新しい歌声に挑戦したことで、この曲のコンセプトが際立った
──これまでとは違った表現方法も特色の一つ。<魔法なんて信じなくてもいいの 確かな強さを持ってるから>というところが印象的だったんです。もう少し強めの歌声で攻めるのかと思ったら、ものすごく優しい歌声で。
そこは意識して優しく歌いました。サビもあえて裏声を使っていて。アーティスト・富田美憂の強みの一つに“エネルギッシュさ”があると思うので、テストの時は「ザ・富田美憂です!」というような歌い方でいこうかなとも思ったのですが……レコーディング本番前の練習に立ち会っていたプロデューサーさんが、「スタイリッシュでスピーディだけど、包容力を感じる雰囲気もある声だね」と言ってくださって。今までの自分を認めてあげるような温かさも込めたかったので、優しくシルキーに歌ってみようとなりました。本当に正解だったなと思っています! 富田美憂らしさはありつつも、この曲のコンセプトでもある「新しいステージに一歩踏み出す」という意味が出たので。これまでの自分に対してだけじゃなく、これから新学期を迎えたり、社会人になったりと、新しいことに挑戦する方々の背中を押してあげたいという気持ちもありました。
──あらためてこの曲を聴いたとき、富田さんはどのような感情になりましたか?
自分のモノローグとして歌っている部分と、客観的な目線で自分に対して語りかけるようなイメージで歌った部分とがあって。2番の<彷徨って立ち止まって>のブロックと、<もう前に進む時間だよ>とブロックは、後者のイメージで歌っていました。その時に(デビュー曲の)「Present Moment」のMVを思い出したんです。「Present Moment」のMVも、未来の明るい自分と、今の閉じこもってる自分を表現していて、そこと少し通じる曲でもあるのかなと思いました。自分で歌っている曲ではあるんですけど、自分の背中を押してくれるような曲になったなと。
──語りかけるように歌っているブロックには、包み込むような優しさもありますよね。
そのあたりは総じて“大丈夫だよ”と語りかけるようなイメージで歌っていました。この間、デビューの頃からお世話になっているメイクさんと、改めて「Present Moment」のMVを観ていたんです。「懐かしい~!」なんていう話をしていて。あの時は陰と陽の富田美憂を撮りわけていただいたんですが……最近はあの時に感じていた未来の富田になれてるよね、って話をしていて。アーティスト活動を重ねていくうちに、理想の自分になりつつあるのかなと思いました。
──当時描いていた理想の自分はどんなイメージでした?
小さいことで言うと、当時はあまり人の目を見て話せなかったんです。仕事モードになれば大丈夫なんですけど、昔は「富田さんって私に興味ないと思っていた」と言われがちでした。根暗だったなと(笑)。でも最近はそれがなくなってきて、今も底抜けに陽!って感じではないですけど、人間的にも少し大人になれているのかなと思いました。
──今思い描く理想の自分はどうでしょう。
この仕事をしている限り不安はつきものだと思っていて。だから波はあると思うんですが、いろいろなことを全て受け入れるほどの懐の広さを持ち続けていたいです。最近は現場に後輩が増えてきましたし、事務所に年下の後輩が入ってきて、オーディションのテープ録りを見学に来てくれる子もいるんですが、最初は「先輩らしくしなきゃ」「変なところは見せちゃだめだ」と思っていたんですけど、「人間だから噛むこともあるよね」と、少し肩の力が抜けるようになりました。自分が先輩にしてもらってうれしかったことをこの子たちにしてあげたいと思えるようになったことも、一つ大人になった証拠なのかなと。
──心の余裕ができたというか。富田さんの後輩は幸せですね。
そう思ってもらえたらうれしいなって。それこそ弱い自分を受け入れられたからこそ、生まれた余裕なのかなとも思っていて。それが今回の歌声にも表れていたらいいな。
──シングルの発売日は誕生日。新しい年に何かしたいことはありますか?
仕事で言うと……まだ発表はできていないのですが、23歳の時に受けたオーディションで新しい出会いをたくさんいただけたので、それをアウトプットしていくのが楽しみです。プライベートなことで言うと、来年こそ、こはく(富田さんの愛犬)とプールに行きたいです!
──来年の夏も楽しみですね。時を同じくして2ndアルバムも発売予定です。現段階でお話できることと言うと……?
制作中ということもあって、まだなんとも言えないんですけど……この4年、アーティストとしていろいろなことに挑戦させてもらえて。挑戦してきたからこその原点回帰ってものすごく強いものになる気がするんです。だから「富田美憂と言ったらやっぱりこれだよね!」ってものにも手を出せたら良いなと思っています。これまでの経験を全て注ぎ込めたらと。5周年イヤーはアルバム以外にも、たくさんのサプライズを用意しています。ここ1〜2年、水面下でスタッフの皆さんと大事に大事に準備してきました。そのサプライズを発表した時に「おっ?」と思ってもらえるようなつながりをこのジャケ写、アー写で作っていて、富田美憂の今後に期待という感じです(笑)。2ndアルバム以外にもたくさんあります。24歳の年は、アーティストとしての活動も活発になると思うので、私自身も楽しみです。
取材・文/逆井マリ
- 富田美憂Profile
とみたみゆ●11月15日生まれ。埼玉県出身。アミューズ所属。主な出演作はアニメ『かぐや様は告らせたい』(伊井野ミコ)、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(チュアチュリー・パンランチ、ハロ)、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(院田唐音)ほか。
- Information
Digital SINGLE「Silent Beat」
2023/11/15 Release
1.Silent Beat
作詞・作曲・編曲:Aira
来年夏には2ndアルバムのリリースを予定している。