【声優道】古谷徹さん「大事なのは感受性を磨くということ」

役作りは情報収集から
自分の役との関係性をはっきりさせる

僕の役作りは、まず情報収集から。

手に入る情報はすべて頭にインプットする。キャラクター表をなるべく長く見る。同じポーズをとってみる。ヒーローだったら、戦うときのポーズとか目つきとか。そういうものを自分の体にコピーしていくんです。

台本とは、情報収集の後に向き合います。アフレコ台本はもちろん細かくチェックします。インプットした情報を忘れないよう、台本の余白ページにびっしり書き込みます。また、配役の書いてある香盤表には、他の役の設定も全部メモしておく。自分の役との関係性をはっきりさせておきます。

ただ、このセリフをこのトーンでこんな雰囲気でしゃべる、とは決めないようにしています。アフレコ現場で監督と話し合って作り上げていくものだからです。

常に自分ができることはすべてやってみます。やらないで後悔するのは嫌ですから。やれるだけやって、結果できなかったら仕方ないですよね。僕はそういう想いでいつも役に臨んでいます。

「声優になりたい」という強い情熱は大事だと思います。プロになった自分の姿をイメージし続けることで第三の力が働く。夢の実現につながります。

フラれたっていい。
人生のいろんな経験が肥やしになる

ただ別の話として、役者はやっぱり人間を演じるもの。さまざまな環境を体験したさまざまな人間を演じなければならない。だから、普通の人間としてなるべくいろいろな経験をしていることが必要だと思います。特に恋愛はいっぱいしたほうがいい。恋愛っていちばん心が揺れ動くものですからね。大いに人を好きになって大いにフラれてほしい。経験が肥やしになりますからね。

僕自身、普通の学生として過ごした大学生活がいい経験になっているのかな、と思います。つまり、いちばん大事なのは感受性を磨くということです。

根本にある心が柔軟に感じないとどんな役作りも意味がない。頭と心と体のバランスが大切だと思います。バランスよくトレーニングしていくことが、長くこの業界で生き残っていく秘訣なのかなと思っています。

(2009年インタビュー)