- タイトルに込めた2つの意味
――2曲目の「散々花嫁」は先行配信されていた楽曲で、たくさんの女性に囲まれて歌っているMVが印象的でした。
無機質な空間に動かない女性がたくさんいて、アップシチュエーションが多めのおしゃれなMVに仕上げていただきました。曲のタイトルが「散々花嫁」なので、最初はネガティブな女性が主人公なのかなと思っていたら全然そんなことはなくて。Tom-H@ckさんのアレンジが加わって、アニソン要素も感じられる楽曲になったと思います。
――歌詞を見ると「わからん」など砕けた口調も目につきます。
「わからん」という言葉はこの曲で初めて口にした言葉だったので、どんなニュアンスで歌うのが正解なのか考えちゃいました(笑)。Tom-H@ckさんからディレクションで「夢の中にいるようなウィスパーな感じで」といただいたので、ささやくように歌わせてもらったんです。
――「幸福雨」は、ドラム&エレキサウンドが効いた攻めの楽曲。
バックの演奏がとてもリッチな曲ですよね。特にドラムの柏倉隆史さんは、川谷さんが「めちゃくちゃうまい人だから!」と太鼓判を押していた方で、私でもわかる超絶技巧でした! 「幸福雨」はドラマ『神ちゅーんず ~鳴らせ!DTM女子~』に出演させていただいたときに作中で私が歌唱した曲でもあって。そのときのドラマーさんも「この譜面は普通に無理だと思います!(笑)」とお手上げ状態だったので、ぜひCDではドラムテクニックにも耳を傾けてほしいです。
――そして4曲目が「元恋人よ」。素敵なバラードになりましたね。
バラードを歌った経験がなかったのですが、イメージでいうと松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」や山口百恵さんの「さよならの向う側」みたいなエモーショナルな曲を連想していました。「元恋人よ」は仮歌でいただいたときから泣きそうになるほど感動的な楽曲で……。共感してというよりも、理由の無い涙がこみ上げてくる楽曲でした。
――ミトさんのアレンジによる影響も大きいのではないでしょうか?
たしかに、レコーディングが終わってから「何かが自分に乗り移っちゃいそうな楽曲でした」とお話ししたら、ミトさんも「僕もそういうところを意識していたので」とおっしゃっていました。レコーディング中も自分を俯瞰で見るのが大変でした。
――いずれの曲もウィスパーボイスが印象的だと感じたのですが、自身の歌声についてはどう感じられていますか?
無いものねだりかもしれないですけど、私はパキッとした声が好きなので、コンプレックスに近いかもしれませんね。もちろんパキッとした張りのある声はこれから声優として演じる機会があると思っていますし、歌う機会もあるかもしれませんので、その日が来るのを楽しみにしています。
――タイトルを「innocent moon」に決めたのは結城さんだそうですね。
私にとって月はパワーをもらえたり、頭の中がごちゃごちゃしているときに気持ちをリセットしてくれる大切な存在なんです。それと月って三日月とか満月とか呼び方が変わるじゃないですか? 「結城萌子」も、声優だったりアーティストだったりという変化を内包していて、人によって私を何で知ってくれるかはまちまち。そんな人たちに向けて、名前や活動は違っても、すべて一つの結城萌子という存在なんだよという意味を込めて「moon」というワードをチョイスさせてもらいました。「innocent」には、何色にも染まっていない私が歌った最初のシングルという思いが込められています。
――声優、そしてアーティストとして歩み始めた結城さんですが、今後の目標などはありますか?
まだ駆け出しの私ですが、林原さんなど尊敬する先輩たちの軌跡をたどるのが夢で、具体的には自分が出ている作品の主題歌を歌いたいという思いがあります。スタートラインから半歩進んだくらいの私でも、一人の表現者として皆さんに何かを感じてもらえる存在になりたいです。そして、皆さんのきっかけになれるような何かを届けられる存在になれたらうれしいなと思っています。今回のアーティストデビューで一生分の運を使っちゃいましたとお話しさせてもらいましたが、今後は来世から運や幸福を借りて頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!
- パーソナルQuestion
結城萌子の由来は?
結城萌子は、私の好きなものを全部詰め合わせた芸名なんです。“結城”は昔インターネットで使ってたハンドルネームです……(笑)。“萌”は単純に好きな漢字。“子”は大好きな松田聖子さんから一字もらって、結城萌子になりました。
どんな性格?
周りからはマイペースとかおっとりしてるって言われますね。たしかに昔、修学旅行に出発する日に、自分がギリギリまで寝てたくせに朝風呂を我慢できなくて。「まあ遅れる人はほかにもいるでしょ~」って思ったら集合時間に間に合わなかったのは私だけで、引率の先生と二人で東京駅まで行ったことがありました……(笑)。
- Information
Major Debut Single EP
「innocent moon」
品番:WPCL-13091
価格:1,500円(税抜)
<収録曲>
01「さよなら私の青春」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:菅野よう子)
02「散々花嫁」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:Tom-H@ck)
03「幸福雨」(作詞:川谷絵音、作曲:川谷絵音/ちゃんMARI、編曲:ちゃんMARI)
04「元恋人よ」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:ミト)
結城萌子デビューシングルEP「innocent moon」は、ワーナーミュージック・ジャパンより発売中。収録全曲の作詞作曲を川谷絵音が手掛け、アレンジャーには菅野よう子、Tom-H@ck、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)、ミト(クラムボン)といった面々を迎える豪華仕様。プロジェクト全体の監修は、黒崎真音や内田真礼のプロデュースで知られる冨田明宏が担当。
<結城萌子 Profile>
ゆうきもえこ●3月31日生まれ。ジャストプロ所属(提携:KSR)。主な出演作は、アニメ『あした世界が終わるとしても』(小野寺)、ゲーム『ファントム オブ キル 失われた千年王国編《ロストラグナロク》』(モラルタ)、『ソフィアコネクタ』(妖狐ウララ)ほか。
<結城萌子 Official Web Site>
https://yukimoeko.com/
取材・文/田中克佳
※『月刊 声優グランプリ』2019年11月号の掲載内容を再編集しています。
- 結城萌子さんのインタビューが掲載されている『声優グランプリ』はこちらをチェック!