレをしようかと考えているとのこと(詳しい“あの人”に相談しようかというコメントも)。

そして、13曲目には終末を明るく歌うというアーティスト斉藤壮馬ならではの世界観が詰まった「memento」が続く。
死を想起させるようなワードを明るく爽やかに歌い上げるこの曲では、ファンタジックで壮大な旋律も魅力。
バンドスタイルから生み出される幻想的な音の奔流を浴びられるのは、このライブならではの醍醐味ともいえる。

クライマックスの14曲目は「結晶世界」。
雪の結晶が舞い散るスクリーンをバックに、会場全体を包み込んでいくような包容力のある歌声を響かせる。
ありったけの想いを込めて歌うとMCでも話していただけに、その歌声には力強さが宿っていた。

斉藤壮馬

ライブ本編は以上で終幕。
だが、アンコールの拍手は鳴りやまない。
それに応えて白いシャツ姿で再登場した斉藤さんはさっそく「Summerholic!」を披露。
カメラに向かってキメ顔を覗かせたり、会場一丸となって「乾杯!」の音頭を取ったり、アンコールも楽しくやろうという気持ちが前面にあふれている。
バンドメンバーたちと顔を突き合わせて笑顔を見せる姿はなんとも絵になる。

そして、その熱を保ったまま「フィッシュストーリー」へ。
言わずと知れた原点の一曲であり、それがアンコールというタイミングでやってくるというのはどうしても目頭が熱くなる。
曲の冒頭に「本当に魔法みたいな旅です」と笑顔で叫んでいたことからも、斉藤さん自身が5周年という節目の年を、このライブを楽しんでいるのだろう。

今回のライブのラストを飾ったのは「いさな」。
8分間という長尺で紡がれるバラードは美しく、けれどもメッセージ性にあふれている。
楽曲の中で何度もリフレインする「ゆーあーいんぶるーむ あいしてるってことだよ」という一節はなんとも象徴的で、心が自然と愛情に満たされたという来場者も多かったのではないだろうか。
会場全体を包み込む高揚感を溜めに溜めて、最後は髪を振り乱しながらもギターを掻き鳴らした斉藤さん。
その幸せそうな姿が印象的だった。

この日のMCの中で斉藤さんは、このライブを5年間の集大成と位置づけると同時に、バンドメンバーも含めた“チーム斉藤壮馬”にはまだまだやりたいことがあると語っていた。
2時間という短い時間の中でこれだけ多彩な世界を旅させてくれた彼らのこと──きっとたくさんのアイディアがあふれかえっているのだろう。
それならば、いつか再び趣向を凝らした夜宴を再び開いて我々を招待してくれるはず。
今はワクワクしながらその日を待ちたい。

斉藤壮馬

~banquet~オンラインリスニングパーティ開催決定!

明日、2023年6月16日(金) 21:00~「斉藤壮馬 5th Anniversary Live ~banquet~ オンラインリスニングパーティ」の開催が決定!
詳細は下記リンク先にて。
https://www.saitosoma.com/info/archive/?553031

 

公演詳細

斉藤壮馬 5th Anniversary Live
~étranger/banquet~
2023年5月27日(土)・28日(日)
千葉・幕張メッセ 国際展示場1~3ホール

【セットリスト】~banquet~
01 ラプソディ・インフェルノ
02 エニグマ・ゲーム
03 デート
04 デラシネ
05 幻日
06 林檎
07 ワルツ
08 風花
09 Lonely Darling
10 mirrors
11 蝿の王
12 Paper Tigers
13 memento
14 結晶世界

EN1 Summerholic!
EN2 フィッシュストーリー
EN3 いさな

 

■斉藤壮馬 公式■
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撮影/ハマノカズシ、タカギユウスケ、白石達也
取材・文/原 常樹