楠木ともり

【ライブレポート】楠木ともりさんのバースデーライブをレポート! 観客を独自の世界観に引き込む!【独自取材】

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楠木ともりさんが毎年、自身の誕生日当日の12月22日に行っているバースデーライブ。
今回は、11月26日にリリースしたばかりの、2ndアルバム『LANDERBLUE』を引っさげてのライブとなった。
オールスタンディングのEX THEATER ROPPONGIを、ソールドアウトにして行われたライブの模様をレポートする。

2ndアルバム『LANDERBLUE』の楽曲を中心とした宝石ができていく過程を表現したセットリストに、観客が熱狂!

後ろに黒い幕があるだけで、何もないステージ。開演時間になり、会場がゆっくりと暗転する。
ペンライトの明かりもない、真っ暗な会場の真ん中に、スッと四角すいの光の柱が出現し、その光の中にぽつんと立っている楠木さん。
それまで見えていた景色が見えなくなり、ステージの光だけに集中するオーディエンス。楠木さんが、2ndアルバム『LANDERBLUE』の1曲目に収録されている「twelve」を、か細く震える声で歌い始めると、そこからグッと曲の世界に引き込まれていく。暗い場内で感覚も研ぎ澄まされているので、音が体に染み込んでくる感覚もあった。

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日常から、ライブという非日常に誘うきっかけとなる「twelve」を終え、黒い幕が落ちると、バンドメンバー(ギター/菊池真義さん、キーボード/幡宮航太さん、ベース/宮本將行さん、ドラム/高尾俊行さん)が姿を現し、挨拶代わりの「風前の灯火」を叩きつける。激しい歌声とサウンドに、観客も拳を突き上げて反応する。しかも今回はオールスタンディングでのライブ、満杯のフロアの熱気は凄まじかった。さらに、彼女のライブでは初となるレーザーも導入。最初の光の柱もそうだが、ここでは光を散乱させて、会場を派手に演出していた。

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そのままの勢いで「BONE ASH」へ突入。サイケな世界観で、ノるのが難しい変拍子楽曲だ。カオティックなバンドの演奏と感情的なボーカルがクールだ。しかもラストの〈体を包む 灰を吹け〉で、楠木さんが実際に“フッ”と強く息を吹くパフォーマンスも、強い決意や意思のようなものが感じられ、観客も熱狂していた。

3曲を終え、会場を見渡す楠木さん。EX THEATER ROPPONGIでライブをするのが、メジャーデビュー発表をした2019年以来であることを語る。そして、そのときは座席があったが、今回はオールスタンディングで、しかもソールドアウトになったことを喜び、感謝の言葉を口にする。

そこから、また『LANDERBLUE』の世界へ。クラップが巻き起こった「Nemesia」では、少し大人っぽい歌声と余裕を感じる動きを見せる。途中でしゃがみこんで最前にいるファンを見つめて歌ったり、気ままでラフな感じが、曲の雰囲気に合っていた。グルーヴィなサウンドと会場のクラップの一体感があったのだが、1曲まるまる、ずっとクラップをし続けられるのは、ペンライトがないライブの良さなのかもしれない。

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続く「優等生」は、ピアノと歌の出だしから不穏な雰囲気を醸し出す。打ち込み色が強い元の音源が、生バンドになったことによるおしゃれ感、そして、時折顔を出すベースやボーカルの凶暴性が印象的で、ライティングも含めて、曲の世界観をしっかりと表現していた。

「NoTE」は、曲で表現されている感情を、息遣いから声の震えに至るまで繊細に歌っていく楠木さんのボーカルが圧倒的だった。また、キーボードの幡宮さんが弾くアコギも印象的で、たまに聴こえてくるフィンガーノイズが心地良い。「DOLL」は、脱力感のあるウィスパーボーカルだが、激しいサウンド中でも、しっかりと通って聴こえてくる強さがあった。

MCでは、2025年のアーティストとしての歩みを振り返り、3月に開催した『TOMORI FES.』が、今回のオルスタライブのきっかけになったと明かす。そして「ここから後半戦、盛り上がっていきましょう!」と煽ると、“雨が”のひと言から、「遣らずの雨」へ。イントロの、クールでカッコいいギターフレーズにフロアも一気に湧く。平歌の静かさから、サビの爆発力という緩急、そしてレーザー演出が観客を盛り上げていく。

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照明によって青の世界になった会場。「MAYBLUES」は、シンセと打ち込み、そこにドラムなどのバンドサウンドが加わることで、音源とはひと味違う魅力を出していた。浮遊感のあるサウンドと歌声に、フロアも音に身を任せて揺れている。最後にクールなラップもしっかりと決めて、同じくシンセの音が印象的な「浮遊」へとつなげる。

AAAMYYYが提供した「浮遊」は、音の海に沈んでいるような、はたまた浮かんでいるような感覚になる不思議な楽曲だ。その世界観を壊さないライブアレンジも秀逸で、そのサウンドに揺れるように、漂うように乗る楠木さんのウィスパーボーカルも見事だった。この2曲で、どっぷりと“楠木ともりワールド”に引き込むと、大きな大きな拍手が起こる。

