【声優道】潘 恵子さん「『声優』にこだわりすぎないことがカギ」

いいものを作ろう、残していこう
という気持ちは欠かせない

歌手の仕事は「恋するベッキー」がきっかけになりました。服部克久さんから「歌ってみて」と言われて歌ったものが、そのままシングルになってしまったんです。隣のスタジオには、トシちゃん(田原俊彦さん)がいたのを覚えています(笑)。その晩、ポニー・キャニオンの社長から当時所属していた青二プロダクションに電話があったのですが、下手だったので謝る準備までしていたんです。それが「歌手にならないか?」って(笑)。それをきっかけに「裸足のフローネ」を歌わせていただいて、ずっとポニー・キャニオンのお世話になりました。

「恋するベッキー」といえばアニメ『トム・ソーヤーの冒険』の主題歌ですが、ベッキーは当時の自分に似て不器用なところがあり、今でもとても思い入れのあるキャラクターです。『世界名作劇場』のようなシリーズが放送されなくなってしまったのはとても寂しいことですね。主題歌でもたびたび関わってきたシリーズだったので思い入れもひときわありますし。最近では声優がどんどん表に出るようになってアイドル化も進んでいますが、それはそれでいいんだと思います。ただ、いいものを作ろう、残していこう、という気持ちは欠かせないのではないでしょうか。

やりたいと思った時点で夢は50%は叶っている

これから声優を目指す人には、自分の個性をちゃんとつかむことを意識してほしいですね。以前、あるディレクターさんから「品は天性のもので、作ることはできない。いくら品のいい役をやっても、本人がそうでなければ絶対にわかってしまう」と言われたのが、強烈に印象に残っています。ただ、これは品がないからダメだということではありません。誰にでも、自分にしかない個性みたいなものがあると思うのですが、それを見つける、自覚するということが、大きな武器になるということです。声にはその人が出てしまうものですが、声を作って芝居することはできませんからね。だから、自分の声を聴いてみて、どんな声なのかを自覚することは、とてもおすすめです。

今は昔と違って声優になりたい人がとても多く、新人さんもどんどんデビューしていきます。当然、最初のお仕事の重要さが、私たちの時代とは大きく違ってきています。極端な話、「そこでヘマをしてしまえば終わり」のような、1回勝負みたいなところもあるので、若い子たちを見ていてかわいそうだなと感じることもあります。今みたいに競争相手が多いなかで生き残るのは大変なことですが、あえて「声優になろう」と思い詰めないことは、大きなカギだと思います。自分で「あくまでも声優」とこだわりすぎていては、できることが狭まってしまうでしょう。

ほかには、正しい日本語で話すことのできる人のほうが合っていると思います。この辺りを日頃から気を付けるのもいいかもしれません。「やりたい」と思った時点で、もう夢は50%は叶っているものです。あとは、具体的にイメージし、強い意思をもって努力し続けることが何よりも大切なのではないかと思います。

(2010年インタビュー)