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そして静かに、なぜ、このライブのタイトルを“LAPIDARIES”にしたのかを語っていく。
ラピダリーは、宝石細工職人という意味だが、それが複数形になっているのは、ファンのみんなのことを指しているから、ということになる。
「みんなは、キラキラしたものがあったら拾い上げて、その美しさを知ることができる。たとえ傷があっても、それが味だと喜ぶことができる。何よりすごいのは、それを自分の経験や価値観や記憶とつなぎ合わせて、自分だけの力とか想いに変化させることができること」だと語っていく。

そして、手にしてくれた人のお守りになるようにという想いを込めたアルバム『LANDERBLUE』。ここには、彼女の描く様々な青が詰め込まれているのだが、宝石細工職人の力を持つみんなであれば、自分に結びつけて、自分だけの素敵な青に、そしてお守りにしてくれるだろうなと信じていたと話していく。彼女自身は、いつも明確な想いを込めて楽曲を書いているが、それは決して押し付けるものではない。聴いている人が、自分に置き換えたりしながら曲を聴き、育てていけばいいんだと、言ってくれているような気がした。

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最後は「ひとりひとりが最高の“LAPIDARIES”であることを絶対に忘れないでください。いつもすごいなぁと思っているし、いつも支えられています」という言葉を残し、『LANDERBLUE』に収録されている「それでも」を歌っていく。

おそらく2ndアルバムの中で、もっともパーソナルな想いを歌った楽曲と言えるだろう。この曲をどう受け取り、自分のお守りにしていくのかは人それぞれだが、それはあくまで音源での話で、少なくともライブでは、シンプルな演出の中で、楠木さんが想いを吐露していくパフォーマンスに心を揺さぶられた。悔しさや温かさとか、いろんな感情が内包された、“人間”を感じる歌だった。

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そしてライブは、「熾火」で一気に燃え上がっていく。ピアノの激しい打鍵から始まり、楠木さんも「いけんのかー!」と叫ぶと、待ってました!とばかりに、“オイ!オイ!”と声を上げるオーディエンス。オールスタンディングによる熱気のせいだろうか、ステージもそれに呼応して熱くなっていき、渦のように高まっていくのを感じた。楠木さんも歌いながらシャウトを入れたりしていて、こんなにテンション高く、エモーショナルになるのはこれまで見たことがない感じでもあった。

本編ラストは2ndアルバムでもラストを飾る「turquoise blue」。センターに椅子をセットし、楠木さん自身がアコギを手にし、「最後の曲を最高な“LAPIDARIES”に向けて歌います。聴いてください」と語り、歌っていく。優しく美しいメロディ。青い光の中から発せられる彼女の歌声が、会場全体に染み渡っていく。それがとても美しく、キラキラとしているように見えたし、すごくハッピーな空間を作り上げたのだと実感した。

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アンコールに応えて、再び登場した楠木さんともりとバンドメンバー。まずは「シンゲツ」を、初のアコースティックアレンジで披露する。ここでも幡宮さんがアコギを手にし、2本のアコギで、ゆったりと聴かせていく。途中から通常の「シンゲツ」に戻り、会場を熱狂させる。
そして、2019年のライブで初披露した「バニラ」を、大切に大切に届けていく。この曲は、いつも感動的で温かい。

そして、恒例となったバンドメンバーも全面協力するグッズ紹介(オルスタのため短め)をして、楠木ともり初となるアナログ・レコード盤『PRESSED FLOWERS』が2026年6月17日に発売されること発表する。

MCを終え、「出し切れんのか! みんなのかっこいいとこ見せてください!」と煽りまくると、最後は「back to back」を、みんなで大きな声を出して歌う。間奏では、バンドがソロ回しをしていき、幡宮さんが「この時間が来たぞー!」とマイクを持って前に飛び出てくると、みんなで「ハッピーバースデートゥーユー」の大合唱し、楠木さんの26歳の誕生日を、紙吹雪の特効と共にお祝いした。ちなみに、26歳の目標は「元気!」だそう。

どよめきの中、再び「back to back」に戻り、みんなで熱唱し、最後はジャンプをして、ライブを終えた。

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シンガーソングライターとして前進し続けていることを証明した2ndアルバム『LANDERBLUE』。そして、それを表現した『TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2025 “LAPIDARIES”』。彼女が描く曲の世界に没頭し、最後は気持ちをひとつにしたライブだった。そして、フロアに明かりが灯り、「twelve」のインストが流れると、ライブハウスはゆっくりと日常に戻っていった。

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◇セットリスト◇

M1 twelve
M2 風前の灯火
M3 BONE ASH
M4 Nemesia
M5 優等生
M6 NoTE
M7 DOLL
M8 遣らずの雨
M9 MAYBLUES
M10 浮遊
M11 それでも
M12 熾火
M13 turquoise blue
M14 シンゲツ
M15 バニラ
M16 back to back

 

◇Profile◇
くすのきともり●12月 22日生まれ。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。主な出演作はアニメ『ウィッチウォッチ』(宮尾音夢)、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(レン)、『チェンソーマン』(マキマ)、ゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(宵崎奏)ほか。